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ゼノンの告白

私が夕食を作り終えた頃、外からゼノンが戻ってきた。

レイ殺しの事件について、少しでも情報を集めようと町の人々の話を聞き回ってくれていたのだ。


「アメリア様、不思議なことがございます」


「なに?」


「それが、アメリア様が渡した王家のネックレスなのですが、どうもレイはそのネックレスをつけていなかったようなのです」


あれほど嬉しそうにして首に巻いていたネックレスなのに……。


「死ぬ前に、どこかへ仕舞っておいてくれたのかしら」


「だとすれば、ラッキーですね」


「でも、どちらにしても私が捕まるのは時間の問題だわ。聖女セレナは、私が変装していることに気づいているし」


そう……、私がアメリアだと暴かれるのは、時間の問題だった。


そして、そのあとに待っているストーリーは、斬首刑……。


「アメリア様、この国を離れましょう」


「もう、それしかないわよね」


「もちろん僕もご一緒させていただきます」


「それは駄目よ」


「どうしてですか?」


「ゼノンを、これ以上私の事件に巻き込むわけにはいかないから」


「そんな……。僕はアメリア様を一生お守りするつもりなのです」


一生って……。


「ありがとう。でも……」


ゼノンはまだ17歳……。

何とかして私との関係を終わらせてあげないと。


「アメリア様と僕とでは、身分が違うことは充分に承知しています。けれど、これから国を捨てて逃げ続けるのであれば、そばでアメリア様を支え続ける男が必要です。ですので……」


ずっと同じ家に住んでいるからだろう。ゼノンは間違いなく私に好意を寄せている。


そして正直に言うと、私もゼノンのことを素敵な男性だと思うようになってきていた。


けれど、これは命に関わること。


やはりゼノンを巻き込むわけにはいかない。


「ごめんなさい。はっきり言うけど、私、頼りない年下の男の子には興味ないの」


ゼノンは黙り込んでしまった。


「だからゼノンは、ちゃんと魔法学校を卒業することだけを考えていて」


「でしたら……」


ゼノンはしっかりとした目で私を見つめてきた。


「魔法学校卒業して、アメリア様を守れる男になったときには……、僕との結婚を考えていただけますか?」


結婚て……。


17歳の真っ直ぐな言葉に、どう答えて良いのかわからなかった。


けれど、ゼノンは真剣に申し出てくれている。


私もちゃんと答えないと。


「あなたが魔法学校卒業して、立派な大人になった時、今の言葉の返事をさせてもらってもいい?」


「はい。では、返事を待っています。アメリア様も、それまでは他に男など作らずに、僕のことを待っていただけますか?」


「分かった、待つわ」


私はそう答えると、場の空気を変えるために笑顔を見せた。


「さあ冷めるわよ。晩御飯を食べましょう」


小さなテーブルに向かい合い、私とゼノンは夕食を食べ始めた。

今日のメニューはハンバーグカレーだった。


ゼノンはいつものように、とびきりの笑顔で料理を褒めてくれた。


こんな温かい時間が、これからもずっと続けばいいのにと思った。


 ※ ※ ※


翌日の朝、私はエルフィンド王国から逃げ出すため、最低限の荷物だけをカバンに詰め、ゼノンの部屋を出た。


ただ、部屋を出たはいいが、どこの国を目指すべきかはまだ決めかねていた。


ミレーヌ聖女のいるネリ公国が良いと思えたが、よく考えると、今後セレナたちに発見される可能性も高い。

かといって、その他の国に行くにしても、情報も何もない。


どうすればいいのだろう。


そんな気持ちを抱きながら、私はある場所へと向かっていた。

国を出れば、もう簡単にはここへ来ることができない。

最後にちゃんと、お祈りをしなければ……。


そう思いながら訪れた場所は、私の母であるソフィアが眠るお墓だった。


墓石の前に立ち、小さな花をたむけた。


私は今、変装したアリアの姿で母の墓前に立っている。

本当は娘のアメリアとして、母に自分の姿を見てもらいたかったのだが……。

こんな姿でしかお墓参りをできないとは……。


手を合わせて、心の中で祈った。


『お母様に謝らなければならないことがあります。

私はお母様のことをずっと誤解していました。

お母様は私を守るために私の魔力を封じたのですね。

大聖女としてではなく、一人の女性としての幸せを願ってくれたのですね。

そんなことも知らず、私はお母様のことを嫌いになってしまいました。

ごめんなさい。

そして、ありがとうございます』


お祈りが終わり、目を開けた時、背後で何やら物音がした。


私を捕らえようとしている者でも来たのだろうか。

ビクビクしながら後ろを振り向くと、そこには思いもよらぬ人物が立っていた。


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