52_道華に対する恐怖
道華の暴力から逃げ出した翌日、俺は学校を休んだ。
しかし次の日には、すっかり体が回復しはじめていた。
グースが持ってきてくれた魂のおかげだろう。
「おはよう~」
「あっ、川田くんだ!
昨日、どうしたの。心配したよ?メッセージ送ったのに返事ないんだもん!」
同じクラスの恵梨香が、俺の腕をつかんだ。
「風邪でもひいたの~?」
「寂しかった~」
女たちが、歓迎してくれた。
「ありがとう。うん、ちょっと風邪引いてた」
そう言って誤魔化した。
教室に入ると、道元と目が合った。
道元はすぐに、俺から目をそらした。
道元の席に近づく。
「俺たちは話し合う必要がある」
低い声で伝える。
「......」
道元は黙り込んでいた。
俺が、瞬の手引で道華の暴力から逃げたことは、もうすでに知っているだろう。
道華の顔を思い浮かべると、反射的に胃液がこみ上げ、ゾッとした。
人間に恐怖を感じるとは、どうかしているのかもしれない。
しかし清めの檻にいれられて、抵抗できない状態で暴力を振るわれたのだ。
思ったよりも、あの件は俺の心に深い傷を残した。
道華はまた俺を捕まえようとするだろうか。
「続きはまた今度」
あの女は、そんなことを言っていた。
清めの檻にさえ入れられなければ、大丈夫だと思うんだけど。
それでもなぜか道華を思い浮かべると、背筋が凍り、嫌な予感がした。
「有理!おはよう」
こんなときは、有理に癒やされよう。
「うん、おはよう」
有理は俺とは目を合わさなかったけど、挨拶を返してくれた。
有理が無事でほんとに良かった。
有理が俺を嫌っていようがなんだろうが、無事でさえいてくれればそれで満足だった。
「陽子もおはよう。昨日は来てくれてありがと」
陽子はビクッとして、有理と目を合わせる。
「洋平がどうしてるか、昨日、家まで見に行ったんだよ」
慌てて、有理に説明している。
陽子は、俺の家に行くことを、有理に言ってなかったんだろうか。
「それでこいつ、新たにドMだってことが判明したから」
陽子は俺を指さして言う。
「えっ、ドM?」
有理が口に手を当てて目を丸くしている。
「だから、そのドMってどういう意味なんだよ?
まぁ、いいや、あとで典明に教えてもらうから!」
平和な学校生活が始まった。
だが注意しなければならない。
ミーネはまだ、有理のことを諦めていないだろう。
俺が契約書にサインさえしなければいいのだが。
有理を手に入れるために、どんな手を使ってくるか分からなかった。
それにあと4ヶ月ほどで、敵の尻尾を掴まなければ、俺は煉獄に落ちる。




