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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
セルパン救出作戦
62/193

62_不完全な印の効力

道華の手の甲にはうっすら、紫色のアザが浮かんでいた。

俺の印をあらわす蛇が見えた。


一瞬、「絶望」という二文字が頭に浮かんだ。


だが、よく見るとその印は不完全なものだった。


「......っ!」

よかった。

完全ではない。

服従の印は不完全なものだった。


「アハハ!洋平ったら、なんて顔してるの!ほんとに可愛い。

あと少し拷問を続けられていたら、良かった。

そしたら洋平は、あたしのものになっていたのにね。悔しいわ」


危なかった。


しかし、印はほぼ完成状態である。

俺と道華には、不完全ながらも主従関係ができてしまっているのではないか。


だから、俺は道華の顔を見るとなんとも言えない恐怖を感じるんだ。

人間をこれほど恐れるなんて何かがおかしい。

そう思っていたんだが、謎がとけた。


これが服従の印の力なんだ。

さいわい、道華は、俺がほぼ服従状態にあることに気づいていないようだ。

道華にくれぐれもバレないようにしなくては。


清めの檻に閉じ込められている仲間たちは完全に服従させられて、もっと苦しい思いをしているだろう。

一刻も早く助けたい。


「セルパンが捕まってる場所はどこなんだ?」

思わず道華にたずねてしまった。


「なぜ、場所を知りたいの」


しまった!

唐突過ぎたか。

道華が鋭い視線を俺に向ける。

慌てて、目を伏せる。

また冷や汗が出る。


「別に。なんとなく......深い意味はないんだけど」


「まだそれは、教えることはできない」

「なぜ」

「もっと私達が、親密にならないと......ね」


道華はテーブルに置いた俺の手の上に、自分の手を重ねた。

俺は、びっくりして手を引っ込める。

水の入ったグラスが倒れた。


店の人間が飛んでくる。

慌てる俺を、道華はうっすらと笑みを浮かべながら見ていた。


落ち着け。

自分に言い聞かせた。

こんなことでは道華に服従状態であることがバレてしまう。

まずは、道華の仲間になるふりをしなければ。

彼女の信頼を勝ちとらないと住所は教えてもらえない。


いったん、道華の仲間になろう。

決意した。


「道華。俺は人間界での暮らしが気に入ってるんだ。

明るい世界においしい空気。美しい女もいる。

金を増やしてもっと快適に暮らしたい。そのためにも、ビジネスに協力するのもいいかなって思い始めたよ」


足を組みゆったりとコーヒーを飲みながら、なるべく冷酷な笑みを道華に向けた。

「さすがね、洋平。話が早いわ」

うまく演技ができているかは不明だが、道華は俺の言葉に納得したようだった。


人間は、セルパンをズル賢い悪魔だと思い込んでいる。

道華も俺のことを自分の利益のためなら仲間を裏切る狡猾な魔物とでも思っているのだろう。

だが違う。

少なくとも俺やグース、リザベルはそんな薄汚い考えは持っていない。


「あなたと同じ、人間に憑依したセルパンがもうひとりいるのよ?

知ってるかしら。ミーネという名前なんだけど。

ミーネもビジネスパートナーなのよ。

ある日突然、向こうからやってきたのだけどね」


やはり。

セルペリオールの言う通り。

裏で糸を引いているのはミーネなのだ。


道華は自分の母親が魔物に憑依されていても、何も感じないのだろうか。

この女の感覚は異常だ。

俺には理解できない。


「ミーネとなら、前に会ったよ。道華に拷問される前に」

「そうなの?あなたのことは、ミーネから聞かされていないわ」


「ミーネとは、ちょっとイザコザがあった。だから仲良くできるか分からないけど」

「仲良くする必要はないわ。友達同士になる必要はない」


--------------------------


食事がおわり、店から出た。

二人でエレベーターに乗る。


「洋平。あなたの本当の名前を教えて」

「ルイだけど?」


「ルイ......すてきね。これからはそう呼ぶわ」


エレベーターで二人きりになった途端、

道華は俺の肩を強く押して、壁に押し付けた。そして頬を叩こうと手を振り上げた。

反射的に、俺は道華の手首を掴む。

「あたしの手を離しなさい?」

道華が言う。


「仲間にはいるつもりなら、抵抗や防御はしないことね」

そう言いながらもう一方の手で俺の髪をなでる。


「ルイ。あたしたちはもう、パートナーよね?」


道華は俺のアゴをぐいっとつかんだ。

あまりの恐ろしさに、息が止まっている自分に気づいた。




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