105_【ナナ】瞬との訓練
瞬は真剣な顔で、あたしのつくった炎を自分の手のひらに乗せていた。
その顔は、うっとりするほどかっこいい。
あたしは最近、なにをしていても瞬のことばかり考えている。
あたしたちは、いつもの河原で二人だけで、呪術に抵抗する訓練をしていた。
ルイはいなかった。
「瞬。あたし、あなたのこと愛してる」
「アチッ!くそっ!」
瞬はあたしの言葉を聞いて集中が途切れてしまったのか、炎の熱さを感じてしまった。
「あと少しで新記録だったのに」
瞬はスマホのタイマーを止めた。
「1分15秒。炎にさわれた」
瞬はあたしの方を見て、にやりと笑った。
「それで?俺のこと愛してるって?」
瞬は川のほうに視線をやった。
「そうよ。なんども言ってるけど」
「ナナ。セルパンってのは、恋愛におぼれやすいのか?」
「えっ?なに?どういうこと?」
「だって、洋平も北条有理のこと、異常に好きじゃん。
リザベルは洋平のことが忘れられないみたいで、洋平に何を言われても諦めようとしない。
あとお前の両親、レザールとミーネか。べったりじゃねえか」
「あたしたちセルパンは、滅多に恋に落ちないわ。だけど惚れたら生涯、愛する人と添い遂げようとがんばるの。人間みたいに移り気じゃないのよ?」
「ナナ。悪いんだけど、俺は、ひとりの女をずっと好きになったことがない」
「瞬......」
「ごめん。ナナとはさ、出会ったばっかだし、好きかどうかと言われるとよくわかんねー」
瞬はあたしのことをじっと見た。
「ナナは、男が10人いたら全員が振り返るくらい、スゲー可愛いよ。
だけど、大好きとか愛してるとか言われると、ちょっとわかんねーな」
「分からなくていい。可愛いって思ってくれるなら、あたしを好きにして良いのよ」
あたしは瞬の手を取った。
そして彼の手を自分の頬に触れさせた。
「お前は、俺を愛してるって言うけど。
自分のことを愛してない男に触られて、嬉しいのか」
「嬉しいわ。あたしは愛してるから」
「うーん。普通だったら俺だって、お前みたいな女に言い寄られたら、即、手えだすんだけど」
「じゃあ、そうしていいのよ」
「なんでだか、わかんないんだけど、お前に関しては、それは間違ってる気がする」
瞬は、何かを考え込んで黙り込んでしまった。
「あたしがレザールの娘だから?早瀬賢治を目の前で氷漬けにした」
「あぁ~~、あれはヤバかったよな」
「あたしがレザールの娘だから、それで怖いのね?」
「ちげーよ。この話と、お前の親とは何の関係もないよ?」
「きっと関係あるわ!あなたは怖いのね」
「なに決めつけてんだよ。お前の親のことなんて、どうして俺が気にすんだ?」
「じゃあどうして?」
「なんで、そう答えをすぐに欲しがるんだよ」
瞬がイライラし始めた。
「俺は帰る!」
「まって。瞬。怒らないでよ」
「怒ってねーよ。また来週、訓練しよう?
今度は俺がお前に護身を教える」
「よかった。そうね。もうしつこくしたりしないから」
あたしは瞬に振り向いてほしかった。
だけど、彼はあたしのことを愛してくれていなかった。
もっと彼と二人で時間を過ごす必要があるのかもしれない。




