26_土地の浄化
「ゆかり、こっちに来て」
親玉を肩に乗せたまま、ゆかりは俺に着いてきた。
「この場所。なにか感じる?」
おそらく処刑場だったのか。
多くの血が流れたはずの場所にゆかりを案内した。
ゆかりは霊感が強いので、何かを感じ取るだろうか。
試してみたくなった。
「別に......」
ゆかりは、そう言いながらも草むらの一点を見つめ続けていた。
「黒いモヤモヤが見えるけど。よく見かけるものだし」
やはり。
ゆかりは視える体質だった。
俺は禍々しい空気を発する地面にひざまずき、浄化の呪文を唱えた。
「なにしてるの?」
ゆかりは不安そうに言った。
「毎日やることで、少しずつ清められる」
土地の浄化は、悪しき存在であるセルパンがやることではない。
だが、ゆかりの前で良き魔物であることを示したかった。
「黒いモヤモヤが消えていった!なんだかスッキリした気分になるね」
ゆかりがはしゃいだ声を出した。
「うん。すぐにまた戻ってきてしまうけど、根気よく毎日やれば、そのうちに消えてくれる」
「一体、あなたは何物なの?普通の人間ではないよね?」
ゆかりは俺に尋ねた。
「人間ではない。どちらかというと悪魔に近い存在かな」
俺は正直に答えた。
「悪魔......だから、お兄ちゃんを殺したの?」
「洋平は何も悪くない。何一つ悪くない。本当にすまないと思っている」
ゆかりはまた、黙り込んでしまった。
俺たちは、川沿いの土手に腰を下ろした。
ゆかりが、しばらくして口を開いた。
「お兄ちゃんをわざと殺したわけじゃないんだね?事故だったの?」
「そうだ。でも起きてはならない事故だった」
「あなたは、お兄ちゃんの体を借りて好き勝手してるよね?」
「それもすまない。ゆかり。俺はこの体から出ていったほうが良いかな?
もしゆかりがそう望むのなら、俺は出ていく。洋平の体は滅びることになるけど」
今、この体から出ていくとなると、俺には煉獄での永遠の苦役が待っている。
だが、ゆかりが望むのなら仕方がないだろう。
だがゆかりは首を振った。
「このままいてもいい......かな」
「そうか」
俺は心底ホッとした。
「洋平の体にいたい。そのためにももう少し、川田の家の情報がほしい」
俺はゆかりに頼んだ。
ゆかりは、小さくうなずいた。
「小夜子さんや、パパのことだよね?」
ゆかりの話ではこうだった。
ゆかりの父親は、今ドイツに行っている高次。
母親は、ゆかりが小学生の頃に病気で亡くなった香織だという。
父親の高次と今の母親の小夜子は、5年前に再婚した。
洋平は小夜子の連れ子だという。
洋平の父親のことは、ゆかりも知らないという。
「5年前というと、俺が11歳くらいのときか?」
「そうだね、私は小2だったと思う」
「そのころから、親は家にいなかったのか?」
「ママのときは、パパも家にいたよ!小夜子さんと再婚してからは、そうじゃなくなったけど」
「そうなのか」
情報が集まった。
これで俺は、平林さんや母親の小夜子に変な言動をせずに済むだろう。
「ゆかり。自殺だけはだめだよ。
俺は悪魔だと言ったよな。自殺した人間はひどい目に合う。悪魔の俺が言うのだから、真実だ」
「そうなの?でも生きていたってひどい目に合うんだよ」
ゆかりの瞳は暗かった。




