37_好きかどうか
有理と雑居ビルの屋上に来た。
夜景がきれいにみえた。
「すごい!きれいだ」
有理が遠くを見つめながら言う。
「ヘンテコな場所ばかり連れ回した気もするけど、大丈夫?」
心配になって有理に聞いた。
「大丈夫だよ!怖くは、なかった。普通のデートと違う」
「普通のデートと違う?普通は、どういうところに行くんだ?」
「よくわかんない。映画。水族館?」
「エーガに、水族......?よし!次はそうしよう」
「次......」
有理はそう言うと黙り込んだ。
「洋平。なぜだ」
有理は俺を見上げて、すぐに目をそらした。
「えっ?」
「なぜ誘う。なぞだ」
「有理と一緒にいたいからだよ?」
「うそだ。洋平」
有理は笑いながら言った。
「可愛くない。髪も短いし。男みたいと言われた」
「誰がそんなこと、言うの?有理は他にない特別な人間だよ」
「特別な人間?」
「サヨリーヌも言ってたよね?有理は魂が強いって。
ルートも勇者だって言ってた」
「あたしはオカシイし、強くはない」
「有理はきれいで、強いパワーがある」
「あたしが?わかんない」
「信じて欲しい。とにかく、そうなんだよ。
それに引き換え、俺はものすごく悪い生き物なんだ」
「えっ.....」
有理は驚いた顔をして一歩、後ろに下がった。
「洋平は悪くないよ?」
有理は俺を励ますように言った。
「ありがとう。有理は優しいね」
有理に近づいて彼女の頬に触れた。
彼女の頬は、やわらかくてすべすべしていた。
有理はビクッとして、また俺から視線を外した。
「有理。俺は有理を好きになる資格がないくらい悪い生き物だけど。
それでも好きで仕方ない。どうにもならない」
また一歩、彼女に近づいた。
有理の髪に触れる。
そうせずにはいられなかった。
有理は、不安そうに俺を見上げた。
有理は怖がりだ。
きっと俺に迫られて、怖いんだろう。
俺は自分の欲望ばかり優先している。
反省した。
「ごめん。......怖いよね」
彼女に両手を見せて、一歩後ろに下がった。
「......」
有理はだまって首を横に振った。
優しいから無理をしているのだろう。
「洋平。断る。あたしは好きかどうか分からない。
でも、今日。楽しかった。迷う」
有理はうまく言葉が出なくて、苦労しているようだった。
「だけど洋平のことが好きかどうかは、分からない」
「そっか。でも嫌いってわけじゃない?」
身をかがめて、有理の顔を覗き込んだ。
だが彼女はやっぱり視線をあわせてくれない。
「うん。嫌いじゃない」
有理が小さくうなずいた。
「だったら、またデートしてくれる?」
「いいよ」
有理は小さくうなずいた。
「やった!じゃあ、次は普通のデートだね?」
「今日みたいなのがいい」
有理がそんなことを言う。
「マジで?ヘンテコな場所なら、まだまだ知ってるんだ。
怨念のたまったものばかり売ってる雑貨屋とか
ケルベロスに似た犬がいるうどん屋とか」
「怨念?ケルベロス?」
「あっ、でも俺はその、普通のデートをしてみたいな」
「普通......いいよ」
有理の目は夜景をうつしてキラキラ輝いていた。
「そうだな。それで、次の次はヘンテコなコース」
有理に笑いかけた。
「有理。手、握らせて」
俺は有理の返事を待たずに、彼女の手を強引に握った。
有理は俺に手を握られて目を見開く。
「あっ」
と小さく叫んだ。
「どうしたの?」
「ルイのこと。思い出した。手が似てる」
「......」
「変なこと言った」
「いいんだよ。変じゃない」
駅で別れるまで、有理の手を離さなかった。




