表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/45

アンコロさんだ!

(アメリアside)


ネリ公国に来て1週間が過ぎた。


アレクシア王子はまだ元気にしているのだろうか……。

ゼノンはちゃんと魔法学校に行ってるのだろうか……。


私は今、一時的にミレーヌ聖女の家に居候させてもらっている。

落ち着くまでの間、置いてもらえることになったのだ。


「アメリア、今日はいったい何を作ってくれたの?」

ネリ城から戻ってきたミレーヌが、皿の上にあるものを見て尋ねてきた。


「あんころ餅よ」


「あんころ餅? 変わった名前ね」


「とても美味しいから食べてみて」


さっそくミレーヌがひと口頬張った。


「なにこれ? 中に甘いものが入っている……。おいしい!」


ミレーヌはあんころ餅を絶賛し続けながら食べてくれた。

2人でお腹いっぱいに食べ終えたとき、彼女がこんな話をはじめた。


「今この国ではね、ファン王子の妹のことで話が持ちきりなのよ」


「へえー」


「王子の妹は、呪いで目が見えなかったのだけど、急に見えるようになったの」


「え?」

もしかして……。

「王子の妹の名前は、何と言うの?」


「ロゼよ」


ロゼ……。


あの子、ファン王子の妹だったんだ……。

それにしても良かった。

しっかりと見届けていなかったから心配していたのだけれど、ちゃんと目が見えるようになったんだ。


「治癒魔法使いのマリアーヌが、ロゼを治癒させたらしいわ」


「マリアーヌが?」


「今やマリアーヌの株は急上昇中よ。もう私の居場所はないくらいだわ」

そう言ってミレーヌは笑った。


それにしても、なぜマリアーヌがロゼを治したことになってるのだろうか……。


まあ、ロゼの目が見えるようになったのなら、そんなことはどうでもいいけど……。


私はとにかく、自分の命を守るため、目立たないようにしなければならない身だし……。


「それとアメリア……」

ミレーの聖女は表情を引き締めた。

「明日、私と一緒にネリ城へ行ってくれる? ファン王子が私たちに話したいことあるそうよ」


「王子が?」


「ええ、何やら重要な話らしいわ」


何だろう……、悪い予感しかしない……。


なにしろ私は、『呪いの架け橋』が欲しいなんて言ってしまい、かなり王子の機嫌を損ねてしまったのだから。


  ※ ※ ※


翌日、ミレーヌと私は、言われるままにネリ城へと赴いた。


広間に通されると、ファン王子とマリアーヌが並んで立っていた。

それに王子の左隣にもう一人女の子が立っていた。ロゼだった。


ロゼはしっかりと目が見えているようで、ちゃんと私に視線を合わせてきた。

けれどロゼは、私がアンコロだとは気づいていないようだ。

あの時、顔を見られる前に部屋を出て行ったので、当然といえば当然なのだが。


「ミレーヌ聖女、エルフィンド王国の結界に小さな穴ができたそうだ」

ファン王子は不機嫌そうな顔をしていた。

「あちらの聖女が魔法の力を弱められてしまっているらしく、ミレーヌに助けを求めてきている」


「私にですか?」


「ああ、小さな結界だ。修復に行ってくれるか?」


「……分かりました」


「それでミレーヌ、お前はそのままエルフィンド王国に留まってくれ」


「留まる?」


「これからもエルフィンド王国では、お前の力が必要なはずだ。当分の間、向こうで暮らすがいい」


「私がネリ公国を離れれば、この国の聖女が不在になってしまいますが……」


「それなら心配はいらない。ネリ公国にはマリアーヌがいる」


「……」


「マリアーヌは、呪いをも解くことができる魔法使いだ。聖女の代わりは充分に務まる」


「……私はもう、この国には必要ないということですね……」


「まあ、はっきり言えばそういうことだ」


ファン王子はそう言い終えると、私に目を向けた。


「それとお前、お前もミレーヌと一緒にエルフィンド王国へ戻れ」


有無を言わせない言い方に、私は何も答えることができなかった。


ふと王子の隣を見ると、マリアーヌが目を細めながら笑っていた。


そんな時、宰相のアブドルが現れ、王子に近づくと一礼した。


「エルフィンド王国から、迎えの者が参りました」


「通せ」


アブドルは一旦下がり、男を一人連れて戻ってきた。

連れてこられた男を見た瞬間、私は氷の中に閉じ込められたかのように体が固まってしまった。

アブドルと一緒にやってきたのは、アレクシオ王子の補佐官、シビルだったからだ。


私はできるだけシビルに目を合わさないように下を向いていたが、そんなことでこの身を隠せるわけがなかった。


シビルはすぐに私に気づいたようで、向こうも唖然としながら私を見つめ始めた。


「アリアさん、ネリ公国にいたのですか?」


「……」


「アレクシオ王子が、どれほど心配されていることか……」


王子が心配してくれているということは、まだ私がアメリアだと気づかれていないということか……。

ほんのわずかだが、ほっとした。


「シビルさん、あなたはこの女と知り合いなのですか?」

マリアーヌが初めて口を開いた。


「はい。アリアさんは我が国の魔法使いです」


「魔法使いですって? この女は魔法が使えないと言っていましたわよ」


「いえ、使えますが……」


「……私たちを欺いていたのね。アリア、どういうことなのか説明してくださるかしら」


「申し訳ございません」

私は何と答えていいのか分からなかった。ただ、これ以上嘘を上塗りしてもどうにもなりそうにない……。

「その……、あまり目立ちたくなかったのです」


「目立ちたくないとは、どういうことなの?」


「えっと、何と言うか……」


私がシドロモドロとしていると、思いもよらない人物が声を上げた。


「この声は! アンコロさんだ!」


目を向けると、そこにはぼう然と私を見つめるロゼの姿があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ