21_謝罪
「えっ、セルパンのルイ?そんなこと言ったかなぁ」
まずい。
聞かれていたか。
「あぁ~あたしも、それ聞こえた。
中二病みたいなセリフだなって思った。
けどそのあとタイミングよく雷落ちたし、洋平の表情が怖かったよね」
「すごい雷だったよね。部活が無い日で良かった」
などと口々に話す。
「セルパンなんたら~って、どうせアニメかマンガのセリフなんでしょ?」
陽子がニヤリと笑う。
「あぁ~!そうなんだ。芝居か何か、どこかで聞いたセリフなんだ。
それでつい」
俺は陽子の話に乗っかった。
「お芝居。セルパンのルイのお芝居」
有理が首を傾げている。
ルイは俺なんだって言えたらラクなんだけど。
ゆかりが小さく震えているのが目に入った。
「ゆかり。大丈夫?
俺のせいだな。ゆかりをケンカに巻き込んだ」
姿勢を低くしてゆかりの視線に自分を合わせた。
「ほんとうにごめん。ゆかりに謝罪してもしきれない罪を負っている」
(そして亡くなった洋平自身にも。まだ生きたかっただろうに。俺が殺した。)
片膝を地面につけ、ひざまずいた。
そして、ゆかりに頭を下げた。
人間に頭を下げたのは、初めてだった。
ゆかりは視線を伏せたまま黙っていた。
許してくれるとは思っていなかった。
妹にひざまずいて謝罪する兄。
その様子を、有理たちはあっけにとられて見ていた。
「あっ、ねぇ。雨がやんだよ」
典明が明るい声で言った。
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みんなで校門を出たところだった。
「ルイ!」
俺を呼ぶ声がした。
「えっ?」
振り返ると、実体化したグースとリザベルが立っていた。
「グース、リザベル!どうした?」
グースは茶色の髪をしたラテン系で筋肉隆々の20代前半の男。
リザベルは、白人で赤毛のやはり20代の女性だ。
ふたりとも日本人にはとても見えない。
場違いすぎる......。
「紹介する。俺の友人のグースとリザベルだ」
俺は有理たちに二人を紹介した。
「えっ?洋平の友達?こ、こんにちは~」
みんなは驚いている。
「あなたの怒りの声が天まで響いたものですから、何かあったのかと心配で降りてきました。でも大丈夫そうですね?」
「大丈夫だ!グース、あまり変なこと言うなよ」
グースにそっと注意した。
「ふたりとも、俺のことは洋平と呼ぶように」
小声で二人に告げる。
さっきルイと呼ばれたのは、みんなには聞かれていないようだった。
「いつ戻ってくるの?あなたがいないと寂しくてどうにかなりそう」
リザベルはそう言うと、体を密着させてきた。
アゴをぐいっとつかまれてキスされそうになる。
俺は後ずさりしながら慌てて顔を背けた。
「リザベル、まて」
「ぼ、僕たち邪魔かな?洋平?」
典明が顔を赤くして言った。
「おいおい、洋平。お前、恋人がいるのに有理に告ったのか?」
陽子が呆れたような顔をする。
「しかも、なんで、こんなにナイスバディで、ものすごい美人がお前と......?」
有理も俺のほうをじっと見ている。
「いやっ、違うんだ!リザベルはなんというか......婚約者なんだ」
「婚約者ぁ?」
みんなは、一斉に声を上げる。
「違うんだ。偉い人が勝手に決めた婚約者なんだよ?俺は別にこいつのことをなんとも思ってない」
「えぇ?」
陽子が目をむく。
「お前、いろいろ複雑な事情抱えてんだな」
「あなたが、北条有理?ふぅん......」
リザベルは有理のことを頭の天辺からつま先まで眺め回した。
「おいっ、有理から離れろ」
二人の間に割って入る。
リザベルが有理を呪ったりしないか心配だった。
「ゆかりが雨で濡れて寒そうだ!俺は帰る。
グース、リザベル、また今度ゆっくり話そう」
ゆかりの肩に手をおいて、二人に強引に別れを告げた。
「いいの?あの二人、洋平に会いに来た?」
有理が不思議そうに言う。
「いいんだ。来ようと思えば、ひとっ飛びで来れるんだから」




