83_【ナナ】トラックの中で
ワナにはまってから、どれくらい経つんだろう。
最初のうちはおおよその時間で計算していたけど、途中から分からなくなった。
パパやママはいつ助けに来てくれるんだろう。
日本でセルパン捕獲が起きているのは有名だから、あたしが日本にいるのはふたりとも分かっているはずだよね?
久しぶりの召喚。
油断していた。
あのとき。
急に床に水が流れて、私を守っていた魔法円が消えた。
いそいで天界に戻ろうとしたら、そこはもう清めの檻の中だった。
全ての呪術が封じられてしまって、あたしは自由を奪われた。
ここは、人間たちが運転するトラックの荷台がすっぽりと入る倉庫の一室だった。
あたしは、せまいトラックの荷台の中で召喚された。
ガタゴトと揺れるから変だと思ったんだ。
少しでも変だと思ったら、すぐに天界にもどるんだよ。
ママはいつもそう言っていたのに。
呼び出した人間は、善良そうだったから気を許してしまった。
でも人間の話は不自然に回りくどくって。
今思えば時間稼ぎをしていたんだろうな。
トラックの荷台の中で召喚されて、魔法円は水で消された。
そのままその荷台は、清めの檻として作られた倉庫にすっぽりと入れられてしまったんだ。
そのあと、トラックの荷台の四方を囲んでいた壁が、ゆっくりと床に倒れた。
まるで、プレゼントのBOXが開かれるように。
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「きれいな金髪に青い目だな」
「へえ。若くてかわいいのが捕まったな」
「こいつによると、ナナっていう名前のセルパンだそうです」
人間の男たちがあたしのことをジロジロと眺めていた。
30代くらいの男の一人が、あたしの囚われた清めの檻に入ってきた。
男はあたしの髪の毛に触った。
「触らないで!」
男の手を振り払う。
「ナナ。そう怖がるな。俺はここのボス、早瀬賢治だ。
お前とは長い付き合いになるだろう」
「仲間がすぐに助けに来るわ。あんたは魂を引き裂かれる」
「ははは?そうなのか?それは怖いなぁ」
賢治はそんなことをいいながら、あたしのアゴをつかんだ。
胸に触れようとしてきたので、思い切り平手打ちしてやった。
「そうやって、反抗できるのも今のうちだぞ。
周りを見てみろ」
賢治が、周囲を見回した。
あたしの正面には同じような清めの檻が並んでいた。
閉じ込められているセルパンは、顔に生気がなく、みなうずくまるか寝転がっていた。
「そんな......あんたたち、なんてこと......」
「お前もいずれああなる。檻から出しても、もう天界に戻る力もなくなるんだよ?
あいつらは、檻の中に閉じ込めたままだけど、お前は上玉だ」
賢治はそういうと、あたしの頬に触れた。
「お前が弱ってきたら、俺の部屋で飼ってやっても良いかもな」
賢治は再びあたしの髪の毛に触れた。
「やめて!」
「お前の肌はしっとりして、吸い付くようだ。すべすべだな......」
あたしは、ベタベタと触ってくる賢治の手を振り払い、また顔を平手打ちした。
「絶対、あんたの言いなりになんて、ならないんだから」
あたしは賢治から離れようと、檻の隅に逃げた。
「かわいいな。楽しみが増えた」
賢治はそう言うと、あたしの檻から出ていった。
最悪だ。
でもきっとパパやママが助けに来てくれるはず。
そうだ!
パパは言っていた。
あたしが万が一、人間の罠にハマって逃げられなくなったら、その人間にパパの印を教えろって言ってた。
「俺もわざと罠にハマる。それでお前のことを助けてやるから」
パパはそう言っていた。




