44_連れ去られた有理
「ほんとに急に消えたのか?」
「そうだよ。そのとき洋平のことを有理と話してた」
陽子は青ざめた顔で言う。
「俺のこと?」
「そうだ。お前のここ最近の行動とか」
「俺の行動?どんな話だよ」
「そんなことより!話していて、後ろを振り向いたら有理がいなくなっていたんだ」
「トイレにでも行ったんじゃない?」
典明が言う。
「バカいえ。有理は足が悪いのに、そんな急に動けるわけ無いだろ
ほんとに直前まで会話してたんだよ」
「消えた場所に案内して」
俺は陽子に頼んだ。
「ここだよ」
陽子に案内された場所は、なんということもない、ショッピングモールの大きな通路だった。
だが......。
俺は通路にしゃがみ込んだ。
「これは」
黒い焦げたようなあとが通路に残されていた。
焦げを指でこすり、匂いをかぐ。
「この匂い。まさか」
「なんだよ?洋平、適当なこと言ってんじゃないだろうな?」
「お前らは、帰ったほうが良いかもしれない」
俺は二人に告げる。
「帰れるわけないだろ」
床にはセルパンが呪術を使ったあとがあった。
そのとき、俺のスマホが鳴った。
「名を名乗れ!」
そう言ってスマホに出ると、道元の声が聞こえたのだ。
「おい。川田に憑依したセルパン。北条は預かっている。
返してほしければ寺に来い。ただし誰にも言うなよ。
言えば北条の安全は保証しない」
そう告げられたのだった。
道元がなぜ......。
有理はセルパンに連れ去られた。
だがなぜ、道元から連絡が来るのか。
とにかく有理を助けに行かなくちゃ。
「......俺は急用ができた」
陽子と典明に告げる。
「はぁっ?何言ってんだよ。洋平。有理のことはどうすんだ」
「二人で探して欲しい」
「洋平?今の電話、誰からだったの」
典明が詰め寄る。
「なんでもない。瞬からだった」
とっさに嘘をついた。
「瞬って、あの金髪の、道元の地元の先輩か?」
「そうだ。あいつとは友達なんだ。ちょっと会ってくる」
「お前、口では有理が好きだとか言って、
イザとなると、友達と遊びに行くのか?そうなのかよ?」
陽子が俺を突き飛ばす。
「陽子、違うんだ。有理は必ず守るから」
俺は陽子の目を見つめた。
「......電話で、なにか脅されたんだな?
行き先は言えないんだ?」
陽子が俺をにらむ。
「いったい何処へ行くの?
教えて欲しい。僕たち、友達だよね?」
典明が俺の腕を引っ張る。
「友達だからこそ、言えない。
巻き込めば、お前たちの安全も保証できなくなる」
必ず有理を連れ戻すと二人に約束して、俺は道元の寺まで急いだ。




