57_道元が味方につく
「驚いたな。魂ってほんとうにあるんだな?
お前らセルパンは、魂と引き換えに願いを叶えるんだ。
へぇ~」
俺は瞬に尋ねられて、セルパンについて軽く説明をした。
「瞬。お前はなにがあってもセルパンを呼び出したりするなよな。
魂を失うんだ。代償が大きすぎる」
「俺はそんなことしねーよ。自分の望みは自分の力で叶えないと楽しくないだろ」
そうだ。
だが、そのことを理解していない人間が多すぎる。
瞬はまっすぐで迷いがない。
非常に強い人間だ。
だがそんな瞬でも、まだ想像できないことがある。
人間の人生で時として起きる悲劇。
その悲劇から逃げたくて、どうにかして苦しみから目をそらしたくて
俺たちセルパンにすがる人間もいるのだということを。
たとえば有理がそうだった。
瞬がまた、タバコに火をつけた。
俺がにらむと
「吸い殻はちゃんと持って帰るから」
と、小さな容器を見せる。
「お前、魂を食べる魔物とは思えないな。
ゴミのポイ捨てにうるさいし、洋平を殺したことを謝罪するし」
「俺は仲間内でも変わり者だ」
しばらく黙っていた道元が口を開いた。
「姉ちゃんはお前のことを、あきらめていない。
お前のことがすごく好きみたいだ。
ばぁちゃんもお前を清めの檻の中で殺したくてウズウズしている。
でも俺は今この瞬間から、お前の味方につく」
「なぜだ。道元」
「お前はどうしようもなかった。
川田を殺したくて殺したわけじゃない。
それに俺は、川田を苦しめていたんだよな
イジメた罪は消えないけど」
道元は大きなため息をついた。
「死んでしまったらおしまいだ。
大事なひとが生きてるうちに言いたいことを伝えて、
後悔のない接しかたをしないといけない。
死者を蘇らせることは、誰にもできない」
俺がそう言うと、道元も瞬も黙り込んだ。
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「まだ話があるんだ」
俺は道元と瞬を順番に見た。
「えぇ?まだあんのか」
瞬が驚く。
「俺の頭はパンクしそうだ」
「大事な話だ。道元の母親は、セルパンに憑依されている」
「えっ?おふくろが?」
道元が目を見開く。
「ミーネっていう悪党のセルパンに憑依されてるんだ。
お母さんに、最近なにか変わったことなかった?」
道元のほうを見る。
「そんな。変わったことなんて全くないけど」
「たぶんそれは、お母さんの本来の魂と、うまくやってるんだろうな」
「疑われない程度に、お母さんを見張ってもらえると助かる。
変な動きがあれば、連絡がほしい。
言っておくが、絶対にミーネと対決はするな?命が危ない。お母さんとは、いつも通り接するんだ」
「わ、わかった。
けど何かの間違いじゃないか。どうしてお袋が。
いつもと全く変わらないんだけど」
「間違いない。俺は有理がさらわれた日、道元のお母さんに憑依したミーネと話したんだ」
瞬が俺に尋ねる。
「またややこしいことになってきたな。
ルイとは別のセルパンの登場だな?
そのミーネってやつは何が狙いなんだ?」
「それを話し出すと、また長くなると思う。
今日はもう帰らないとヤバい。
ウチの親が帰ってくるかもしれないんだ」
ゆかりと小夜子を二人きりにできなかった。
俺はゆっくりと立ち上がった。
瞬が帰ろうとする俺に声をかけた。
「お前をこれからなんと呼べば良い?ルイか?」
「洋平がいい」
俺はそう答えた。




