20_ケンカ
「土下座しろ。その泥に顔をつけるんだ」
道元は俺に言い放った。
俺を羽交い締めにしていた犬山と佐々木は、その手を離した。
殴られ続けたため、俺は、足元がふらつく。
「土下座しろ?」
「そうだ。妹がどうなっても良いのか?」
ゆかりに目をやる。
金髪はニヤニヤ笑いながら、ゆかりに無理やりキスをしようとする。
「やだ!やめてよ」
ゆかりは仰け反っている。
「早くしろ」
道元は薄笑いを浮かべながら言った。
「誰に向かって言ってるか、わかっているのか?」
俺はあまりの屈辱に、子ども同士のケンカだということも、自分が川田洋平だということも忘れた。
「俺は闇の主セルパン。その名もルイだ。お前の死後、その魂を見つけ出し八つ裂きにしてやる」
大声で怒鳴った。
怒りが激しかったせいだろう。
空が暗くなり雷が鳴る。
経験にない侮辱を受けたせいで、うっかり天候に影響を及ぼしてしまった。
バーン!
という大きな音とともに校庭に雷が落ちる。
我ながら大人気なかった。
「おいっ、なんか、おかしい......」
道元たちは、俺の発する邪悪なパワーを感じ取ったのか、真顔になる。
カァー、カァー!
頭上でカラスたちが騒ぎ出す。
(お前ら、遅すぎるぞ......)
「人間を傷つけるなよ。あと、女の子には手を出すな」
カラスに命令する。
カラスたちは、道元たちの頭を、軽くつつき始めた。
「おい!やめろっ、なんだよ、カラスが!」
「ゆかり、こっちにおいで」
ゆかりに手招きした。
ゆかりは泣きそうな顔でこちらに走り寄った。
ザァーっと本格的な雨が降ってきた。
俺の怒りのせいなので、すぐに止むだろう。
「もう二度と、ゆかりを巻き込むな。ケンカなら俺が相手するから」
道元たちにそう言うと、カラスに引き上げろと、手で合図した。
振り返ると、有理と陽子、典明が校舎の角からこちらを覗いていた。
「お前たち、見ていたのか?」
びっくりした。
いつからいたのだろう。
「いまさっき、来たところ。洋平、おかしかったから心配で見に来たんだよ」
典明が言う。
「ちょっと~。ゆかりちゃん、大丈夫?」
陽子がゆかりの肩に手をかける。
「雨、すごいよね。濡れちゃうし、いったん校舎に入らない?」
典明がそういい、俺たちは北校舎の玄関口に入った。
「洋平。あいつらに殴られた。血が出てる」
有理が心配そうに俺のほうを見る。
「ゆかりを人質に取られて仕方がなかった」
「洋平」
有理がさらに俺にたずねる。
「洋平はさっきセルパンのルイって言った。それはなに?」




