19、カインの価値!
(ん?カインどうしたんだろう、元気がないな)
私とカインは依頼書を手に持って、受付から離れて、設置されている長椅子に座った。
「カイン、なんかあった?」
「一緒に依頼をすると思ってたけど、違ったから少しがっかりしてるだけ」
(まあ私も、一緒にやると思ってたから、気持ちは分かるな)
「一緒に依頼をするのは無理かもしれませんが、アイさんの依頼についていかれてはどうでしょう? そうすれば、一緒にはいられますよ」
「あっ!確かに!」
(シスターさん、ナイスアイディア!確かに一週間以内にこなせばいいんだもんね)
隣で肩を落としている、カインもハッとしたように顔を上げる。
「アイについて行っていい?」
「うん、いいよ!私もカインの依頼の時にはついて行きたい!」
「では、先にアイさんの依頼を完了した後、カインさんの依頼に向かいましょう」
「「はい!」」
「それと午後の鐘が鳴るまで、時間があるので一度教会に戻って依頼の内容をちゃんと確認しましょう」
「はい!」
「わかりました!」
(頼れる人が一人いるだけで、全然違うな〜〜)
私たちはそのまま、組合をあとにして教会に向かった。
教会に着くと、中に入り、いつもの部屋の前に来た。
(今は神父様が仕事をしているから、いないのかな)
シスターがドアをノックをしても何も帰ってこない。
「中に入りましょうか」
シスターが扉を開け、私たちは中に入り、いつもの机を三人で椅子に座って囲んだ。
「では、まずはアイさんの『防火水槽の補充』から確認しましょうか」
「はい!お願いします」
私は手に持っていた依頼書を机の上に出した。依頼書をシスターとカインも黙々と読み出した。依頼書には場所の地図と防火水槽の概略が書かれている。
「洗礼式の前に、ここで火事が起きたんだ」
私は地図に指をさした。
「少し前に話題になっていましたね。街外れで火事が起きたと」
(火事が起きて、防火水槽の中身が減ったからか)
「街外れまで行くので、三人で移動するとしたら、馬車が必要かもしれませんね」
(初めての仕事で、馬車の申請をするのは少し気が引けるな〜)
「報酬は、見習いの場合は銅貨4枚と書いてますね」
(結構いいんじゃない?因みに、見習いじゃない場合は銀貨一枚か結構凄い金額だな、
お父さんの給料四分の一じゃん。お父さんは結構稼いでる方なのに)
「では次、カインさんの依頼の確認をしましょう」
「はい」
カインは依頼書を机の上に出した。
カインの依頼書を読むと、報酬の方にしか目が行かなかった。
「金貨1枚...」
「カインさん、凄い金額ですね」
「なんでだろう?」
不思議に思い依頼書を読むと、理由が分かった。
「この依頼、二年間受注されてなかったんだ」
「わざわざ、土と水の混合属性を指定してますもんね。混合属性と言うだけで、かなり珍しいのに、土と水の混合で魔法使いとなると、なかなかいませんからね」
(だから見習いでも金貨1枚なんだ、というか平民で金貨を持ってるってとんでもない金持ちじゃない?)
私とカインは金額に唖然としていると、シスターが口を開いた。
「報酬の金額だけに目が行くかもしれませんが、依頼の場所を確認しましたか?」
「はっはい、確認しました」
場所は街の門の近くだった。
「なんで、依頼者は金貨なんて出せるんだろう?」
カインがそうつぶやくとシスターが答えた。
「確かここは、有名な陶芸職人の家だった気がします。この街の中じゃ、かなり有名な方ですから金貨を持っていたとしても違和感はないですね」
「凄い人なんですね」
「ふふ、私から見ればカインさんもアイさんもかなり凄い人ですよ。それこそ1日で金貨を稼ぐぐらいの」
「そ、そうですか」
カインは少し照れ言った。
(シスターさんの距離感も近づいてきたな〜、仲良くなれてよかった!)
「カーンカーン」
鐘がなり時間も8時になった。
いや、まだ8時と言うべきか。
「今日は午後までゆっくりしていてください」
私たちは午後の鐘(12時)になるまで、会話をしたり、魔法ついて話していた。その中で魔法について少し分かったのだ。
「ねえカイン、もしかしてだけど...『詠唱』って、ただの補助なんじゃない?」
「えっ? 補助って……どうしてそう思うの?」
「だって、一般的な詠唱文って『我が魔力よ、〜〜に姿を変えよ』みたいな感じじゃない? あれってさ、自分の魔力が何に変わるのかを、頭の中で具体的な想像をさせるための補助なんじゃないかなって」
(実は少し前から思っていたんだよね...一度成功した魔法って、次からは詠唱しなくても使えるようになるよね。それってつまり、自分の魔力を変化させるイメージが、自然と頭の中で組み立てられるようになったからなんじゃないかな)
「うーーん...あ、でも確かにそうかも! 『〜〜』の部分で変化後の姿を言葉にすることで、頭の中で姿を思い描きやすくしてるって考えたら...すごくしっくりくる」
「でしょ? 結局魔法は想像の世界なんだと思う」
「なるほど...! 詠唱は、その想像をブレさせないための補助ってことか」
私の言葉に、カインは深く頷いていた。




