7_憑依成功
「川田くん」
有理は懸命に洋平の肩をゆさぶるが、洋平の中には、すでに魂がない。
川田洋平はもう死んでる。
セルパンである俺には一目瞭然だった。
「あぁ......。き、救急車。川田くん。あぁ」
有理はパニックに陥っていた。
俺も同じように混乱していた。
俺は、なにをやってるんだ。
どうしたらいい?
マーヤの占いでは、有理は道元を突き飛ばして殺すはずだった。
だが俺が運命の道筋を変えてしまったのだ。
もうだめか
計画が丸つぶれ......
......いや......。
まだ間に合う。
俺は、川田洋平の死体に目をやる。
死んだのはほんの数秒?数分前?
俺は急いで洋平に憑依した。
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「うっ、ゲホッゲホッ!」
「か、川田くん!?」
俺は洋平の中に無事、入り込んだ。
心臓は動き出し、肺は空気で膨らむ。
俺の天使、有理の顔もしっかり見え始めた。
脳も大丈夫なようだな。
どうやら間に合った。
憑依は成功した。
「......ゲホッ!有理。俺のミスだ」
「えっ?川田くん?」
打ち付けた後頭部がジンジンと痛む。
セルパンのときも、実体化すると痛みや恐怖も味わうことがあるが、
これほどの痛みはなかなか味わったことがなかった。
「川田くん、あたしのせいで、頭ぶつけた。すごい音した」
俺は床に尻餅をついたまま、後頭部をさする。
洋平は頭部に致命的な損傷を受けていた。
このままでは、致命傷を負った洋平の肉体は、すぐに滅んでしまう。
すでに俺の意識は朦朧とし始め、魂が肉体から追い出されかけていた。
だがそんなことは、想定内だった。
「有理。い......今怪我を治すから。待って......くれ」
致命傷を癒やす魔力をマーヤから授かってきた。
一度だけ使える魔力で、二度目はない。
引き換えに、人間の魂を10。
マーヤに上納しなければいけなかった。
かなりキツイが仕方がない。
俺は目をつぶり、精神を統一。
小さな声で呪文を唱えた。
徐々に痛みが引いていくのが分かる。
だが俺の魔法能力は貧弱だった。
天界から同時にマーヤが補助呪文を唱えてくれているのを感じる。
マーヤは自分のスコープで俺の様子を見ていてくれたのだろう。
俺ひとりじゃ、治癒は無理だった
ナイスサポート。
マーヤ。いいぞ。
うまくいった。
ゆっくりと立ち上がる。
傷はすっかり治った。
それなのに、なんて体が重いんだ。
びっくりするほど、重い。
そして、動きがトロい。
川田洋平は、100キロ近いデブだった。
筋肉はゼロ、脂肪のカタマリ。
俺はとんでもなく分厚い肉体の檻に閉じ込められた。
「川田くん、歩ける。大丈夫。頭は」
「もう大丈夫。心配ないよ」
有理を安心させようと微笑んだ。
「でも川田くん。頭打った。強く。病院へ行く」
有理は心配そうに俺の顔を覗き込む。
うっ。
有理が俺を心配している。
なんて幸せなんだろう。
「大丈夫だよ。治癒の魔法ですっかり傷は癒やされた」
俺がそう言うと、有理はさらに不安そうな顔をした。




