19_土下座しろ
「洋平!北条さんがダメなら僕と遊ぶ?
うちでゲームでもやらない?」
典明が俺を誘う。
「そうするか」
「やったぁ」
「ゲームというと、チェスとかトランプか?
悪いが、俺は強いけど」
「えぇ?なにそれ。そっち系のゲーム?」
駅前で、陽子と有理と別れを告げる直前のことだった。
「さっきから、スマホ鳴ってない?」
「誰のだ?」
みんな一斉にスマホを調べる。
「洋平のじゃない?」
「俺?」
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スマホを取り出す。
「典明、どうやって電話に出るんだ?」
「ここを触るんだよ。ほんとに知らないの?」
電話に出た。
「誰だ!名を名乗れ」
「電話にでるとき、いつもあんなこと言うのかな?」
典明が小声で陽子に話しかけていた。
「なんだ。道元か?電話までしてくるとは。俺のことが好きなのか?
......なに?ゆかり?ゆかりが?お前.......」
「どうした?」
有理が心配そうに見上げる。
「ゆかりちゃんって、洋平の妹じゃなかった?」
典明が言う。
「洋平に全く似て無くて、めちゃくちゃ可愛いって中等部でも有名な子だよね」
陽子が言う。
俺は電話を切ると、スマホを握りしめた。
「どうしたんだ?洋平」
「い、いや。なんでもない」
みんなの顔を見ながら言った。
「ちょっと学校に忘れ物をした。俺は学校に戻る。
典明、ごめんな。また今度遊ぼう......」
それだけ言うと、学校へと走り出した。
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学校に全速力で戻る。
走ると、洋平の腹の肉が波打つ。
はぁっ、はぁっ。
(どこだ?北校舎の裏側って......)
北側の校舎をみつけ、裏側に回ってみた。
道元たちが見えた。
「道元!来てやったぞ」
「来たか。川田」
道元と、今朝の金髪。それに、ゆかり。
取り巻きの犬山と佐々木もいた。
ゆかりは、金髪に腕と肩を掴まれていた。
「金髪!ゆかりから汚い手を離せ」
「今朝は、思い切り肘打ちしてくれてありがとな。川田洋平」
「金髪。名を名乗れ」
「俺か?上村瞬だ」
「覚えておいてやる」
道元が、いきなり俺に回し蹴りしてきた。
俺は道元の回し蹴りしてきた足を腕ですくい上げキャッチすると、軸足を刈った。
道元は無様にうしろに倒れる。
倒れた道元に当身を入れようとすると、瞬が叫んだ。
「おい!そこまでだ。妹がどうなっても良いのか」
瞬はゆかりの頬に触れる。
「お前に似て無くて、かわいい妹だな」
「瞬。ゆかりに何かしてみろ。後悔するぞ」
「お前が大人しくしていれば、なにもしない」
金髪はニヤリと笑った。
俺は犬山と佐々木に羽交い締めにされた。
ゆかりを人質にされているので仕方がなかった。
「男なら正々堂々と戦うべきだと思うがな」
俺は道元の目を見て言った。
「お前は、でしゃばりすぎだ。
前のように大人しく黙って俺に金を支払えば良い」
道元はそう言うと、俺の顔を殴った。
「やめて!」
ゆかりが叫ぶ。
(カラスたちはどこに行ったんだ?)
道元は俺のみぞおちにもパンチを入れた。
「うっ」
あまり食事を摂って無くてよかった。
道元はローキック、パンチを勢いよく繰り出し、俺をサンドバックにする。
「もう良いんじゃねえか?あまり傷だらけにするとヤバいぞ」
金髪が言う。
金髪はケンカ慣れしているが、道元は手加減を知らなかった。
「そこに土下座しろ」
道元は、足元のぬかるんだ泥をさした。
「なに?」
「その泥に顔をつけて、俺に謝るんだ!」




