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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
人間に憑依
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8_自分の家が分からない

有理が俺のことを心配している。

嬉しくて、わけもなく胸が高鳴った。


「川田くん。変だ。きっと、頭打ったせい」

不安そうに俺を見つめている。


そうか。

そういえばそうだ。


初めての人間への憑依で俺自身、混乱していた。

俺は今、人間の川田洋平なのだ。

セルパンのルイではない。


だから「治癒の魔法」なんて言ってはいけなかったのだ。


「有理。頭のケガは大丈夫だよ」

俺は改めて有理に説明した。

「ホラ、みて。なんともない」

後頭部を有理に見せる。


「うん。でも変だ。なにかが。すごい音した。ドシン」

有理は俺の後頭部を調べながら言った。


「それは、洋平がデブだから」

また俺はおかしな事を言ってしまった。


ダメだ。

有理が首を傾げている。


やばい。

自分が川田洋平だということを頭に叩き込まなければ。


「帰ろう?外。暗くなるよ」

有理が言う。

「川田くん。心配だ。一緒に帰る」

「一緒に?嬉しいな」


------------------------------


俺と有理は校門を出た。

人間界は、セルパンの住む異世界と違って、様々な匂いがする。

汚染された匂い。

食べ物の匂い。

汗や動物の匂い。


それらが混じり合っている。

俺は思わず顔をしかめた。


「笹山にお金払う。なんで。川田くん!」

有理が俺に言う。


「ほんとだよなぁ。なぜなんだろうな」

俺はまた、他人事のように言ってしまう。


「このままはよくないよ」


「うん。わかった。そうだねぇ」

俺は有理の言葉を聞き流した。

まるでリザベルの求愛を聞き流すように。


「このままはよくないよ」

有理にそう言われたが、洋平自身が、なにをどうすべきなのか?

正直言って、俺にはよく分からないし、どうでもよかった。


そんなことよりも、有理と二人でこうして会話していることに興奮していた。

有理の言葉づかいは独特だったが、慣れれば、彼女の言いたいことは伝わってきた。


「あれっ、川田くんの家どこ」

有理が不意に立ち止まる。


「家......か。どこなんだろうな」

俺も首を傾げた。


---------------------------------------------


自分の家が分からないことで、さらに有理は俺を心配した。


「一時的に分からなくなったみたい」

そう言って、俺はなんとか誤魔化した。


結局、財布を探って「住所」が載っているカードを見つけた。

そこに載っている住所を有理がスマホで調べてくれた。


最近の人間たちが、いつも夢中になっていじっている「スマホ」。

まるで体の一部のようだな。


電車に初めて乗った。

関所を通るときも、やり方が分からなくて有理に教わった。

どうやらカードをかざすことで、関所の通過が許可されるようだ。

カードがなかったら家に帰れずに人間界をあてもなく、さまようことになる。


残酷で恐ろしい仕組みだった。


「ありがとう。有理」

「川田くん。あたしのこと名前で呼ぶ」

「あぁ~。そっか。今までと違った?」

川田は生前、有理のことを名字で呼んでいた。


「名前で呼ばれるのいや?」

俺は有理の目を覗き込んだ。

「ううん。ただ違うから」


「俺のこともル......じゃない、洋平と呼んでほしいな」

あやうく「ルイと呼んで」と言いそうになった。

危なかった。


でも本当はルイと呼んで欲しかった。


「洋平ね。いいよ。

洋平は親に言うんだ。怪我したと」


「具合が悪くなったら有理が来てくれる?」

俺は有理に甘えてみた。

「無理だ。遠い。でも電話して」

「電話か」


ポケットやカバンを探ると洋平のスマホが出てきた。

スマホに電話の機能があることくらい俺も知っていた。


有理が教えてくれて、俺はいつでも有理と会話ができる魔法を手に入れた。

素晴らしすぎる。

最強魔法だ。


「ここが川田洋平の家。魂の塔に似ているかも」


川田洋平の家は、やけに白かった。

その白さが魂の塔を思い出させた。


地獄の門ほどではないが、巨大な門が目のまえに立ちはだかっていた。


考えてみたら、道元の「寺」に寝泊まりするより、はるかに良い。

セルパンにとって寺は苦手な場所のひとつだった。


「有理、またね」

「うん、洋平!楽しかった。明日ね」

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