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闇の魔物と女子高生  作者: ゴルゴンゾーラ
人間に憑依
15/193

15_お兄ちゃんを返せ

「あの、さっきは、ありがとう」

母親が大阪へ出発したあと。

平林さんがつくってくれた食事を食べながら、ゆかりが言った。


「ケガはないのか」

「うん。大丈夫。あのさ......」

ゆかりがポツリと言う。

「お兄ちゃんが小夜子さんに、あんなふうに反抗したから。ほんとに驚いた」


俺は黙って、ゆかりの話を聞いた。


「今までのお兄ちゃんじゃないんだなって、なんとなく分かった。小夜子さんに反抗しているお兄ちゃんの目の色とか、体からでる何かが違って見えた」


平林さんは、鍋やフライパンを洗いながら、鼻歌を歌っている。

俺たちの話は聞いていないだろう。


「記憶喪失なの?それとも、もしかして誰かに乗っ取られているの?」


ゆかりは不安そうに俺を見る。

箸を持つ手が震えていた。


ゆかりは超自然的なことを受け入れやすい体質なのかもしれない。

第六感が異常に優れている人間は稀にいる。

彼女は俺の魂が発するオーラの色を読み取った可能性がある。


いままでの兄の「色」と違う。

ゆかりは、本能的にそれを感じ取ったのだろう。


「中身が入れ替わったと言ったら、驚くか」

思い切ってそう言った。


ゆかりは俺の言葉を聞いて目を見張った。

「お、お兄ちゃんは?」

「えっ」

「ほんもののお兄ちゃんはどこへ行っちゃったの?」


ゆかりは大きな目で俺を見つめながら、ポロポロと涙を流し始めた。

「ゆかり......」

「誰だか知らないですけど、お兄ちゃんを返してください」

ゆかりは泣きながら、肩を震わせた。


「もう、返すことはできないんだ」

俺は、ゆかりの目を見つめて言った。


「いやだ!返せ!お兄ちゃんを返せ!」

ゆかりは立ち上がると、俺にコップの水をかけた。


平林さんがぎょっとしてこちらを見ている。


ゆかりはそのまま、二階の自分の部屋へ走っていった。

平林さんが慌ててタオルを持って駆け寄ってくる。


「大丈夫です。ちょっと喧嘩して」

「いつも仲がよろしいのに。珍しいですね」


タオルで顔を拭きながら考える。


ゆかりと洋平は仲が良かったんだ。


「お兄ちゃん、遅いよ。あの話、今日もする予定だよね?」

初めてゆかりと出会った日。

ゆかりはそう言いながら、嬉しそうに俺に駆け寄ってきた。


そんなことをフト思い出す。


俺のせいで洋平は死んだ。

俺が「有理のため」などといいながら、運命の道筋に介入したからだ。

それに、俺のしたことは、けっして有理のためではない。


自分のためだ。

自分が好きな女の苦しむ姿を見たくない。

そんな俺のエゴから、川田洋平は死亡した。


本来なら、道元が死ぬはずの運命を、俺が変えたのだ。



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