66_打ち合わせの内容
「ルイたんってば、本当にミッチーの仲間になったんだ?
野心的な男ってモテると思うの。
狙いはお金?それとも人間界での権力?
もしかしてセルペリオール越え、狙っちゃってる?」
ミーネが薄ら笑いを浮かべている。
「ルイたんとは有理ちゃんの魂をめぐって争ったけどさ。一時休戦って感じ?」
ミーネは握手を求めてきた。
俺はそっぽを向いて無視をした。
ミーネは肩をすくめる。
指示された部屋は、大きな机に椅子が並ぶ、会社のような部屋だった。
「来たわね。それじゃ、ルイはここに座って」
俺とミーネの他には見知らぬ男が3人ほどいた。
「日本にはセルパン取引を行っている業者がひとつある」
道華は口を開いた。
「これから、その業者を潰す方法を言うわ。
何度も説明しないから、よく聞きなさい」
…………
道華の計画は単純だった。
いま、セルパンの取引を行っている人間たち全員の、命を奪ってしまうというものだった。
「奪うって、どうやって?」
会議に参加していた一人が口を挟む。
「もちろんセルパンに頼むのよ。
敵を全員、殺してくださいってね」
「ミッチー。全員殺すんなら、その人数分のセルパンの召喚が必要よ?
それだけの数の書物を持ってるの?」
ミーネが口を挟んだ。
「一気に何人も殺してほしいって願いはダメだったわよね」
「だめね。一人に付き一体のセルパンがいる」
「同じセルパンを別の依頼者が何度も呼び出すのは?」
「そんなことすれば、目立つ。すぐにセルペリオールに怪しまれるわ」
「それじゃ、あなたとルイにもやってもらうとして。
あと6体分......稀覯本の収集家から魔導書を買い取ればなんとかなるわ。かなり高額になるけど、致し方ないわね」
(俺もやるのか!?絶対にそんなことはしたくないんだけど)
だまったまま、思わず眉をしかめた。
「殺すということは、誰かの不治の病を押し付けるのが手っ取り早いかしら?」
ミーネが言う。
「ミーネ。重い病で今にも死にそうな子どもたちの写真とフルネームがあるのよ。
この子たちの病を敵に押し付けてしまおうと考えているの」
「ミッチー。それは感動的ね。
あとは、そうね。呪いのためには殺したい連中のフルネームと顔写真も必要だよ?
用意できるの?」
ミーネはキラキラした爪をいじりながら、言った。
「すでに集め始めているわ」
「セルパンを買い取った金持ちたちはどうするんです?
今まで取引していた業者が急に俺たちに変わった。前の業者は一斉に死んだとなれば不審に思うのでは?」
「もちろん契約者たちも、おいおい全員、殺すわ。
そして、あらたにセルパンに願いを頼みたい金持ちや権力者をつのるわ」
みんなは、黙り込んだ。
殺人はセルパンに依頼する。
自分の手は汚さないとしても、かなりの数の殺人を犯すことになる。
「契約者の死後、つまり捕獲されたセルパンが主人を失ったあと
セルパンたちは全員、あたしに服従させるつもりなの。
拷問はあたしの得意分野だから。弱っているセルパンなら数時間で服従させる自信があるわ」
道華は、俺のほうをジッとみて笑った。
「あたしが、権力者たちの願いを聞き、セルパンに命令する。いわゆる仲介業者をする。結局これが一番安全だし、儲かるのよ?前の業者は愚かとしか思えないわ」
「......複数のセルパンを従えるなんて危険だぞ。
何が起きるかわからない。あまりに禍々《まがまが》しい行為だ」
道華は恐れを知らな過ぎる。
俺は道華に警告のつもりでそう言った。
「フフフ。あたしは気にしないわ」
「ミッチーの手の甲には、16体のセルパンの印が浮かび上がるってわけ?
そんなの前代未聞よ。ルイたんの言う通り、この私でさえ恐ろしく感じるけど」
ミーネが、目をくるっと回した。
俺は道華に聞いた。
「セルパンに殺人を依頼するのは誰なんだ。
死後に魂を取られてしまう。誰がやりたがる」
「その辺の浮浪者や貧乏な人間をダマして連れてくるわ
報酬10万円あげるから、面白い芝居をやらないか?って」
「セルパンを召喚し、病の子どもの写真と敵の写真を渡して、その貧乏人どもに念じてもらうのね」
「なるほど」
と俺は冷酷な笑いをがんばって浮かべた。
何の罪もない依頼者は死後に魂を奪われる。
セルパン取引業者たちは殺される。
(取引業者は憎いけど、殺すことはないだろう。
病で死にそうな子どもたちは助けたいけど、それは神のなすことだ。
俺たちのすることではない)
この殺人をなんとかして食い止めなければ。
「セルパンを召喚して、殺しを依頼するのは10日後にする」
道華はそう言った。
「召喚の道具を揃えたり、準備で忙しくなるわ。
あたしとルイたんも召喚されるのね。人間に憑依したまま召喚されるんだわ!
変な感じね~」
ミーネがつぶやく。
ということは、10日以内に俺は、敵の拠点を特定しなくてはならない。
そうしないと、殺しが行われてしまうのだ。
「話は以上よ。みな帰っていいわ。追って連絡する」
話は終わりのようだった。
道華は俺に視線をうつした。
「ルイは残ってちょうだい」
(そうきたか)
道華の言葉を聞いて、一気に気分が下がった。




