11_いじめ
俺の机には、文字が書き込まれていた。
よく見ると「死ね」「デブ」「キモい」などだった。
おそらく呪いの一種だと感じた。
死ねとデブは意味がわかった。
でも、キモいってなんだろう。
陽子にもそう言われたと思う。
有理が俺の机のそばに立って言う。
「誰がやった」
大声でそう言い、クラスを見回す。
みんなは黙って下を向く。
「笹山?きっと笹山だ」
有理が道元に詰め寄る。
「おい、北条~。川田のこと名前で呼び捨てか?
俺のことも道元って呼んで?」
道元がニヤニヤと笑う。
陽子は俺の隣の席だった。
「おい!陽子。教えてくれ。キモいとはどういう意味だ」
陽子は目を丸くして俺を見る。
「あんたみたいなやつのことだよ」
と小声で言う。
「よくわからない。特別ってことかなぁ」
俺はふかくうなづいた。
陽子は軽蔑したような表情を見せた。
「授業を始めるぞ」
中年の男が入ってきて、そんな宣言をする。
どうやら学生の本分、学業が始まるようだった。
窓の外ではカラスの親玉が俺を見守っていた。
あいつ、思ったよりヒマみたいだ。
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体育の時間だった。
みなが何処かへ移動する。
俺はマジックを片手に道元の机に近づいた。
今なら誰も見ていない。
「目には目を。歯には歯を」と昔から言う。
やられたらやり返すのが普通だ。
机に呪いを書くというのが「いじめ」なら、俺も道元をいじめようと思った。
でも俺は「呪い」のプロだ。
本格的な呪いになってしまうのは避けられない。
いたずら書きレベルでは済まないだろう。
だけど仕方がないと思う。
向こうが仕掛けてきたことなんだから。
マジックで、すばやくラテン語の呪いの言葉を書き連ねる。
それから、不運が起きやすくなる絵をミニサイズでたくさん書いておいた。
やつは今後しばらくアンラッキーに見舞われやすくなる。
「ハハハ」と笑いながら、道元の机から離れようとすると
「川田くん、大丈夫なの?」
そう話しかける声がした。
振り向くと、痩せて小さな男が俺をみあげていた。
川田は太っているが、背もまぁまぁ、ある。
おそらく180近いのではないか。
その男は、160センチくらいだと思われた。
「誰?」
「えっ、小林だよ?前はよく話したじゃん......」
「小林。下の名前は?」
「えっ、典明だけど」
「小林典明。ふうん」
「そんなことよりさ。笹山くんの机に落書きしてたよね?大丈夫なの」
「いじめ返しだよ」
「い、いじめ返しって。タダじゃ済まないよ?」
典明は不安そうに俺を見ていた。
「典明は、俺を心配してくれてるんだ?」
典明のオーラは穏やかで、あたたかかった。
「心配っていうか。もう見てられないっていうか」
「体育の時間だっけ?どこに行けばいいんだろう。教えてくれる?」
俺は典明の肩を叩いた。
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体育の時間が終わり、みんな教室に戻る。
道元が自分の机を見て大声を出す。
「なんだよこれ!?」
周囲のみんなも、道元の机に目をやった。




