表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飯喰う前に、世界を救え!  作者: 海土竜
6/34

クレープを喰らう

「女神様も喜んでくれてます!」


「その自信は何処から来るんだ、女神の機嫌を損ねて加護が無くなったらどうするんだよ」


 すづはポンと手を叩いた。


「女神様の名前も入れましょう!」


「ダメだろ、もうこれ以上は……」


「うーん、女神様に聞いてみるのはどうですか?」


「どうやって? 女神がどこに居るのか知ってるのか?」


「はい! 女神様は神殿に居ます」


「そうなのか! 女神の神殿に行って飯代を借りれば、こんな店ともおさらば出来る! 早速、出かけるぞ!」


「はい!」


「すづ、神殿の場所は何処だ?」


「知りません!」


「何だと……。やはり、子供の話を真に受けるんじゃなかった……」


「なに騒いでるの? 女神って、創世の女神の事かい? 西の森に神殿があるけど……」


「知っているのかリエナ! 詳しい場所を教えてくれ」


「ええ、まぁ、そんなに遠くはないけど…………」


「ありがとう、恩に着るぜ!」


「あっ、ちょっと……。あんな所に行ってどうする気なんだか……」



 そこは、日の光も届かぬほど鬱蒼と木々が生い茂り、得体の知れない魑魅魍魎が跋扈する、恐るべき魔の森であった。


 木々の影から、深い闇から襲い掛かる、言葉に出来ぬ恐るべき姿の魔物たちを、五十鈴は無視して駆け抜け、女神の神殿へと到着した。


「ここが、女神の神殿なのか? ……荒れ放題だぞ?」


「はい、間違いないです。あそこに女神像もあります」


 すづの指差した方に転がっている女神の石像は、確かにどことなく、あの幼い神に似ている気がしないでもなかった。


「仮にも創世の女神なのだろう。誰も神殿を訪れないのか? これではまるで廃墟じゃないか……」


「ひゃーっはっは、何が創世の女神だ! その女神が何をしてくれると言うのだ!」


 突如、フードを被った男達が崩れた柱の陰から姿を現した。


「何者だ! 神殿を破壊したのはお前たちか!」


「やはり、こんな女神の神殿を訪れる愚か者か、我らはユピノ神の信徒よ、このフードが目に入らぬか!」


 彼らが自慢げに見せた赤いフードは、頭をスッポリ覆うほど大きいが、丈は胸あたりまでしかなく、どうにも不格好なキノコの被りものにしか見えなかった。


「知らん、そんな神も、キノコの被り物も知らん」


「おのれ、我らの神を愚弄するか! だが、ちょうどいい、ここに神殿を建てる儀式の生贄に、この娘を使わせてもらうぞ」


「くきゅ~」


「すづ、いつの間に捕まったんだ」


「その男は、始末してしまえ」


 フードの男たちが武器を構え一斉に襲い掛かる。


「貴様らこそ、あの世で後悔するといい!」


 ――餓鬼魂顕現。


「はっはっは、逃げ惑うがいい! キノコの踊り食いだ! はっはっは……」


 高笑いが森の静寂に吸い込まれて消えて行くと、石像の転がる神殿の廃墟に、一人佇む五十鈴の姿が残されていた。


「また、やり過ぎちまった……。すづの奴、最近丸まると美味そうに育ってたからな……一緒に喰われちまったか……骨も残ってないが墓くらい建ててやるか」


 周囲の瓦礫を片付け始めた五十鈴の足元に、小さな餓鬼魂が一匹這って来る。


「こいつは、まだ消えてなかったのか……」


 獲物を食えば自然と消えてしまう筈であったが、芋虫の様に動き回るそれを不審に思い、覗き込んでみると、餓鬼魂の口からすづの頭がひょっこりと飛び出していた。


「うわぁ! すづ、…………そんな所で食われてたのか……成仏してくれ……」


「成仏はしません!」


「大丈夫なのか、すづ」


「はい! 戦闘に巻き込まれないように隠れていました」


「どう見ても、そこは戦闘の中心だろう……」


「いえ、モグ……モグ……、これも、けっこう、おいしいです」


 すづはクレープの皮に包まれながらクレープを食うように、餓鬼魂を内側からかじっている。


「すづ! そんな物食っちゃだめだ! ……いや……それ、食えるのか?」



 五十鈴達は、倒れた女神像を起こし、瓦礫を片付けて、廃墟に見えない程度に神殿を修復したが、そこで、女神の信託が降りるとは思えなかった。


「だめか……帰るか」


「はい! 急げばご飯に間に合います」


「お前、さっき食ったばかりじゃないか……」


「クレープは、別腹です!」


「別腹と言うか、別の腹の中だったけどな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ