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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
清めの檻に囚われる
58/193

58_もう少しだけ時間をください

「おはよう」

リザベルとのキスを見られてから、有理は電車の時間を変えて、俺に会わないようにしていた。

しかし最近、また時間を元に戻したようだった。


「洋平、おはよう」

「あれ?陽子は?」

「陽子は今朝、寝坊した」

有理はスマホをふってみせた。


「やった。有理と二人きりだ!陽子は毎朝、寝坊すれば良いと思うんだけど」

「......」

有理は黙り込んで下を向いた。


「有理。どうした?」

俺はわざと明るい声を出して、有理の顔を覗き込んだ。

有理は俺と二人きりになると、いつも元気がなくなる。

「えっと......」

有理は困ったように黙り込んだ。


こないだのゲーム機のなかで、拒絶されたのを思い出した。

有理は俺のこと、嫌いなんじゃないか。

そんな気がした。


いつか好きになってもらいたいけど。

今は、好かれていない。


「有理は、俺と二人きりは嫌だよね。変なこと言ってごめん」

有理から視線を外して、そう言った。

彼女の重荷にはなりたくなかった。


「洋平......」

有理は下を向いていた。

「それよかさ、テスト勉強してる?

俺、数学が一番やばい気がしてきたんだよね~。どこが出んだろ?」

必死で話題を変えた。

「英語とか歴史関係ならならめちゃくちゃ得意なんだけどな。」


「嫌じゃないよ」

小さい声で、有理が言った。

「えっ?」

「嫌じゃないよ」

ちょっと声のトーンがあがった。

「数学が?」

理解できなくて聞き返した。


「数学じゃない」

有理はそういうと、俺の目をじっと見た。

いつもこっちを見てくれないのに。

どうしてだか、そのとき視線をあわせてくれたのだ。


有理と目が合った瞬間、思わず呼吸が止まった。


有理の瞳の奥には、その魂の色がうっすら見えた。

汚れのない白で、底のほうにはシルバーの輝きが視えた。


なんて綺麗なんだ。

有理は天使に近い段階まで来ているのかもしれない。


有理の魂を養分になど俺には到底、出来ない。

元からそんなことするつもりは無かったんだけど、そのときはっきりと意識した。


俺は有理が死を迎える前に、確実に灰にならなければならない。

彼女を守るためにはそうすべきだ。

なんなら今すぐにでも灰になるべきだろう。


だけど有理。

もう少しだけ俺に時間をください。

有理と一緒に生きていたい。


魔物のよこしまな願いだけど。

どうかもう少しだけこのままでいさせてください。

危うく俺はその場にひれ伏し、有理に赦しを乞うところだった。


「洋平?」

有理に呼ばれてハッと我にかえる。


「有理の目があまりにもきれいだから、みとれてた......」

「きれいではないよ」

有理は俺から視線をそらすとため息を付いた。


「あれっ。それで、ごめん。なんの話だったっけ」

「もういい」

有理はすねてしまった。

 

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