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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
セルパン救出作戦
90/193

90_作戦の実行

月曜日の夜21時。


ミーネはとうとう肉体を捨ててセルパンの姿に戻っていた。

肉体は近くの病院に置いてきたという。

気の毒な道華の秘書は今ごろワケがわからなくて不安だろう。


「その姿がおばさんの本来の姿かよ。

あんがい美魔女じゃねーか」

瞬はミーネの姿を見て驚いていた。

たしかにミーネは不思議な美しさを保っているようだった。


「やっだーん、瞬たん、惚れないでぇ。あたしにはレザールと言う夫が......」

ミーネは不気味に身をくねらせた。


「その残念なキャラクターは変わんねぇんだな」

瞬が呆れていた。

ーーーーーーーーーーーー


「用意は良いか。同時に襲うぞ」

ハンズフリーで通話ができるマイクに向かって、俺はみんなに小声で話しかけた。

「準備できてるわ。ルイ」

「リザベルにグース。危なかったらお前らはすぐに天界に戻るんだぞ」

「分かってるわ」

「ルイも無事で」


瞬とミーネに目で合図する。


ナナが捕えられている拠点は工場地帯にある物流倉庫だった。

地下に駐車場があり、たくさんのトラックが停車している。


入り口付近には男の見張りがいた。


俺は見張りの背後にたち、ヤツの首を絞めながら耳元でささやいた。

「静かにしろ。俺はセルパンだ。逆らえばお前を呪い殺す」

「......ヒッ!」

瞬が素早く男のポケットをあさり、財布からそいつの免許証を取り出した。

「佐々木真司だ」


俺は呪文を唱えた。

「佐々木真司。毒蛇がお前の手首に巻き付いている。

暴れると蛇はビックリして噛み付く」

「ヒッ」

男はジッとしていた。


「清めの檻はどこだ。鍵のありかも言え。それから監視カメラを切るんだ」


「檻は地下にある。か、監視カメラは無理だ。遠隔で操作している」

「鍵のありかを教えろ」


監視カメラが無効にできなかった場合に備えて、俺たちはマスクを用意していた。

視界が悪くなるので、なるべく使いたくなかったのだが。

マスクをかぶる。


鍵は男の腰にぶら下がっていた。

男はもう用無しだ。

ミーネが昏睡の呪文を男にかける。


(順調だな)

地下へと階段で降りる。

地下には2人の男が、見張りに立っていた。


「お前ら誰だっ」

瞬がすばやく男のひとりに肘打ちを食らわす。

俺もつかみかかってきた男の腕をいなして関節を決め、みぞおちに当身を食らわした。

檻の中に囚われている子どもたちが、驚いてこちらを見ていた。

「助けに来てくれたの!?」

「そうだ。今までよくがんばったな。えらいぞ」


俺たちが戦っているあいだ、四隅にある監視カメラに、ミーネが黒いスプレーを浴びせていた。

「いそげ!監視カメラを見張ってるやつが、きっとすぐにボスに連絡する

それからミーネ!檻には触らないように注意しろ!火傷する」

「俺は触っても大丈夫みたいだ!」

瞬が叫ぶ。


「大変だわ。この子、弱ってる」

ミーネが、囚われている子どものセルパンの一人を抱き上げる。


「助けに来た。逃げよう」

俺は、かなり弱っている高齢のセルパンの肩を揺すった。


「ナナは?ナナはどこにいるの?」

ミーネがキョロキョロ通りを見回す。


「なに?いないのか?」

「いないわ。どうして?」

「お......お姉さんなら、ちょっと前に連れてかれた......」

苦しそうな息を吐きながら、子どものセルパンが言った。


「こ......ここのボス、早瀬の部屋に連れてかれたんだ......と思う」

「そんな!そこはどこなの?」

ミーネの顔は真っ青だ。


「大丈夫か?自力で天界には戻る力は残ってないよな?」

俺が肩を揺すっているセルパンは、800歳を過ぎているのだろうか。


「き、来てくれて.......ほんとに、ありがと......う」

「もっと早くに来ればよかった。動くとつらいか?」

「あぁ。もう、私は足が無いんだ」


その言葉にギョッとして、老人の足を見ると、すでに彼の足は灰になっていた。


「わ......たし、は、シズオ・ガルシアだ」

老人はフルネームを名乗った。

初対面のセルパンにフルネームを名乗るのは有り得ないことだった。


老人の手を握った。

「俺はルイ。ルイス・ベルナルドだ」


絶え絶えの息で、シズオは俺に言った。

「ルイ。もうだめだ。私は灰になるつもりだ......お願いがある。

私が自由だったころ......集めた魂......もらって欲しい」


「えっ。そんな」

「わ......たしは囚えられて......年寄りだ。だから、煉獄の......かなり....いたんでる」

シズオは途切れ途切れに話した。


シズオは清めの檻に囚えられて長い。

その間に寿命を迎えた契約した魂たちは、シズオを見つけられず煉獄をさまよっている。

毎日、煉獄の炎で焼かれているのだ。

だから、魂たちはかなり傷んでいる。

彼はそう言いたいのだろう。


シズオは両手を掲げると最後の力を振り絞って、自分の腹の上に契約書を出現させた。

かなりの数だった。


そこにサラサラと署名していく。

「さぁ......お願いだ......君も署名して......はやくっ」

「シズオ」

俺は促されるまま契約書に署名した。

シズオが無事に天界にもどったら、契約をまた戻せば良い。

そう思ったのだが。


「よか......た。これで......心残りもな......い。

たの......む。私の魂たち。煉獄から早く救い出して......やって」


「分かった。すぐに助け出す。安心してくれ」


シズオはすでに腹まで灰になっていた。

自分で灰になるのを早めているようだった。

早く楽になりたいのだろう。


だがシズオは最期まで、あきらめずに助けが来るのを信じてねばっていたんだ。


「シズオ、頼む。死なないでくれ。天界に、我が家に帰ろう」

俺は叫んだ。


「我が家......あぁ......」


シズオは俺の言葉を聞いて、懐かしそうな、嬉しそうな目をした。

おそらく天界の自分の家を思い出したんだろう。


シズオはレザールをボスとすることを示す印を持っていた。

だから天界には自分の家族もいるのかもしれない。

なんとかして家族のもとに戻してあげたかった。


だが、願いも虚しく、シズオの全身はやがて、灰になった。



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