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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
清めの檻に囚われる
30/193

30_道元の祖母と姉

意識を取り戻した。


「ここは......」

むせ返るような線香の匂い。

壁や床一面に書かれた念仏の文字。


「気がついたか」

目の前に道元が立っていた。


「道元。こんなことして後悔するぞ」

動こうとしたが、ジャラッと言う音がして、手足が言うことをきかない。


俺は道元の寺で、「清めの檻」に閉じ込められていた。

両手両足を鎖で固定され自由を奪われている。


「お前は自分のことを、セルパンだと明かした」

道元は、俺を指さした。


「寺の息子が悪霊セルパンについて、知らないとでも思ったか!」


道元は拘束されている俺の前を行ったり来たりと歩いた。


「川田。お前は、急に性格もしゃべりかたも、別人のように変わった。

だから俺は、お前がセルパンに憑依されていると考えたんだ」

道元は片手に古い書物を持っていた。


「さて、オヤジにお経でも読み上げてもらおう。この書物には三日三晩、読み続ける必要があるって書いてある。

セルパンは、それで灰になるんだよな?

でもなぁ、それじゃつまらない。お前にはもっと苦しんでもらわないと」

道元はニヤニヤと笑う。


「まず北条にお前の正体を見せよう」


「有理は巻き込むな」

「お前が死んだら、俺が北条の面倒を見てやるからな」

「有理はお前のことを嫌ってるぞ。クサイって」


道元は俺を殴った。


どうやってこの檻から出ようか。


清めの檻の中では、どんな能力も封じられている。

怒りを発してカミナリを落とすことや、カラスとの会話もできない。

最終手段である、肉体を捨てて天界に戻ることも、封じられている。

天界からスコープでのぞいても、清めの檻は視えない。


だから、グースやリザベルの助けも期待できなかった。


「おや。この子がそうなのかい?」

そのとき、俺の閉じ込められている牢に二人の女が入ってきた。


一人は、和服を着た20代後半の女だった。

真っ黒な長い髪を腰まで伸ばし、おしとやかな雰囲気だった。

だが体からは異様な邪気が立ち込めている。


もう一人はやはり和服を着た老婆だった。

こちらは真っ白な髪を腰まで伸ばしている。

70代だろうか。


「ばあちゃんと姉ちゃん」

道元が二人の方を見る。


二人は、道元の祖母と姉なのか。


道元の祖母は、俺の姿をじっくりと眺め回した。

姉の方は鎖に繋がれた俺の腕を調べた。


腕を調べ終えた姉が口を開いた。

「入れ墨がない。自分を示す紋章や、所属の印がないわ。

レザールの一派なのか、セルペリオールに属するものなのかも分からない。

入れ墨がないと本当にセルパンなのかどうか、確証が持てない」


「姉ちゃん!それはこいつが、人間に憑依しているからだよ」


「憑依......ねぇ」


「そうだよ!姉ちゃん。こいつは自分のことをセルパンだと俺に言ったんだよ?」


「そんなの、本当かどうかわからないじゃない」

姉と道元は、言い合いを続けていた。


「それなら、オヤジにお経を読んでもらおうよ。セルパンなら、こいつは灰になって消えるはずだ。憑依がなくなって、もとのオドオドした川田に戻るんじゃないかな?

俺の勘違いで憑依されて無くて、ただの人間なら何も起きない。そうだろ?」


道元は必死に二人を説得している。


モトの川田洋平の魂はこの体に残っていない。

だから、俺が抜ければ死体が残ることになるんだけどな。

そう思ったが、もちろん俺は黙っておいた。


「バカだね。道元。もしセルパンなら灰にするのはダメだよ」

老婆のほうがそんなことを言い出す。


「いま、セルパンがどれだけ高値で売れるか知ってるのかい?

欲望を叶えてくれるんだ。この上ない貴重な道具だよ?

政治家や金持ちが喉から手が出るほど、欲しがっている」


「婆ちゃん、悪魔を道具にするなんて。恐ろしいこと言うね」

道元が、目を丸くしている。


「この子が、本当にセルパンかどうか?調べなくちゃいけない。

もしセルパンなら、肉体を滅ぼしてセルパンの魂を取り出し、売り飛ばす。

モトの川田くんも当然死ぬことになるが仕方あるまいよ」


ババァは、残酷なことを言った。


「そんな」

道元が困ったような顔をする。


「だけどもし、この子がタダの人間なら、なんの利益もない。

我らは、ただの人殺しと成り果てる。

それもまだ若い男の子を意味もなく、無惨に殺したことになってしまうがな。

道華どう思う」


道華と呼ばれた女は、俺の目をじっと見つめた。

「道元の言うことを信じたいところだけど、一定のリスクはあるね」


「間違いないよ!そいつは、雷を落としたし、カラスも操っていた。

だけど、川田まで殺すことになるなんて......

俺は、お経を読み上げて、セルパンを追い出すつもりだったんだけど」



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