39_アヤカは優秀な女
「アヤカさんは、外国のかたなの?でも日本のお名前よね」
小夜子は、リザベルのことをジロジロと眺め回した。
「フランス人の血が入ってます」
リザベルは、適当なことを言う。
「洋ちゃんから聞いてるけど、大学生なんですって?」
「はい。大東京大学です」
「優秀なのね」
小夜子の表情が少しゆるむ。
「私は、英語はもちろん、フランス語、スペイン語、ロシア語、他にもいくつか話せます」
(セルパンなのだから当然だろう)
俺は、リザベルの話をそばで黙って聞いていた。
リザベルは実際に、各国の言葉で、自己紹介をしてみせた。
意外なことに、小夜子は話すうちにリザベルに打ち解けてきていた。
リザベルは小夜子に呪いでもかけたか?
「まぁ、アヤカさんったら面白いのね。それに博識だわ」
リザベルが披露した雑学を聞いて、小夜子は喜んでいる。
(200年生きてるからな)
「洋平さんが大学に見学に来たときに知り合ったんです。洋平さんは高校生とは思えないくらい、知識が豊富で我々も舌を巻きました」
小夜子は息子を褒められて、かなり満足気にうなずいた。
リザベルはうまい。
世渡りがうますぎる。
それに人間界のことを良く知っていた。
いつの間に人間界について、こんなに知識を増やしていたんだろう。
「こんなに素敵な人が洋平にいるとはね。オホホ!
でも、まだ、恋人なんて早すぎると思うけど」
(なにが早すぎるだ?洋平はもう16歳だぞ)
「洋平さんとは真面目にお付き合いさせていただいております」
リザベルはそう言って頭を下げた。
「けっして、川田さんがご心配なさるような、そんな関係ではありません。
彼のことを大切に思っています」
リザベルは、最初から最後まできちんとしていた。
しっかり芝居を打ってくれたのだ。
「アヤカは勉強ひとすじで真面目なんだ!
俺もアヤカのことが好きだし、裏切るつもりはない。
だから、ゆかりのことは本当に妹としか思ってないし」
俺のほうが、言動が幼稚な気がしてきた。
「わかったわ」
小夜子はうなずいた。
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3時間くらい話しただろうか。
「それでは。わたくし、明日の大学の準備がありますので」
と言ってアヤカは腰を上げた。
すっかりアカデミックな雰囲気を出していた。
「じゃあな、アヤカ」
俺が手を振ると、
「洋ちゃん、駅まで送って差し上げなさい」
小夜子がそう言った。
かなりアヤカのことが気に入ったようだ。
ゆかりは、「友達の家に行く」といって、家にいない。
ゆかりと小夜子が家に二人きりになることはない。
俺は「うん。そうだな」と言って、腰を上げた。
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川田家を出た途端だった。
「ふぅ!疲れたわ」
リザベルが、本性を表した。
「ルイ。あなた、人間界にいればいるほど、しがらみが強くなって、
こんな風に、どんどんややこしいことに巻き込まれるわよ?」
リザベルの言う通りだった。
切っても切れない人間関係が、俺の周囲にいくつも出来上がっていた。
「分かってる。だが、セルペリオールとの約束もあるし......」
「そうね。調査は進んでるの?」
「まったく進んでない」
「こんなことしている場合じゃないじゃない」
リザベルは長い赤毛をかきあげて、眉をピクリと動かした。
「私は頑張ったわ」
「う、うん。ありがとう。それじゃ、俺は家に戻る」
そう言って、家に戻ろうとすると、リザベルが俺の腕を引っ張った。
やっぱりそうきたか。
「ルイ。私は、あなたが欲しくてたまらないのよ。今この瞬間も」
リザベルは道端で俺に迫ってきた。
「俺とアヤカは変な関係ではないはずだ」
「洋平とアヤカでしょう?ルイとリザベルじゃないわ」
リザベルはいきなり路上で俺の服を脱がそうとした。




