表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/27

23.5、商人の"噂"。中世とは

朝になれば市場が開き、パン屋から焼きたての匂いがする。荷馬車が石畳の上を進み、街の子供たちは集団で道の端を走っている。教会の鐘が朝の時刻を伝える。誰もが昨日と同じ一日が来ると信じていた。


いつもと変わらない一日。


少なくとも、昨日の夜まではそうだった。


活気あふれる市場の隅で、二人の男が手持ち無沙汰に立ち話を出していた。


「なあ知ってるか? 最近、七歳くらいのガキが二人も、魔法使い見習いになったらしいぜ」


男の一人ケルトが、隣にいるダイルに話しかける。


「なんだそりゃ。洗礼式を終えたばかりのガキじゃねーか。世も末だな」


ダイルが呆れたように鼻で笑った、その時だった。


「おーい! お前たち!」


男が一人、額に汗を浮かべ、今にも転びそうな勢いで焦りながら走ってきた。


「どうしたんだよ、そんなに慌てて」


息を切らす男にケルトが声をかけると、走ってきた男は周囲を鋭い目つきで見回し、二人に顔を近づけた。


「いいか、でかい声で話すんじゃねえぞ。耳を澄ませてちゃんと聞け」


「おいおい、なんだよ急に。そんな真剣な顔しちゃってさ」


「いいから、黙って聞け」


男は声を近くにいなと聞こえない大きさで、話しはじめた。


「隣国との国境沿いに、かなりの数の兵士が集められてるらしい」


「本当か?」


ケルトの問いに、男は大きく頷いた。


「ああ。昨日、国境付近から戻ってきた商人がそう言ってたんだ。街道の途中で、王国軍の一団とすれ違ったってな」


「戦争になるのか?」


ダイルが呟くと、三人の間に短い沈黙が流れた。楽しげな市場が、まるで遠い世界の出来事のように遠のいていく。


「さあな。だが、あの隣国が相手なら、本当に戦争になるかもしれんな」


走ってきた男は冷や汗を拭い、肩をすくめて笑った。


「まあ、いくらなんでも王都から離れたこの街まで、すぐに影響が出るとは思えんがな」


「だといいんだけどよ。隣国の奴らは本当に悪魔にでもなっちまったのかね。どれだけ俺たちを苦しめたら気が済むんだか」


「さあな。俺たちみたいな平民に、偉い奴らの考えることなんて分かるわけないだろ」


「大変な時代に生まれちまったな...」


男たちはそう言い合い、暗い影の中で、何も知らずに行き交う街の人々をただじっと見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ