51_陽子との話
「うーん。陽子、ごめん、それは言えない」
陽子を巻き込むべきじゃないだろう。
「あの、赤毛の白人、ナイスバディ女と遊んでたんじゃないだろうな?」
「リザベルか?有理が行方不明なのに、そんな馬鹿なことするかよ?」
陽子を軽くにらみつけた。
陽子はしばらく黙り込んだあと、思い切ったように言った。
「有理は、たぶん......お前に惹かれつつある」
「えっ」
「あの子は、ほんとにいい子なんだ。
あたしは中学の頃、いじめられてた。
有理が救ってくれたんだ」
「そうだったのか」
「有理を悲しい目に合わせたくない。
ナイスバディ女に少しでも気持ちが残ってるなら、有理とは付き合うな!」
「気持ちは残ってない。
ただ、リザベルにはいろいろと助けてもらってるんだ。
だから、せまられると断れないっていうか」
「キスをせまられると、お前はしちゃうのか?
おかしいぞ。そんなの、リザベルさんにも失礼だろ?」
「だけど、リザベルは命がけで俺を助けてくれたんだ。
冷たくできなくて」
「事情は知らないが、有理のことが好きなら、
リザベルさんとの関係をすっぱり断つべきだ」
陽子は腕を組んで、俺を上目遣いに睨んだ。
「分かったよ。それで有理が俺に惹かれつつあるっていうのは、本当か!?」
ふいに陽子は俺の首筋をじっと見て、黙り込んだ。
「やっぱ訂正。有理はお前には渡せない」
「えっ、なんでだよ?」
「お前の首筋、それキスマークじゃないか!
やっぱり昨日、ナイスバディ女と会ってたな」
「これは昨日出会ったばかりの、おかしな女に噛まれたんだ!」
「なんだそれは?リザベルさんとは別の女か?」
「そうだ。ムチで打たれて噛みつかれて、あちこち触られまくった」
俺は着ているTシャツを少しまくりあげて、ムチのあとを陽子に見せた。
陽子が「ひどい傷だ」と同情してくれると思ったのだ。
陽子は目を丸くして俺を眺めた。
「やっぱお前は、有理と付き合っちゃダメだ!
お前は、キモストーカー・ドM・チャラ男だ」
陽子は立ち上がると俺を指さして、そう言った。
「また名前が長くなったじゃないか!
ドMってなんだよ?どういう意味だ?」
「有理が行方不明なのに、お前は女とSMして遊んでいたんだ?」
俺は玄関に向かう陽子に追いすがる。
「なにか勘違いしているようだ。
俺は手足を縛られて、なにも出来なかったんだ。無理やりだった」
「だからそういうのが、ドMだって言うんだよ!そんな話、これ以上あたしに聞かせるな!」
陽子はイライラと俺に言い返した。
「まて。陽子。有理が俺に惹かれつつあるって話が聞きたい」
「うるさい、忘れるんだな」
陽子はそう言うと、玄関から出ていってしまった。
俺は何を間違えたんだろう。
典明がいればいいのに。
典明なら、間違えた部分を教えてくれるか、タブレットで調べてくれるのに。
そう思った。




