74_計画
放課後。
俺と道元は、瞬といつもの河原で合流した。
「呼び出して悪いなぁ」
「いいから早く話せ」
気が短い瞬が、俺を急かした。
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「セルパン取引業者ねぇ。そんなの初めて聞いた」
道元と瞬に、道華の計画をすべて話した。
「姉ちゃんは、そんなこと計画してるのか」
道元は不安そうに俺を見た。
「ウチのお袋もそれに関わってるんだよな?」
「そうだ。お袋さんに憑依したミーネも計画に関わっている」
「それで俺たちに何をして欲しいんだ」
道元が俺に聞いた。
「道華の部屋を調べたいんだ。二人には見張りをしてほしい」
俺は計画を二人に話した。
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「それなら、ちょうど今週の土曜日が良いな」
道元が言った。
「今週の土曜日は、婆ちゃんの誕生日なんだよ」
あの、白髪の老婆か。
道華と一緒に清めの檻に入ってきた老婆を、俺は思い出す。
あの老婆は、俺を殺したがっていた。
「毎年、婆ちゃんの誕生日には家族で川端亭で食事をする決まりなんだ。
だから土曜日、俺んちは、留守になる」
「そうなのか。じゃあ、土曜日決行だな。
道元と瞬は、道華やミーネが、寺に戻ってこないかどうか、見張っていて欲しい」
道元はうなずく。
「分かった」
「そのスキに、お前は道華の部屋で、手がかりを探すんだな?」
瞬が聞いた。
「そうだ」
「道華とお袋さんを見張るのは道元だけでいいじゃねえか。
俺も洋平と一緒に、道華の部屋の捜索に加わる」
「ダメだ。危険すぎる。瞬は道元の寺の近くで、見張っていて欲しい」
しかし瞬は頑固だった。
「いや。俺がいた方がいい。
俺は子どもの頃から道元の寺に出入りして、遊んでんだ。
家の間取りや隠れる場所なんかにも詳しい。
それに二人で探したほうが、短時間で済むじゃんか」
しばらく考え込む。
たしかに瞬の言うとおりだ。
瞬を危険な目には合わせたくないけど、俺は広大な道元の寺の内部に詳しくない。
「瞬。正直助かる」
俺は瞬に向かってうなずいた。
「お前らがそんなことしなくても、俺がスキをみて姉ちゃんの部屋を調べるよ?」
道元が思い切ったようにそんなことを言った。
「いや、それはだめだ道元。」
「なぜ」
「お前と道華は血が繋がっている。お前は一生、道華との縁が切れることはない。
万が一、お前が道華を裏切ったことがバレてみろ。お前は一生苦労することになる。
お前は道華に恨まれるようなことは、しないほうが良いと思うんだ」
「そうか......わかったよ」
道元は、コクリとうなずいた。
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土曜日。
俺はイヤフォンマイクをつけていた。
俺のイヤフォンに道元からの連絡が入った。
(川田!いま、家族で川端亭についたぞ!)
「いま、家族で川端亭という料理屋に着いたそうだ」
瞬にも伝える。
「川端亭か。ネットによると、ここから車で20分の距離だ。
間違いなく、家族全員でか?道華も、お袋さんも?」
「そうだって言ってる。それじゃ行こう」
竹やぶから俺と瞬は敷地内に侵入した。
「家族は留守だと言っても、使用人や出入りの業者なんかはいるかもしれない。
完全に無人じゃないだろう」
瞬が小声でささやく。
姿勢を低くして誰にも見つからないように移動する。
時刻は18時。
薄暗くなってきていたので好都合だった。
「ここが道元の家族が寝起きしている建物だ」
当然、屋敷の出入り口には施錠がされていた。
だが俺たちは道元から鍵をもらっていた。
室内に入る。
脱いだ靴は背負っているリュックに放り込んだ。
道元の住まいは、木の香りがする日本家屋だった。
広い和室や床の間、雪見窓のついた障子、細かい装飾の欄間などがあった。
「おい。道華の部屋は2階だ。いくぞ」
瞬が言った。
瞬と俺は、ある人物に見張られていることに、まだ気づいていなかった。




