46_運命の介入の理由
「有理ちゃんは、そこで気を失っている道元くんを殺すはずだったのよね~?」
ミーネは、道元を指さした。
次は俺を指差すと言った。
「その運命をルイたんがねじまげた」
「お前どうしてそのことを知ってるんだ」
「有理ちゃんの純白の魂は、天界から見ていても目立つのよ。
彼女が、なぜあんなにきれいなのか不思議だったの。
マーヤに聞いたらルイたんがやったこと、全部教えてくれた」
マーヤめ。
どうせ、トカゲのしっぽとか鶏の足につられて、全部喋ったのだろう。
「有理ちゃんは人殺しの罪を背負い、その魂は薄汚れていくはずだった。
けど、ルイたんが、運命の介入をした。
だから、有理ちゃんの魂は、薄汚れずに純白のまま」
「それがどうした?」
「ルイたんは、純白で強いパワーの魂を手に入れるために、北条有理の運命を変えたのよね?」
「えっ?」
「すごく賢いやり方だと思うわ。ルイたんは有理ちゃんの魂の契約者。
このままいけば彼女の死後、強いパワーの魂が手に入るわね?」
ミーネは大きな声でキャハハハと笑った。
「ルイたーん。あたしのほうが強いのは分かってるよね。
痛めつけられたくなかったら、北条有理たんの魂をゆずって欲しい~の~
彼女の魂のパワーが手に入れば、絶大な魔力が得られるのよ」
魂の契約は、セルパン同士がお互い認め合えば、相手にゆずり渡すことができる。
「有理をゆずり渡すことなど、絶対にできない」
「そうだよね。人間に憑依してまで苦労してんだもんね。
そう簡単にゆずってくれないよね?」
ミーネは爪を噛んでいる。
「じゃあさ、しばらく清めの檻に入って、人間にこきつかわれてみて?
2年もすれば、ゆずり渡す気になると思うんだわ」
「何年経とうが、何をされようが俺の気持ちは変わらない」
ミーネをにらみつける。
俺は手をふりあげ、呪いの文言を唱える。
室内に熱風が撒き起こり、ミーネの上着がひるがえる。
ミーネの手に毒蛇が巻き付く。
俺の呪術だ。
「キャハハハ!かわいい、なんてかわいいの」
ミーネは、腕にからみつく蛇を見て喜んでいる。
ルイたん。200年生きたなら、もうワンランク上の魔術、使えなきゃ。
セルペリオールはどんな教育をしてんのかしらぁ?
あいつ、知ってる?ガキの頃、黒の沼にハマって死にそうになったのよ。
マヌケなんだよね~あたしは死ねば良いと思ってみてたんだけどぉ」
俺はさらに追加で蛇をミーネの体にはわせる。
「やだ。冷たくて気持ちいい」
ミーネは蛇に巻き付かれて喜んでいる。
「でも、そろそろウザいわね」
ミーネが手をかざすと、毒蛇に火がつく。
炎が燃え盛り、毒蛇は灰になって、ミーネの足元にパタパタと落ちた。
そのスキに俺は、ミーネのもとへ間合いを詰めた。
「魔術で負けるのは想定内。だがこれならどうだ」
ミーネのアゴに掌底で打撃を与えた。
ミーネはよろける。
続いてローキック、からの上段回し蹴り。
ミーネは上段をくらって、後ろに倒れた。
「痛い。もうやだ。泣きそうなんだけど。
暴力反対。パワハラ反対。
肉体を痛めつけても意味ないよ?」
「意味はある」
畳に尻餅をついたミーネの前に立ちはだかる。
後ろに回り、女の首を締め上げる。
「いやん」
ミーネが変な声を上げる。
「もう少しきつくシメれば10秒ほどで気を失うだろう。
そうしたら、お前をセルペリオールに引き渡してやる」
「ンゴホッ!小僧が。ざけんじゃねえぞ。
人間の肉体に閉じ込められてなきゃ、ンゴホッ!オメーなんか鼻くそ以下だ」
ミーネの声が急に低くなる。
俺に昏睡の魔法をかけようとするが、それは俺には効かない。
そんなものは、大抵のセルパンには無効。
そのことは、ミーネもわかっているはずだった。
ミーネはかなり焦っている。
ふいにミーネが、有理の方に手をかざす。
有理の周囲に炎が燃え盛る。
「う......ん」
有理が身をよじっている。
「やめろ!有理が目を覚ます」
目を覚ませば、彼女は炎を見て驚き、魔術にかかってしまうだろう。
「クソッタレ、セルペリオールに捕まるくらいなら純白の魂などどうでもいいわ。
いますぐ、あの女を焼き殺す」
目の前で有理が死んでしまったら俺は気が狂うだろう。
自分の命より、なにより有理が大事だった。
「......やめてくれ。たのむ」
ミーネを締め上げていた手をゆるめた。
ミーネは、腕を振り上げると俺の頭を思い切り殴った。
「ルイたーん。人間のもとで、しばらく働いてみてぇ。
そこから逃してほしかったら、有理たんの魂をゆずり渡す契約にサインをするんだよぅ?」
ミーネが俺の耳元でささやくのが聞こえた。
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そして気がついたら、俺は手足を拘束され、清めの檻に入れられていた。
ミーネは有理を無事に家に返してくれただろうか。
だが、ミーネの狙いが有理の魂なら、きっと返してくれただろう。
極上の魂を手に入れたいなら、途中でその持ち主を殺したりしてはいけない。
天寿を全うさせることが何よりも大切なのだ。
俺の目の前には残忍な笑いを浮かべた道華がいた。
道華は黒いムチの先を指でゆっくりと撫でている。
「可愛い顔してるのに、我慢強いのね。お前は最高だわ」
耳元でささやく。
鋭い棒のようなムチで、馬のように何度も叩かれる。
はぁ、はぁっ、はぁ、……、んっ、
冷たい汗が全身を覆い、呼吸は乱れていた。
髪を引っ張られ無理やり視線を合わせさせられる。
次の瞬間、ムチを振り下ろす。
道華の舌が耳や首筋を舐め、手が腹や胸をまさぐってくる。
噛み付く。頬を叩く。
そしてムチで打つ。
この女は楽しそうに、そんなことを繰り返していた。
俺は限界を感じはじめていた。




