75_道華の部屋で
道華の部屋は、思ったよりも地味だった。
もっと悪趣味な絵画や置物が並んでいるのではないかと思っていた。
壁際に置かれた本棚にはぎっしりと書物が並んでいた。
宗教学、神学、スピリチュアルに関する本、歴史書。
道華はかなりの読書家のようだ。
「すげー本の量だな」
瞬が、本を一冊取り出す。
「おい、あまり不用意にいじるなよ。侵入したことがバレないように」
「わかってるって。きちんと元通りにするし」
俺は道華の机を調べ始めた。
机の長い引き出しをあけて、ギョッとした。
(なんだこれ!)
俺の写真がいくつも出てきたのだ。
学校からの帰り道。
それに朝のトレーニング、街中をぶらついている姿まで。
写真は、有理と俺が公園で抱き合っているものもあった。
いつの間に撮られていたんだ。
油断していた。
有理の写真には喉の部分に、穴が開いている。
刃物で突き刺したような跡だった。
まずい。
有理の存在が道華に知られてしまった。
嫌な予感しかしない。
写真を全部持って帰りたい衝動にかられた。
だが、そんなことをしたら侵入がバレてしまうだろう。
気を取り直して他の引き出しも漁る。
瞬も別の戸棚をあさりはじめた。
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「なんか、手がかりあったか」
瞬が聞く。
「ない。そっちは?」
「こんなものなら出てきたけどな」
瞬が観音開きの扉を開く。
中には、鞭や手錠のほか、使い方の分からない拷問の器具がぎっしりと入っていた。
背筋が凍る。
「ヤバすぎる」
俺は拷問器具から急いで目をそらした。
「道元からはまだ連絡はないよな?」
イヤフォンにはなにも連絡が来ていなかった。
「連絡は無い。まだ家族で食事中だろう」
そのとき、部屋の入口のドアが開いた。
「ミッチーの部屋で男子二人が何してる~?下着ドロボウかしらぁ」
ミーネだった。
「ミーネ!どうしてお前がここに!」
俺は叫ぶ。
道元の母親は、まだ料理屋にいるはずじゃないのか。
「洋平!こいつがミーネなのか?
こいつは、道元のお袋さんじゃないぞ」
瞬が叫んだ。
「なにっ」
「ははは!なにか勘違いしていたようね」
俺のミスだった。
俺は、中年の女というだけで、勝手に道元の母親だと思いこんでいたのだ。
「お前は誰に憑依したんだ」
「ミッチーの秘書だよーん」
ミーネがニヤリと笑う。
「くそっ!瞬。闘うぞ」
「その人間の子、瞬たんっていうの?あたしの魔術に対抗できる子?」
ミーネは瞬めがけて、炎を放つ。
俺は瞬の前に素早く立って、その炎を受け止める。
「瞬!ミーネは炎を使うけど、これはまやかしだ。本物の火だと思うな」
瞬に言った。
「そう言われてもな。炎にしか見えない!」
瞬が言い返す。
そのときだった。
道元から、「食事が終わった。家に帰る」という連絡が耳に入った。
道華が20分ほどで、帰ってきてしまう!
「瞬!連絡が来た。時間がない」
「わかった」
俺はミーネの炎を受け止めながら、間合いをつめる。
ミーネは、火でできた龍を瞬に向けて放った。
俺も、すばやく自分の魔術で大蛇を放つ。
瞬に襲いかかろうとした火の龍を、なんとか俺の大蛇が食い止める。
「あらっ!ルイたん。前のときより魔力が強くなったじゃない」
「あのとき俺は飢えて弱っていたからな!」
俺はミーネにタックルした。
「キャッ」
とミーネが声を上げる。
ミーネは腰を落として、倒れまいと耐える。
そこへ瞬が背後にまわり、ミーネの首を絞める。
「ンゴホッ!またこのパターン?」
ミーネが身をよじって逃れようとするがムダだ。
「男の子二人に、すごい勢いで抱きつかれて、ンゴホッ!嬉しいゴホッ!」
「瞬、ミーネの両腕の自由を奪うんだ!」
瞬がミーネの両腕をひねり上げる。
「そうだ。そうすれば、ヤツは術を使えない」
火の龍はジュッと音を立てて消えた。
残された俺の大蛇はシャーッという音を立てて牙を見せる。
「んねぇ、瞬たん。痛いんだけど!」
「うるせえ。瞬たんてなんだよ?」
瞬は、ミーネの腕をさらに締め付ける。
「人間のガキが!キーッ、くやしい!」
「ミーネ!セルパン業者の拠点の住所を言え!」
「あんたたち、住所を調べに来たの?下着ドロボーじゃないの?」
「早く言わないと、瞬に腕の骨を折られるぞ」




