86_暗黒世界にて
「ミーネ、後をつけられたりしてないだろうな?」
道華は俺の行動を見張っていた。
俺とミーネが会っているのがバレたらまずい。
俺には尾行は無かった。
「大丈夫よ。ミッチーたちは、今準備で忙しいからね」
ミーネはすました顔で、ソファ席に腰掛けた。
「あなたがミーネ?人間に憑依しているようだけど。中身は本物ね?」
「お前、デスゾーンからどうやって逃げ出した」
リザベルとグースは、ミーネを見て驚いていた。
「あらっ。ツヤツヤの可愛い若造ばっかね。
あんたたちが束になってかかってきたって、あたしは捕まんないわよ」
ミーネは、リザベルとグースに向かってペロッと舌を出す。
「ミーネからは、情報をもらいたい。今は一時休戦だ。
くれぐれもこの店の中で戦争を始めるなよ?」
俺は、セルパンたちに言い渡した。
「よくわかんねーけど、俺以外はみんな人間じゃないんだなぁ?」
瞬は、ジンジャエールを飲みながら言う。
「ちっ。甘い。ビールが飲みてえな。おばさーん、ビールひとつ」
瞬が広子に向かって叫ぶ。
広子は、しかめっ面っをこちらに向けた。
「ダメだよ。未成年は酒は飲んだらいけないって知らないのか」
俺は慌てて、瞬を止めた。
「そこの人間。お前が、ルイを清めの檻から助け出してくれたんだな?」
グースが瞬を見て言う。
「グース。こいつは上村瞬だ。名前で呼んでくれ」
「まぁ!そうなの!あなた、私の大事なルイを助け出してくれたのね?」
リザベルは瞬の両手を握りしめる。
「上村瞬。心から感謝する。ルイは大事な友なんだ」
「ありがとう。あなたがいなかったらルイは、どうなっていたか」
グースとリザベルに言い寄られて、瞬は嬉しそうだ。
「洋平は清めの檻で道華にズタズタにされてたからな。
もう少し俺の到着が遅かったら、完全に襲われていたと思うよ?」
瞬が俺を見て笑う。
「まぁ事実なんだけど。あんまり詳しく話すなよ」
瞬をにらむ。
「危なかったのね。道華だけは許さないわ。でもあの女には術が効かないのよ」
リザベルはくやしそうにしている。
「雑談はおわり」
早く本題に入りたかった。
念のため暗黒世界の店内を見回す。
店内に敵のスパイはいない。
シルクハットがカウンターのいつもの席で静かに酒を飲んでいるだけだった。
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俺は道華の命令で、さっきまで敵の拠点にいたことを、みんなに話した。
檻の中にレザールがいたという情報は、ミーネに言うべきかどうか判断に迷うので、話さなかった。
「ちょっとまって!ルイたん。敵の拠点に行ってきたの!?」
俺の話を聞いたミーネが大声を出す。
広子がチラッとこちらを見る。
おそらく広子は、俺たちがゲームの攻略の話でもしているのだと思っているだろう。
「そうなんだ。今さっき行ってきた」
「そこに、女の子はいた!?あんたたちくらいの子なんだけど」
ミーネは俺の両肩をつかんで、いつになく真剣な口調で聞いてきた。
「女の子......?俺たちくらいの年齢のセルパンはいなかったけど。
もっと若い、子どもなら5人いた」
「......いなかったのね?じゃあ、別の拠点なんだわ」
ミーネは俺の言葉を聞いて、ガクッと肩を落とした。
「ナナ......」
そうつぶやくと、口に手を当てて放心したような顔になった。
「ミーネ。お前の知り合いが閉じ込められているのか?」
俺はミーネに尋ねた。
「知り合いじゃないわ。私の愛しい子どもよ」
ミーネは俺を真剣な目で見上げた。
「子ども!?子どもとは、生まれてすぐに引き離される決まりじゃないのか?」
グースが驚いてミーネに聞く。
「そんな決まり、あたしたちレザールの組織にはないわ。
それは、セルペリオールが決めたルールでしょう。
あの残酷な男なら、やりそうなことだけど」
「あたしとレザールの愛しい娘。ナナが罠にハマってしまったの」




