16_やはり脂肪の塊だった
翌朝。
全力疾走。
そして筋トレを行う。
いにしえの時代の処刑場あとだろう。
河原の一角に禍々しい毒素を振りまく場所があった。
かなりの人数の血を吸い込んだはずの地面にひざまずく。
邪悪な空気を思い切り鼻から吸い込む。
その場で目をつぶって黙祷し浄化の呪文を唱えた。
何羽かのカラスが親玉とともに、やってきた。
「約束のものだ」
ポケットに入れておいた食パンを渡す。
「お前たちのなかでこの肉体の親についてなにか情報があるものは?」
(わかりません)
(わかりません)
カラスは口々に答える。
そうだよなぁ。
カラスにとって人間の家族構成なんて、興味ないだろう。
カラスたちはパンをついばんでいた。
洋平の貪欲な胃袋も食べ物を求めていたが、俺は水だけを摂取した。
早くも体が軽くなってきた気がする。
家に戻ってシャワーを浴びる。
体を鏡にうつして見ると洋平の肉体は、やはり脂肪の塊だった。
「これはなかなか、手強いな
しかしコレだけの巨体を動かせるってことは心臓が丈夫だな」
朝食の席。
ゆかりは、やはり黙っていた。
俺とは目も合わさない。
川田洋平を殺したのは俺だ。
川田洋平を愛していた人間たちには、どんなに謝罪しても許してもらえないだろう。
そして、もちろん洋平自身。
死ぬとは思わなかったはずだ。
若いしまだ生きたかっただろう。
どうすればいいのか。
いや。
なにをしても謝罪にはならないし、罪は消えない。
解決にもならない。
俺には結論が出せずにいた。
とにかく、ゆかりがこれ以上悲しい目に合わないように見守るしか無い。
ゆかりは大好きな兄を失ったのだ。
せめて俺が守ってやらなければ。
とくにあの母親の暴力から守ってやろう。
しかし俺はこのときまだ知らなかった。
ゆかりには別の危険も迫っていたことを。
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「おい、お前が川田洋平か?」
駅から学校までの道のりで、金髪の男に声をかけられた。
「そうだが。お前は誰だ。俺に話しかけるのなら名を名乗れ」
金髪の男は、俺と同年代だと思うが、別の高校の制服を着ていた。
ちなみに金髪は黒髪を染めたニセモノだろう。
セルパンの俺はきれいな本物の金髪をしていて、女が振り返るほどの美男子だった。
金髪は俺の胸ぐらを締め上げた。
「名を名乗れと言っているのだが?」
俺は、やつを睨みつけた。
朝の通学路。
俺たちの周りには徐々に学生たちの人だかりができ始めていた。
「笹山道元は俺の後輩なんだよ。世話んなったみたいだな?」
「だから、お前は誰なんだ」
金髪は俺の胸ぐらをつかんだまま、右手でパンチを繰り出してきた。
ちょうどいい、朝の運動になりそうだ。




