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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
セルパン救出作戦
85/193

85_有理との電話

朝霧と別れたあと、カフェ「暗黒世界」へと急いだ。


拠点がもうひとつあるということ。

拠点の場所をセルペリオールに知らせるな、とはどういう意味なのか。

ミーネからもう少し情報が欲しかった。


ミーネが真実を話すとは限らない。

そこが不安だが。


駅から暗黒世界へ向かう途中、スマホが鳴る。

道華からだった。


「報告がないようだけど。一体どうなっているの?」


どう報告しようか迷った。

嘘をつけば、あらを見つけられたときに怪しまれる。

閉じ込められているのが「セルパンの大物」であることは伏せて、あとは正直に話そう。


「檻の中のセルパンと話した。彼は、並外れた能力の持ち主だから、普通のセルパンと違うんだ」

「それで?」

道華が先を促す。

「弱らせるのには、もう1年くらいかかるんじゃないかな」

「逃げ出す可能性は?」


「スキを見せなければ逃げ出せないと思う。

ただし、拷問する人間が出入りする瞬間に、逃げ出す恐れはある」

正直に答えた。

レザールは結界も、ものともしない可能性がある。

むしろなぜ、未だに逃げ出していないのか不思議なくらいだ。

彼はもう一つの拠点にいる娘のために囚われ続けているのかもしれない。


「参ったわね。かなり危ういじゃない。不良品を抱えるようなものだわね。

そんな個人差があるとは思いもしなかったわ」

道華は電話の向こうでため息をつく。


「ルイ。あなたに会いたくてたまらないのだけど、今は作戦の準備で忙しいの」

「俺はお前に会いたくないから気にするな」

「私は、あなたが裏切るんじゃないかとまだ思っているの」


「裏切るつもりなら、もうとっくにあの拠点にセルパンの集団が襲ってるはずだ」

「そうね。でも拠点は2箇所ある。だからあなたは動けずにいる。

もしも裏切ったら、もう一つの拠点にいるセルパンを必ず灰にするから。

仲間が死んだらあなたのせいよ」

道華はそう言うと電話を切った。


「裏切れば仲間を灰にする」

結局、もう一つの拠点も突き止めなければ、救出作戦は難しいということなのか。


いつまで続くのか。

道華に弱みを握られ続けるのはもう、うんざりだった。


「......」

スマホを握りしめて立ち止まった。

有理に電話したい。

そう思った。


呼び出し音を鳴らす。

「......もしもし」

有理の声だった。

出てくれると思わなかった。


「有理。出てくれてありがとう。今日は、ごめん」


電話の向こうで、有理がちいさくため息をつくのが聞こえた。

「笹山のお姉さん。なにされた。大丈夫だった?洋平」

「うん。あいつに仕事を頼まれて。さっき、それを済ませた。

いまから、グースとリザベルとほか何人かと話があるんだ」


「有理。怒ってる?っていうか、もう俺のことなんか嫌いになったよね」


しばらく沈黙したあと、有理が小さな声で言った。

「怒ってる」


そりゃそうだよな。

リザベルとのキスも見られた。

次は道華だ。

それも今回は、俺から彼女にキスをしたんだ。


「有理、信じてもらえないだろうけど、道華のことを俺はなんとも思ってない。あいつは......」

有理が俺の言葉を最後まで聞き終わらないうちに言った。

「違う。怒ってるのは違う」

有理が強い口調で言った。

「えっと。違うんだ。なんで話してくれないのか。洋平は何者なのか。

何が起きているのか」


「えっ」


「洋平は、おびえていた。

リザベルさんとキスは、洋平、幸せそうだ。だからあたしは悲しくなった」


有理がゆっくりと考えながら、そんな事を言った。

「洋平、あやつられていた。どうしてそうなった?」

驚くべきことに有理は俺が道華にあやつられていることを見抜いていた。

有理の魂が、天使に近い段階にきていることと関連しているのだろう。


「有理......いまは話す時間がない。今日、有理にいろいろ話すつもりだったんだ。

なのに道華に邪魔された」

「ほかに話す時間はあった。いつも話してくれない。それが嫌だ」

有理はそう言って電話を切った。


「有理」

スマホを握りしめる。

そうだ。

俺は有理に対して正直じゃなかった。

有理に電話をかけ直したかったが、暗黒世界での話し合いの時間が近づいてきていた。


--------------------------------


「珍しい時間に来たじゃない」

カフェ暗黒世界。

カウンターから巨体の広子が言う。


ここに来て、広子の顔を見ると、俺はなぜかほっとする。


「この店、19時からは酒を出す店になるのよ?

高校生が来るのは困るんだけど」


「ふうん。俺のほかに、あと4人来るんだけど。だめかな」

「えっ?4人とも高校生なの?」

広子が困った顔をする。


「1人は17歳だけど、もう1人は50代の女で、あとは20代の男と女」

「へぇ?変な感じの年齢層ね。一体、どういう集まりなのよ~」

広子が首をかしげながら言う。


「みんな俺の友達だよ。50代の女だけは俺の敵なんだけど」

「50代の女があんたの敵?

わかった!なんかのゲームのオフ会でしょ。

まぁ、大人がそんだけ混じってるならいっか。

未成年の二人には、酒は出さないわよ?」

広子がカウンターの上を整理しながら言う。


「りょーかい。みんなが来たら角の席、使わせてもらうから」

俺も広子を手伝ってカウンターの上の皿やコップを流しに運ぶ。


「好きにすればいいわよ。あんた、いつもみたいに飲み物とか運んでよね~」

広子がぶっきらぼうに言う。

「分かってる」


俺は暗黒世界で、広子の手伝いをすることがしばしばあった。

ソファ席に座った客に、食べ物や飲み物を運ぶ仕事だった。

広子は体が大きすぎて、あちこち動けないからだ。


一度、街の情報誌に暗黒世界が紹介された。

店の紹介ページに、たまたまいた俺も店員として載せられてしまった。

俺の写真と「おすすめはケーキセットです」と言うコメントがデカデカと掲載されていた。


広子が言うにはそれ以来、女の客が来て「バイトの子はいないの?」とよく聞かれるそうだ。

同じ高校の女たちもたまに来ているようだ。


広子は俺をアルバイトとして正式に雇いたがった。

だが貴重な人間界での時間をアルバイトに拘束されるのが困るので、いつも断っていた。


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