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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
人間に憑依
28/193

28_恋だと錯覚する

「ゆかり。お前と洋平はそんな仲だったのか?」

びっくりして聞いた。

「どういうことなんだ?」


「声を落としてよ、恥ずかしいじゃん」

ゆかりはシーッと自分の口に手を当てた。


「私が一方的に好きだっただけ。お兄ちゃんは、アニメのアヤカちゃんに夢中だったから。ホラ。お兄ちゃんの部屋に絵が貼ってあるでしょう?」

「アヤカ~?部屋に貼ってある絵の女か。異様に目と胸がでかい......」


「とにかく、私はお兄ちゃんが好きだった。

だからお兄ちゃんと一緒に死んで、次の人生でやり直したかったの

それに死ねば、お母さんにも会えると思ったし」

「ゆかり。自殺した人間に次はないんだよ」

「そうなんだね。でもそれでも良い。生きるのってすごく辛いから」


カフェを出てゆかりと家まで歩く。

ゆかりは、どうやら兄に恋をしていた。


だがそれは、恋じゃなかったんじゃないかな?

どちらかというと「依存」に近いのではないか。

俺はそう感じていた。


洋平はゆかりに対する小夜子の虐待を止めることはしなかった。

妹は虐待され、自分は甘やかされる。

そのうしろめたさから洋平は、ゆかりに優しくしていた。


それが幼いゆかりには救いだったのだろう。

兄の優しさがゆかりの唯一の救いだった。


兄と話すと癒やされる。

その気持を、ゆかりはやがて恋だと錯覚する。


すべては想像だが。

大きくハズレているとは思えなかった。


----------------------------


日曜日。


「あぁ~有理に会いたいなぁ。

どうして学校は二日間も休みなんだ?」


リビングのソファに座り、俺はひとりつぶやいた。

ゆかりは自分の部屋で宿題をしていた。


玄関のほうで物音がした。

ガチャガチャ。

鍵を開ける音。


「ただいま~帰ったわよ」

小夜子の声だった。


俺は玄関の方へ向かった。

暴力女だが、一応は、母親だ。

「おかえりなさい。お母さん」

頭を下げる。


「洋ちゃん!嬉しいわ」

小夜子は俺を抱きしめる。

「あらっ、その顔どうしたの」

道元に殴られたアザがまだ残っていた。

「ベッドの角にぶつけたんだよ」

「まあ!ベッド、買い直しましょう」

小夜子はそう言って俺の頬を撫でた。


「お夕飯なんだけど、お寿司でも食べに行かない?」

「いや。俺はダイエット中で」

「えぇ?ダイエット?そういえば、洋ちゃん痩せたわよねぇ」


「とにかく、もう腹はいっぱいなんだよ」

「そうなの~」


そんな話をしているところに、ゆかりが二階から降りてきた。

小夜子をみて、ビクッと肩を震わす。

「小夜子さん、おかえりなさい」

頭を下げる。

「......」

小夜子は何の返事もしない。


「ねえ、お母さん考えたんだけど」

小夜子が不意に言う。

「お母さんは留守がちだし、お父さんは海外でしょ?

あなたたち、血はつながっていないから、一緒の家に二人きりにしておくのはどうかと思うの」

「そんな心配、いらないと思うけど?」

俺は、首を傾げた。


「お母さんは心配なのよ?だからね。ゆかりには、北海道の全寮制の学校に行ってもらおうかと思って」


「えっ」

俺とゆかりは声を揃える。


小夜子はカバンから印刷物を取り出した。

「こういう学校なんだけどね」

「小夜子さん、私いまの学校気に入っていて。友だちもできたし」


「もう申込みも済ませてきたのよ」

「ちょっと待って。ゆかりは北海道に住むということ?」

「そうよ。きれいな寮があるの」

「寮......」


「小夜子さん、お願いです。それは困ります。ここにいたい。

お母さんとの思い出もあるし。

お父さんは?お父さんは、なんて言ってるの?」

ゆかりが、震えている。


「あぁ?高次さんは、あたしに任せるって言ってるわ」

「そんな」


「ゆかりが嫌だと言うんだから、止めるべきだ」

俺は立ち上がった。


「ゆかりと俺がどうにかなるわけない。

俺には好きな人がいるんだ」

小夜子に言う。


小夜子は驚いている。

「ちょっと待って!洋ちゃん、好きな子って誰よ?」


まてよ。

俺はふいに嫌な予感がした。


小夜子は有理に暴力を振るうかもしれない。

小夜子の洋平への異常な執着を俺は感じ取っていた。

この女は洋平に恋人ができるなんてきっと許さないだろう。


有理の名前は伏せたほうが良いな。


「ア、アヤカだよ。アヤカが好きなんだ」

俺はとっさに、部屋にあるポスターの女の名前を言った。

「アヤカって誰?学校の子?」

「違うよ。最近知り合ったんだけどな。目が大きくて胸がでかいんだ」

「まぁ!なんてことを」

小夜子は目をむいて驚いている。


ゆかりは、肩を震わせている。

よく見ると、笑いをこらえているようだった。


「だから、ゆかりみたいな幼い女には興味ないんだ」

俺は小夜子を説得した。


「そうなの?そのアヤカって子。今度うちに連れてきなさい?

そしたら、ゆかりの北海道行きは取りやめにしてあげるわ」


「良いよ。お母さんも気に入ると思うけどな」

俺は適当なことを言いながら、どうしようかと思っていた。


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