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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
人間に憑依
6/193

6_憑依失敗

「川田くん怖がってる。笹山からお金を返してもらう!」

有理は洋平に詰め寄る。


「北条、ほっといてくれよ」


川田洋平。

せっかく有理という天使が手を差し伸べているのに、

なぜお前は、その手を振り払う?


「なぁ~北条、こんなヤツほっとけって。

このあとヒマだろ?俺ん家で遊ばね?」


道元は有理の髪に触れた。

「遊ばない」

有理は髪に触れる道元の手を振り払う。


「笹山!お金を返せ」

道元は構わず有理に触れようとする。

この男は、有理に惚れているのかもしれない。


「笹山。さわらない。いやだ」

有理は道元の手をうるさそうに振り払った。


「ふん。北条が遊んでくれないなら帰るかな。

さっ!帰ろう」

道元は取り巻きに声をかけ、階段を降りようとする。

「笹山。お金は?返す」


(そろそろか!)

俺は身構える。

すぐに憑依できるように道元の近くで待機していた。


有理が道元の肩のあたりを押すのが見えた。

道元は、肩を押されて足を滑らせる。

まるでスローモーションだった。


人間に憑依するのは、初めてだ。

その方法はマーヤから聞いたり、古文書を読み漁ることで頭に入れてきた。


だが俺にとって初めての行為。

一歩間違えると、何がおきるのかわからない。


俺は緊張していた。

あまりに緊張しすぎて、実体に変化しかけるという間違いを犯してしまった。


セルパンのままであれば、俺は実体がない。

人間は俺の肉体をスルリと素通りしてしまう。

しかし実体化すると、俺の体は人間からも見えるし、触れ合う事もできてしまう。


緊張のあまり俺は、自分の体を一瞬だけ実体化させてしまった。

ほんの一瞬だけだったので、目に見えるほどではなかったのだが。


だが有理に押されてバランスを崩し、階段から転げ落ちるはずの道元を

俺の実体が、支える形になってしまった。


「うっ?なんかいま......」

道元は自分を支えたものがなんなのか、後ろを振り返るが、なにもない。

首をひねっている。

「おい!北条、あぶねーじゃねーか。

階段で押すなんて」


道元は仰向けに倒れずに、俺に支えられ命を取り止めた。


有理は道元を殺す運命からまぬがれた。


しかし......運命は変えられない。

純白で強力なパワーを持つ有理の魂は、この場の誰よりも運命を左右する力が強かった。

つまり有理は「誰かを殺す」運命を背負い続けていた。


「北条、もう止めてくれよ」

洋平が有理の腕をつかみ引っ張る。


ふいに腕を掴まれた有理はびっくりして振り向く。

足の悪い有理はバランスを崩して、後ろに倒れかかる。

洋平もそれにつられて、前につんのめる。


有理は近くにあった手すりを支えにして体勢を立て直すが、

洋平は、有理に引っ張られて、階段を転げ落ちる。


そして、頭部を強打する。


「うっ」

洋平のうめき声。


「か、川田くん?川田くん?」

有理の声。


「おい!行こうぜ......」

取り巻きの一人、犬山が道元の腕を引っ張る。

「そ、そうだな」

道元とその取り巻きは、気を失った洋平を見て嫌な予感がしたのか、逃げていく。


階段には死亡した洋平と、青ざめる有理。

そして、セルパンの俺だけがとり残された。


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