35_歪んだ土地
サヨリーヌは俺の手を握ったまま、眉間にしわを寄せて考え込んでいた。
しばらく沈黙が続く。
「これは何でしょう」
サヨリーヌはポツリとつぶやいた。
「灰色の空に、赤い土、真っ白な木が所々に生えている」
マズい。
天界の光景だ。
「あなたの魂は、なんですか?これは見たことがない。
純粋で無邪気だけど、魂の疲労が激しい
……あなたは、なぜこんなに疲れているんです」
俺は慌てて、手を引っ込めた。
「もういい」
「川田さん、やっぱり不思議な人ですね?
連れてきた彼女も、すごい人だけど」
サヨリーヌはそんなことを言う。
「彼女ではない。ちがう」
有理が慌てて言う。
「そうなんですか?とてもいい相性に視えましたけど」
サヨリーヌが今回の占いで一番良いことを言う。
「そろそろ帰る。サヨリーヌありがとう」
占いの料金は俺がスマホ決済で済ませた。
俺と有理は「サヨリーヌの占いの館」を出た。
「あぁ。占い。びっくりだ。お金払うよ」
有理が、ニコニコした顔で言う。
「いいよ。大丈夫」
「どうして」
俺は小夜子から、多額の小遣いをもらっていた。
だがほとんど使うことがなかった。
「あの人の占いは100%当たるからな。
色白のふわふわした髪の毛の女を見たら、有理、注意してくれよ」
「注意するよ」
有理は不安そうに俺を見た。
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「有理、次も俺の行きたいところに付き合ってくれる?」
「うん。いいよ」
「ありがとう。次は普通の店だけど」
細い路地の奥、地下へ降りる階段を指さした。
「この下にある店なんだけど」
「暗い。行くの。この下へ?」
有理はまた不安そうな顔をする。
有理は下に降りる階段の手前で立ち止まった。
「怖い。この下。なにか怖いよ?」
有理はサヨリーヌの占いの館も怖がっていた。
けっこうな怖がりみたいだ。
天界からスコープで覗いてるだけでは分からなかった。
有理は、人のためなら勇気を出せるけど、ふだんは臆病で怖がりなんだ。
新たな発見だった。
「怖くないよ?土日のひまなときに、よく来てるんだ。
典明も連れて来たことがあるんだよ」
地下一階の店は、「暗黒世界」という店だ。
「暗黒世界......」
有理は、店名をみて怯えている。
「暗黒世界」
有理が、不安そうに俺を見上げる。
「ただの飲食店だよ。
たしかに、この土地は忌まわしい。
でも強い悪霊はいないようだから大丈夫」
俺は有理を安心させようと思い説明した。
「悪霊......?」
有理は目をぱちくりさせていた。
この場所は、もともと古い精神病院の跡地だと俺は感じている。
狂人の無数の叫びが聞こえるからだ。
浄化の呪文では、解消できないほどの歪んだ土地。
マーヤが10人集まらないと、正常な土地に戻せないと思えるほどの禍々しさ。
俺は悪しき存在だから、ついついそういう場所に引き寄せられてしまう。
ある日、吸い込まれるように階段を下った。
すると、なかなかおもしろい体験ができたのだ。




