48_魂の契約の解除
「ゆっくり走る。俺につかまっとけよ」
瞬のバイクの後ろにまたがった。
家まで送ってくれた。
幸い、母親の小夜子は不在の日だった。
「ここがお前の家か。お坊ちゃまじゃねえか」
瞬は、川田家を見上げる。
瞬に支えられるようにして、玄関に入る。
「ルイ!」
帰りが遅いので待っていたのだろう。
ゆかりが玄関に走ってきた。
「ルイって誰だ?」
瞬がキョトンとしている。
「違う、違う、お兄ちゃん!どうしたの、怪我してる」
ゆかりは瞬をにらむと
「あなたがやったんですか?」
と言う。
「川田洋平の妹だったよな。こないだはキスしようとして悪かった。
でも俺は、実際は子どもに興味ないから」
ゆかりが瞬を平手で叩いた。
俺は慌てて言う。
「ゆかり、瞬は助けてくれたんだ。この傷は別のやつにやられた」
「そうなの?またケンカ?お兄ちゃん、もうケンカしないでよ」
自分の部屋のベッドに寝かされた。
「この傷、どうしたの?何の傷?」
ゆかりは不安そうだ。
「ムチで打たれた傷だ。念のため消毒したほうが良いだろう。消毒薬あるか?」
瞬がゆかりに指示を出す。
ゆかりに消毒薬を傷口にまかれた。
「......っ!」
痛みに顔をゆがめる。
瞬が俺の顔をのぞき込みながら、
「手を握っていてやろうか?」
とふざけた口調で言う。
「キモい」
笑いながら答えた。
その後、なにか塗り薬を塗られて、ガーゼをあてられた。
「ゆかり、ありがとう」
ゆかりは俺の額に手を当てた。
「お兄ちゃん、熱が出てきたみたいだよ?」
「ひどいめにあったせいか?細菌にやられたのかも」
瞬がのんびりと答えた。
「ひどくなったら感染症だ。医者に行け。
俺は帰る。もう何があっても寺には行くなよ」
「瞬、ありがとう。ひとつ借りだなぁ」
「格闘技の師匠がいなくなったら困るから」
そう言いながら瞬は帰っていった。
「ゆかりも、もう寝ろ」
ゆかりに声をかけた。
「もう少しここにいる。熱がひどくならないか心配だから」
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気を失うように眠った。
夢の中で俺は、典明と教室にいた。
典明がタブレットを俺に見せた。
そこにはこう書かれていた。
<有理と幸せに過ごすための3つの条件>
1、4か月以内に敵の尻尾を掴むこと
2、灰になる以外の、「魂の契約の解除方法」を見つけること
3、2が見つからない場合は、有理の天寿がきたら、ルイは灰になること
「2は、存在するんだろうか?」
典明に聞く。
「さぁ、分からない。
ネットの情報では、魂の契約を解除するためには、
契約したセルパンが先に灰になること。
それしか書かれてないね......」
典明はタブレットで調べながら、首を横に振っていた。
「だったら、俺は、最終的にこの世から灰になって消えることになるな」
俺は自ら、灰になるつもりだった。
この世から消えて無くなる。
そうなれば有理は自由になれる。
このことは前々から考えていたことだった。
有理の魂を養分とすることなど俺にはできない。
だから俺が消えてなくなり、自動的に彼女の契約を無効にする。
それが俺にとっても有理にとっても幸せな道だ。
有理。
願わくば来世では魂の契約などせずに、無事に過ごして欲しい。
もう、来世の彼女を見守ることはできなくなるけど。
有理が天寿を全うするまで、俺は彼女を守り続ける。
そして彼女よりもひと足お先に、俺は灰になって消える。
これはこれで、幸せな終わりかたじゃないのかな。
人間の寿命はあっという間だ。
この限られた時間で、有理と楽しい時間を過ごしたい。
心からそう願っていた。
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明け方、目が覚めるとゆかりが俺のベッドに顔を伏せて寝入っていた。
「ん......ルイ、大丈夫?」
ゆかりは目をこすりながらこちらを見る。
「熱は?」
ゆかりは俺のひたいに手を当て、熱を調べる。
「まだ、高い。どうしよう!」
「大丈夫だ。気分はマシになってきてる」
ほんとうは、寒気がひどかったが、ゆかりを安心させたかった。
「でも」
ゆかりは不安そうに俺の顔をじっと見つめた。




