その一声は慎重に その2
ショッピングモールでの一件は、数日のうちに話題になり、学校でもその話が持ち上がっていた。ただし、話題の人が誰かまでは伝わっていなかった。
娘としては、やっぱりお父さんを思いっ切り自慢したい。でも、あれこれとうるさく聞かれたりするのはちょっと勘弁して欲しいところだし、何より、あのときの嫌な予感を思い出すたび、話が変な方向に進んでしまわないか心配で、あまり噂が広がって欲しくないという気持ちもあって、残念だったりほっとしたり。
ということで、亜矢ちゃんから「ウッシー、知ってる? 噂のお父さんのこと」と話題を振られると、ちょっと複雑な気持ちになる。
これで何度目になるだろう。この話題を口にするのは。
「う、うん。知ってるよ」
「かっこいいよね~。家族を守るために、十何人って悪い奴をたった一人で叩きのめすなんて」
人数がまた増えた……。
噂話には必ず尾ヒレがたくさんついてくる。それは時間とともに増えて、巨大化していく。そんなこと、女の子にとっては常識中の常識、というか常識以下。だから驚くようなことではないんだけど、目の前で見ていた身としては、こうも変わってしまうと、ちょっとどうかなと思ってしまう。
なので、「十何人って、私が見――聞いた話だと、三人だよ?」と言ってみる。
とここで、美樹ちゃんが会話に加わってきた。
「え? たったの一撃で百人を倒したんでしょ?」
また増えた……。っていうか増えすぎだし、一撃って。ゲームじゃないんだから。
「そうなの? へ~っ!」と亜矢ちゃん。まさか、信じちゃうの?
「うん。しかも倒した敵を全員丸刈りにして、もう二度としませんって土下座させて、誓約書まで書かせたんだって」
間違ってるけど、ちょっとだけかすってる。
土下座はした。ただし、自分たちから率先して。
「スゲー! どんだけ強いんだよその人!」
「強いだけじゃなくて、けっこう格好いいって話だし」
それは正しい。
そして話は、噂のお父さんがどれだけ強いか、から、それに比べてうちのお父さんのここが駄目であそこが最悪だ、といった父親への文句というか悪口へと流れ出した。そんな二人の言葉を聞いていると、なんだか二人のお父さんが可哀想に思えてくる。そして、最後はやっぱりこう言われた。
「いいよなあ~、ウッシーのお父さん、格好良くてさあ」
「ほんとほんと。しかもお母さんも美人で、すっごく若く見えるし。う~! 私も汐の姉か妹に産まれてきたかった~!」
「独り占めなんてずるいぞウッシー!」
「私にそう言われても」
私のお母さんとお父さんの評判はとても良く、友達からこのように羨ましがれること数限りなく、年々その声は増えている。娘として、それは嬉しくて誇らしい。のだけど、今回ばかりは大歓迎とはいかない。
「ねえ、ひょっとしたら、噂のお父さんって、汐のお父さんなんじゃない?」
と言われてしまうから。
えーと、そのとおりなんだけど……、話がこうも大きくなり始めると、名乗り出られるものも出られないよ。やっぱり、誤魔化した方が良さそうだよね?
と逡巡している僅かな間に、亜矢ちゃんが「それはないんじゃない?」と言ってくれた。
ナイス、亜矢ちゃん。
「なんでよお。汐のお父さん、格好いいじゃん」
「でも、すっごい優しいんでしょ? 暴力振るうような人じゃないよ。ましてや百人も相手にだなんて」
さすがに百人を相手にしたことないみたいだけど、荒れてた頃はわりとケンカしてたそうです。相手の数なんかお構いなしに。しかも河原の死闘とかいう伝説まで作ってしまってます。とは言えません。
「でも、家族がピンチになったら体張って守ってくれそうじゃん?」
「まあ、ねえ。でも、なんか想像できないなあ」
何度か見てます。相手を殴るのを見たのはこの前が初めてだけど。とも言えません。
「その点についてはどうなの? 汐」
何とも言えません。
「汐っ!」
「はい?」すっかり傍観者になっていた心の中でコメントを付けていた私は、美樹ちゃんに呼びかけられてようやく現実に戻った。
「だからあ! 汐のお父さんって、家族がピンチの時に守ってくれるかってこと!」
「ああ、ええと……、守ってくれると、思うけど」
ここはとりあえず誤魔化しておこう。
「思うって、じゃあ今まで実際そういうことはなかったの?」
「うん。いたって平和に生きてきたから。それに、そんな展開そうそうあるわけないじゃない」
「そりゃそうだよね」
「そうだよ、美樹ちゃん」
「でもちょっと残念。本当にあったら、絶対格好いいだろうからねえ。汐のお父さんだったら」
うん。格好いいです。でも、あのときみたいな恐いお父さんはあんまり見たくないなあ。
そうしてこの話題は終わり、まったく別の話題へと移っていった。今回も事なきを得てほっとしたけど、話題の人が私のお父さんだということが知られたら、私の周りの反応が全然違ってくることは明らかで、その日がいつか来るのかと思うと、正直ちょっと恐かった。
この日の部活はお休み。ということで、授業が終わるとさっさと学校をあとにして、大幅に寄り道しつつ家へと向かった。そして、その寄り道というか大回りの帰宅コースが功を奏して、いま私はファミリーレストランの四人テーブルに座り、早苗さんと並んでお喋りをしている。
「まあ。汐ちゃんも大変ね」
「こう話が一人歩きしちゃうと、早いところみんな忘れて欲しくなるよ」
「そうねえ。学校でそんなことになっていては、心休まらないものねえ」
二人で喋っている話題は、言うまでもなくショッピングモールでの一件にまつわること。ちなみに、早苗さんたちの耳にもこの話題は早くに届いていたけど、ことの真相を知ったのはついさっき。用事があって私の家に来ていて、そのときお母さんから。
ちなみに今はその帰り。
「とにかく、今は台風が過ぎ去るのを静かに待つ方がいいでしょうね」
「やっぱり、そうだよね」
とここで、私はふと疑問に思ったことを尋ねてみた。
「そういえば、早苗さんもこういうことあったの? ピンチのところをあっきーに守ってもらったとか」
「ピンチと言うほどの状況ではありませんでしたけど、ええ、ありましたよ」
「やっぱりあったんだ。どういう状況だったの?」
「それはですねえ」
早苗さんは、それじゃあと楽しそうに話し始めた。
それは早苗さんとあっきーがまだ恋人同士になる前のこと。その日、稽古中のあっきーを見学しに行くことになっていた早苗さんは、前の用事が長引いて大幅に遅刻。で、稽古場の目の前まで来たところで、ナンパ集団に捕まってしまった。振り切ろうにもすっかり囲まれてしまい、困っていたところに、稽古途中のあっきーと劇団の人たちが登場。
なかなか来ない早苗さんに、あっきーが窓の外をちらちらと見てたから早苗さんのピンチに気付けた、とは劇団員の証言。
で、助けに入った時のあっきーは、何かの役になりきった様子で格好良い台詞を喋り、他の劇団員の人たちもあっきーに合わせてアドリブを加えつつ、早苗さんを助けたのだそうだ。そしてその時の様子を、早苗さんは「今でも、あれは秋生さんが計画した催しだったんじゃないかって思えるぐらい、本当に楽しかったです」と満面の笑みで思い出していた。
さすがは早苗さん。それに、助けに入ったときのあっきーも、如何にもあっきーらしいとしか言い様がない。
そんな話の流れから、早苗さんが中学生の頃からよく告白されて、ナンパされたのも数回じゃきかないという話を聞き、私は「早苗さんも、お母さんと同じで昔からモテモテだったんだね」と言った。
「渚は、そんなにモテてはいませんでしたよ?」
「え、そうなの?」
昔のお母さんはとても内気だとは聞いてるし、お友達もほとんどいなかったっていうことも聞いてるけど、男の子から人気があってもおかしくないと思っていただけに、これは意外な答えだった。
「はい。あの子、小さい頃からとても内気で、人と関わるのが苦手でしたからね。それでもあの子なりにがんばろうとはしていたんですけど、生まれたときから病弱で、学校を休むことが多かったからっていうのもあるんでしょうね。なかなかクラスの輪の中に入ることが出来なくて、俯いてばかりでした。
母親が言うのも変ですけど、俯いてばかりの元気のない子を好きになるような人は、そうそういないものですからね」
そういうものなのかなあ。可愛ければ誰でもモテモテになると思うんだけど。
「でも、朋也さんと出会って、あの子はすっかり変わりました。俯いてばかりの渚がちゃんと前を向いて、明るく歩けるようになって。お友達もたくさん出来て、自分に自信を持つことが出来るようになって。
それからちょっとずつ、モテモテになっていったようですけどね。
それもこれも、朋也さんが渚のことを大切にしてくれたから。渚を励まし、支え続けてくれたから。だから、今のあの子がいる。私も秋夫さんも、そう思っているんです。
そして、朋也さんが渚をお嫁さんに選んでくれて、汐ちゃんが生まれてきてくれて。
こんなに嬉しいことばっかりで、あの子が輝かないわけないです」
確かに、お母さんはきらきらしている。いつも笑顔で、優しくて、あったかくて。お父さんのぐさりとくる一言にちょっとへこんだりすることもあるけど、そんな顔だって可愛く見える。それは、へこむ中にも楽しい気持ちがきっとあるから。そう、私のように。
「なんだか嬉しそうね」
不意に、早苗さんが言った。
「え? あ、うん。まあね」
私は機嫌良くそう答えて、グラスに口を付ける。だけど中は氷だけ。いつの間にか飲み干していたらしい。すぐさまグラスを手に通路側の席から立ち上がり、「お代わりしてくる」とドリンクバーに向かう。その後ろで、早苗さんの「いってらっしゃい」という優しい声が聞こえた。
嬉しいことばっかりで、輝かないわけない、か。
じゃあ私は?
実を言うと、男の子から告白されたことは今のところ一度もない。早苗さんとお母さんの血を受け継いでいるというのに。それは、私が俯いていて元気がないから? いやいや。自分で言うのもなんだけど、俯いてはいないし元気だったある。なら、嬉しいことが少ないと? これも違う。だって、毎日とっても楽しいもの。
それなら何が問題なんだろう。ひょっとして、私の性格? そんなに悪いとは思ってないけど、こればっかりは自分で判断できない。まさか……、ほんとにそれが原因? 私って性格ブスなの? うわあ、ほんとにそうだったらどうしよう!
などと、グレープフルーツジュースで満たしたグラスに氷を放り込む最中に、ちょっとだけ顔を青ざめて考えていたので、気がついたときには、氷が山となってグラスに入っていて、ジュースがぼたぼたと溢れていた。
やばっ!
周囲の目に恥ずかしく思いつつ、そばにあったフキンで慌ててカウンターを拭き始める。しかもそこに店員さんがやってきて、こちらで拭くのでいいですよと言われ、恥ずかしさが増してしまった。
なにやってんだか私。
そして、新しいグラスに氷とグレープフルーツジュースを入れ、いそいそと席に戻ったのだけど、そこには、つい最近見たような光景があった。
「キミ、すごく可愛いね。マジで惚れちゃったよ」
「ひょっとしなくても、モデルさん?」
二十代後半といった感じの男の人二人が、私たちの座っていたテーブルの横に立って、早苗さんに声を掛けている。パッと見、私とお母さんに声を掛けた三人組にあったような幼稚な軽薄さはないけど、ナンパしていることには変わりないし、小物臭もちゃんとある。
ああ、罪な人がここにも一人……。
「いいえ、ただのパン屋さんです」と、にこやかに答える罪な人。
「うっそでしょ。絶対モデルさんだって」
「分かった! 本当は女優さんだ!」
二人組は、そう言うと図々しく私たちの席に座った。一人は早苗さんの前に、一人は私の座っていた場所に。
「すみません、そこは私の連れが座るので、どいてもらえますか?」
「ああ、戻ってきたらすぐどくよ。つうかさ、その連れが戻ってきたら、俺たちとどっか遊び行かない?」
あ~、素人小説じゃあるまいし、なんで立て続けにこういう展開に遭遇するかなあ。
早苗さんはさほど困った表情はしていないけど、グレープフルーツジュースを持ったまま突っ立って見届ける、というわけにもいかないので、とりあえず席に戻ることにした。
席に戻る私を見た早苗さんは、「連れが戻りましたので、どいてください」と、やはりにこやかに言う。
二人組は、揃って私を見た。この前の三人組よりかは恐いとは思わないけど、まったく恐くない、というわけではない。
「お帰り。待ってたよ」
そう出迎えたのは、早苗さんの隣に座る、Tシャツに薄手のジャケットを羽織った男の人。
なんだかすごく腹立つ。
「戻ったって、一人だけじゃん。まあとにかく、妹さんも座りなよ」もう一人のナンパ男が私にそう言ってきたけど、こんな人の隣に座りたくなんかない。でも、早苗さん一人座らせておくのはと考えてしまう。
ん? 妹さん?
「いいえ、この子は私の妹ではありませんよ? 私の、孫娘です」
早苗さんが、すかさず訂正した。すると二人組はその言葉に一瞬止まり、すぐに「その冗談サイコー!」などと笑い出した。まあ、普通そうなるよね。友達が早苗さんを見て、お母さんのお母さんだよって説明すると、必ず嘘や冗談だと思われて笑われてしまうんだし。
友達同様に、早苗さんの実年齢を知ったら、きっと驚くどころじゃ済まないだろうなあ。
そして、しばらく笑ったあと、チェック柄のシャツを着た相方が「もう一人戻ってきたら、さっそく五人で遊びに行こうよ。二対三で男が一人少ないけど、そっちの方がキミたちとしては気が楽でしょ」と目尻に涙を残しながら言うと、ジャケット男も「男は狼だからね」とよく分からないことを言った。
テーブルにコップが三つあるからそう判断したんだろうけど、まあ、数字は正しい。けど、一番大事なところが間違っている。三人揃っているところを事前に見ていれば、こういう愚かなことはしなかっただろうに。
ほら、こっちに猛ダッシュしてきた人の腕が、ジャケット男の首にぐるりと――。
「そうさ、男はどう猛な獣さ」
「あっきー」
完全に油断していたジャケット男は、口と目を大きく開いて、あっきーの腕を外そうと苦しそうに藻掻いている。そしてシャツ男は、慌てて「てめ! いきなりなにしやがんだ!」と大声を上げて立ち上がろうとした。しかし、あっきーがそれを牽制するように、「ああ?」と睨み付ける。シャツ男は危険を感じたらしく、動きを止めた。
そこで追い打ちをかけるように、あっきーは「それ以上動かない方がいいぜ? でないと、間違えてこいつの首へし折っちまうからなあ」と不敵な笑みを浮かべる。
「卑怯だぞ!」
「ケッ。なあにが卑怯――」
とここで、早苗さんが緊張感の欠片もない口調であっきーを止めた。
「秋生さん、もうそのぐらいにしてあげてもいいんじゃないんですか?」
見ると、ジャケット男の黒目がまぶたの裏に消えかけていて、唇がぴくぴくと震え始めていて、明らかに落ちかけている。
「ん? ん~、しゃあねえな。早苗がそう言うなら、勘弁してやるか」
あっきーはそう言うと、渋々といった様子でジャケット男から腕を外す。解放されたその人は、ぐにゃりと前のめりに倒れ、顔面をテーブルにゴンっと強く打ち付けた。たぶんそれが良かったのだと思うけど、ジャケット男の飛びかけた意識が完全に戻り、激痛に額を押さえながら激しく咳き込んだ。
シャツ男はそれを見て、席を立ちあっきーに殴りかかろうとした。だけど見事に返り討ち。あっきーの額が相手の眉間に的確にヒットし、シャツ男は鈍い音とともに首を後ろに反らせ、あまりの痛みに「ぐあああ!」と悲鳴を上げながら、ぐしゃりと膝を折った。
あっきーは指をポキポキと鳴らしながら、足元で眉間の痛みに呻いているシャツ男を見下ろす。
「人の女に手ぇ出すとは、良い度胸じゃねえか。ガキども」
「お――んな――?」とジャケット男。まだ呼吸が正常に戻っていないようで、言葉が途切れ途切れになっている。
「はい。私の旦那様です」
「人づ――ま?」
「はい」
「そ――れじゃ――、そっちの――、娘――? って――、まさか――」
「いいえ、孫娘です」
「冗だ――ん――でしょ?」
「本当ですよ」
「え――、ばあさ――ん?」
あ、早苗さんが笑顔のまま固まった。
「てめえっ! 何てこと言いやがんだ! 早苗に土下座して謝れ!」
あっきーが血相を変えて、慌てて二人を力ずくで通路に並べて正座させると、早く謝りやがれと二人の頭を押さえつけながら急かしだした。二人組は最初こそ、文句を言いながら抵抗しようとしたけど、笑顔のままほろほろと涙をこぼし続ける早苗さんの姿に深い罪悪感を感じたようで、結局、心底申し訳なさそうにすみませんでしたと額を床につけて謝った。
けど、涙は止まらず、あっきーは心がこもってないともう一度頭を下げさせる。
「てめえらちゃんと反省しやがれ! 早苗の心の痛みが消えるまで頭上げんじゃねえぞ! いいか! 早苗に対して『おばあちゃん』って類の言葉を口にしちゃあ絶対にいけねえんだ! 分かるか? 早苗はな、永遠の十七歳でいたいんだ! そうでなきゃなんねえだ! 言い出してしまった以上、もう後戻りは出来ねえんだよ! 例えそれが無茶なことだと分かっていてもだ! それがどんなに苦しく辛いことか、てめえらに想像できるか? 孫娘に『早苗おばあちゃん』と呼ばれることが許されないあいつの辛い気持ちが――!」
「あっきー」
「――あん? どうした? 愛しい孫娘よ」
急にテンションを落として冷静に返事をしてくれたあっきーに、私は言葉で説明するよりも見てもらった方が早いと思い、早苗さんを見るように目で訴えた。そして早苗さんを見たあっきーの表情は瞬時に変わった。それはもう、ムンクの『叫び』のように。
「さ、なえ……」
早苗さんは、変わらず笑顔で涙をほろほろ流してはいるけど、そこに加わったものがあった。それは、こめかみで脈打つ、三つの大きな十字路。
「秋生さん……、私のこと……、そんな風に、思ってたんですね……」
その声は、怒りと悲しみが同居しているような震え方をしていた。
「ちちちちち違うんだ早苗っ! 俺はあくまでもお前の心の傷を説明するために――!」
「あっきー。あっきーも謝った方がいいと思うよ?」
「あ……、う……」
あっきーはしばし言葉を失って逡巡したのち、土下座する二人の横に正座し、「すまん早苗! このとおりだっ!」と猛烈な勢いで謝り始めた。それを見た二人組は、「ひでえよあんた、自分の奥さんにあんなこと言うなんて」「あんたが奥さん怒せてどうすんだよ」とあっきーを責め立てる。
その非難の声は、どうやら本気でひどいと思って言ってるように聞こえる。まあ、今の早苗さんを見れば、そう思うよね。
「るせー! てめえらだって早苗を怒らせただろうがっ! こめかみのあれの二つはてめえらのなんだよっ!」
あっきーはそう抗議するけど、それは違うよ。三つともあっきーのせいだから。
結局、あっきーはひたすら正座して謝り、二人組は私と一緒に早苗さんを慰めることになった。
何て言うか……、途中までは格好良かったのにね。あっきー。




