107_めまいがするほど可愛い
「すごく可愛い」
「そうかな」
有理は少し恥ずかしそうに首をかしげた。
有理はネイビーのシンプルなワンピースに小さな白いネックレスを付けていた。
「めちゃくちゃ可愛い」
彼女の周囲をウロウロと歩き回った。
いろいろな角度から眺めたかった。
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有理と俺は服従の印の支配者に接近するため、パーティに参加することにした。
有理に電話して頼んだ。
「有理、俺と一緒にパーティに参加してほしい!」
「パーティ?誰のお祝い?どういうことだ」
有理は不思議そうだった。
「どうしても有理の力が必要なんだ。一緒にまた戦ってほしい」
「洋平!このあいだ全て説明するって言った。まだ話聞いてない」
「そうだった。この件が終わったら必ず説明するから」
俺はなんだかんだと、有理に「説明」するのを引き伸ばしていた。
道華にさらわれた夜、公園で有理が言っていたとおりだ。
俺は有理をダマしている。
純粋な有理をダマして利用している。
そんな気がしてきた。
早くすべてを話さなければ。
そう思うんだけど、とても気が重かった。
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「北条さんを誘うの?北条さんはパーティに着ていく服はあるの?」
ゆかりが俺にたずねた。
「あー。服か。普段着じゃだめだよな?」
着ていく服のことなど考えもしなかった。
「だめだよ!去年参加したんだけど、みんなキチンとしてたよ」
「それなら、あたし、北条さんとお買い物したい!
あたしもパーティに行くんだ。だから服を作ることになるし」
ゆかりがニコニコと俺に笑いかけた。
「ルイがびっくりするくらい、北条さんを可愛くしちゃうよ」
ゆかりは俺に向かってウィンクした。
「それは助かる!ゆかり、ありがとう」
そんなわけで、有理はゆかりと洋服を買いに出かけたようだった。
そしてパーティの当日。
有理は俺がめまいを起こすほど可愛らしい姿で目の前に現れたのだった。
「可愛いでしょう?おばあちゃんの代から仲良くしている仕立て屋さんに頼んだの。
既製品じゃないから北条さんの体にぴったりだよ。
生地も質がいいの。普通は一カ月はかかるんだけど、
特別に最短で仕上げてもらえた」
「へぇ。それは高そうだな。金はどうした」
「お金?なぜ気にするの?」
ゆかりは、金を心配する俺を見て、不思議そうに首を傾げた。
「ゆかりちゃん。お金、払うよ」
有理が言った。
「有理は払う必要ない。俺が無理やり頼んだんだから」
「そうだよ。北条さん。気にしないで」
服がいくらしたのか、ゆかりは把握していないようだった。
ゆかりはカワタホールディングスの次期社長の一人娘。
いわゆる上流階級の子どもなんだと改めて思った。
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川田家のリビングのソファで、ゆかりと有理は並んで座っていた。
「さっきまで二人でサロンに行ってきたの。楽しかったぁ」
「サロン?なんだそれ」
「美容院みたいなとこ。髪の毛とメイクもしてもらってきた」
ゆかりは肩まである髪の毛を結い上げて一つにまとめていた。
「北条さんもヘアメイク。可愛いでしょ。肌が綺麗だってみんな褒めてた」
「有理は飾り付けなくてもきれいなんだけど」
俺はまた、有理の周囲をウロウロしだした。
「でもやっぱり、可愛いなー。見惚れてしまう」
「洋平。変だ!ジロジロ見ない!」
有理が顔を両手で隠している。
「あっ。ゆかりもキレイだよ。中学生とは思えない」
「ちょっと、お兄ちゃん。ついでみたいに言わないでよ」
ゆかりはアハハと笑いながら俺の背中を叩いた。
「お兄ちゃんも、ちゃんとジャケット着てみて」
「暑くて嫌なんだ。俺なんか学校の制服でいいのに」
窮屈なシャツにジャケットを羽織った俺を見てゆかりは喜んだ。
俺の服は出入りのデパートの業者に適当に持ってこさせた。
なるべく地味なのにしてもらった。
「お兄ちゃん、かっこいい!いい感じだよ。そうだ、北条さんと並んで立って」
「おっ!写真だな。マジで頼むわ。俺はどうでもいいから有理を撮って」
恥ずかしがって赤い顔をした有理とくっついて並んだ。
ゆかりがスマホで写真を撮ってくれる。
「うん!よく撮れてる。お似合いだよ」
「また宝物が増えた!典明たちと遊んだときの写真。それに今日の写真」
そのあと、ゆかりと有理の写真も撮ってやった。
これから、支配者と対決するというのに、俺はすっかり浮かれていた。




