馬刺しを喰らう
力無き者は虐げられ、さらに、力無き者を虐げる。
此処は、悪党が、悪党を食らう、地獄の鬼でさえ唾棄する、滅びに向かう世界であった。
「おら、ガキども、早く歩け!」
「おいおい、あまり手荒なことをするなよ……そいつらも大事な商品だからな」
「へっへっへ、違いねぇ。お前らの様な痩せっぽちのチビでも、高く買ってくれる変態もいるもんだ……それまで、しっかり働いてもらうぜ」
「荷物を運ばせて、運んだガキごと売っぱらう。これぞ、一石二鳥っていうもんだ。うわっはっは……グハッ」
荷馬車に繋がれ、荷物を運ばされていた子供を足蹴にし、高笑いをしていた男の喉に矢が突き刺さった。
「山向こうの村を襲った連中だな? その戦利品を俺達にも分けてもらおうか……」
「うわぁ、山賊だ!」
「人攫いに賊呼ばわりされる筋合いはねぇ、やっちまえ!!」
「うるせぇぞ!!」
突然、木の上から男の怒号が飛び、盗賊同士の獲物の奪い合いの足を止めさせた。
「人がせっかく気持ちよく寝ていたのに、空きっ腹に響くだろう、ギャーギャー喚くなら、他所に行け!」
「何だと! 構う事はねぇ、こいつもまとめてやっちまえ!!」
「まったく、どうしてこうも、短絡的な思考何だか……」
――餓鬼魂顕現!
……始末できるのはいいけど、これで倒すと、食えそうなものは何も残ってないんだよな。馬まで食っちまいやがる……。
「まーいいか、次の村まで行けば、何か食えるだろう……」
何気なく見た馬車の残骸がゴソゴソと、動いていた。
その下から、子供が一人顔を出す。
あいつは食われなかったのか……よかったな子供。……まぁ、俺には関係ないか。
村に向かって歩き出す五十鈴に、がれきの下からはい出した子供がトコトコと駆け寄って来る。
「助けてくれて、ありがとう。おじさん」
「おじさんじゃねぇ、俺は五十鈴だ。別に助けた訳でも無いんだがな……」
「わたしは『すづ』だよ! 一緒だね。えへへ……」
……何が一緒なんだか。




