94_恩赦
「ルイを罰しないでください」
また背後から別の声が聞こえてきた。
子どものセルパンたちが8人くらい、姿を表したのだった。
「彼は僕たちを一刻も早く助けたくて、それできっと、あなたへの報告が遅れたんです」
「お前たち、体を休めて無くて良いのか」
俺は子どもたちに聞いた。
「魂を摂取したら回復してきたんだよ!
悪い人間たちを殴ったり、蹴っ飛ばしたり、ルイはカッコよかったなぁ!」
子どもたちが俺の周りに集まってきた。
「今度、ぼくらにも武術を教えてよ」
昏睡の呪術でも使えば早いのだが、俺はつい、武術に頼ってしまう。
「お前たち。誰の前にいると思ってる!やかましいぞ」
セルペリオールが大きな声で怒鳴った。
子どもたちはビクッとして、セルペリオールの前に一斉にひざまずいた。
「セル。レザールの部隊にいる子どもたちの親も、ルイを罰したとなれば黙っていないと思うぞ。彼らは、ここにいるルイとリザベル、それにグースに非常に感謝をしている」
「......くっ。......今回だけ特別だぞ。恩赦ということにする。今後は我の命令に背くことは許さない」
「よかった!」
「やったね!ルイ」
みんなが口々にそう言い、俺の周りに集まった。
「良かったわね!ルイ。さて、セルペリオールの領土にいたら、あたしは危ないわ。
お尋ね者だからね」
ミーネはそう言うと、姿を消した。
「今日は家族で祝いだ。こんなに心休まることは久方ぶりだ」
レザールもそう言うと姿を消した。
「レザールは同じセルパンだが、仲間ではない。今後、交流は禁ずる。わかったな」
セルペリオールは俺に向かってそれだけ言うと、姿を消したのだった。
「ルイ!良かった!」
リザベルは嬉しそうに俺に抱きついた。
「マジで、ヤバかったな」
俺も思わずリザベルを抱きしめた。
「もう!ルイはすっかり、言葉が人間みたいになってる」
リザベルは俺の顔を覗き込んだ。
「......ルイ......人間の憑依はまだ続けるの?」
俺は黙ってリザベルを見つめ返した。
「わかったわ。そんなに困った顔をしないで。
気が済むまで人間界にいれば良い。あなたを無理やり天界に戻したところで、あなたの心まで戻ってこない。悲しいけどそんな気がするの」
「ルイ!リザベル!」
グースがやってきた。
「グース!遅いじゃない。何してたの」
「煉獄でルイが継承した魂を集めてたんだ」
グースがリザベルに答える。
「シズオから継承した魂だな。グース。いつも大変なことばかり頼んでほんとにすまない」
夢の中なので、俺は煉獄へ行くことができない。
会話くらいならできるが、魂を食べたり、加工することは夢の中では不可能だった。
グースは煉獄をあちこち探し回ったのだろう。
頬は灰で薄汚れ、消耗した様子が見て取れた。
「グース。ありがとう。シズオがきっと喜んでる」
これでシズオの最後の願いをきちんと叶えることができた。
「ものすごい魂の量ですよ!ルイは魂保有量で、一気にセルパンのトップに躍り出たんじゃないですか。とりあえずは瓶詰めにしてルイの執務室に積み上げておきました。今度、人間界へお届けしますね」
「......今でも目に焼き付いている。彼の姿が。
シズオを救えなかった。俺は彼の最期の様子を一生忘れないだろう」
「ルイ......」
グースとリザベルは俺の肩をたたいた。




