27_ゆかりとの会話
「生きていたってひどい目に合う」
ゆかりはそう言った。
「小夜子のことだよね?もう二度と、あいつに暴力はふるわせない。
俺がお前を守る。カラスの親玉もお前を守ってくれる」
俺は、ゆかりにそう約束した。
「ほんとに?」
「ほんとだ」
「でもあなた悪魔なんでしょう。約束は守れるの?」
ゆかりは不審そうに俺を見た。
「ハハハ。悪魔は嘘つきって思ってるんだな」
「えっ、そういうワケじゃないけど」
しばらく黙って、川の流れを見る。
川はけっしてキレイとは言い難い。
それでも水の流れはゆかりのこころを癒やすだろう。
「あなたのこと、なんて呼べば良い。
お兄ちゃんとは、呼びたくないんだけど」
ゆかりはそう言った。
そうだろう。
俺は、ゆかりのお兄ちゃんでは無いのだから。
「洋平でいいんじゃないか」
「洋平......無理だよ。お兄ちゃんの名前を呼び捨てにするなんて変な感じ」
「じゃあどうしようかな」
「あなたの本当の名前はなんていうの?」
「本当はルイっていうんだ」
「ルイ。ふぅん」
「小夜子さんの前では呼ばなければ良いよね。ルイって呼ぶよ」
「そうしてくれ」
「ルイ。おなかが減ったよ?カフェでパンが食べたい」
「俺は、人間の商店に入ったことがない。案内してくれる?」
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ゆかりと、カフェに入った。
そういえば有理もカフェでアルバイトをしていると言っていたな。
こんな感じの店なのだろうか。
今度行ってみたい。
急に、有理に会いたくてたまらなくなった。
「スマホでお金が払えるんだよ」
ゆかりはそう言って、自分のスマホを店員に見せる。
スマホは財布代わりでもあるんだな。
「どの部分を、どう見せるんだ?」
ゆかりの言うことを注意深く聞いた。
人間界に馴染むために、しっかり覚えなければ。
「ルイ、注文はそれだけ?」
「俺はダイエット中なんだ」
ゆかりはサンドイッチとオレンジジュース。
俺は、コーヒーを頼んだ。
一口飲んでむせる。
なんだこれは。苦いな。
「でもみるみる、痩せてると思うよ。
お兄ちゃんは、ヒマさえあれば食べていたからね。
それを止めるだけでも、どんどん痩せるんじゃない?」
「そしたら見た目もマシになるだろうか」
俺は自分の腹の肉をつまみながら言う。
「実は俺は有理のことが好きなんだ」
「えっ?」
ゆかりが驚いた顔をする。
「有理って、このあいだの友達のひとり?」
「そうだ。背が低くて髪が短い子だよ。
彼女は別の人が好きなんだけど、俺の方に振り向いて欲しい」
「ふぅん、そうなんだね。悪魔なのに人間を好きになったの?」
ゆかりは、複雑な顔をしながらそう言った。
なかなか鋭いところをついてくる。
「悪魔、悪魔って言うなよなぁ」
俺はコーヒーをすすり、ゴホゴホとむせる。
「あはは。悪魔はコーヒーが苦手なのかな」
ゆかりに笑顔が戻った。
「それじゃあルイに私の好きな人を教えるね。
好きだった人......になってしまうけど」
「お。誰なんだ」
「お兄ちゃんだよ」
ゆかりがそう言ったので、俺はコーヒーを吐き出した。




