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飯喰う前に、世界を救え!  作者: 海土竜
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豪華な食事を喰らう

 朝目を覚ますと、隣ですづが寝ぼけながら寝袋の端を噛んでいた。

 それは、タオルケットの端を噛みながら眠る子供の様……ではなく、さながら、お互いの体を飲み込もうとする肉食獣の死闘の後のように見えた。


 五十鈴は気分を変えようと、軽く伸びをしてから、皆に声を掛ける。


「さぁ、朝だぞ、皆出発するぞ」


「しかし、シトラス領まで行くとなると、何か乗り物があったほうがいいね」


「乗り物か……、近くの町で手に入れる事にするか」


 森を抜け街道を歩くと、程なく小さな宿場町に辿り着く。

 宿でみんなが休んでいる間に旅支度を整えようとした五十鈴であったが、意気消沈して宿に戻る事になった。


「馬車が高けぇ……。とても買えるもんじゃなかった……」


「旅には必需品だから、乗り物は高いよね」


「どうすんだよ、そんな金ないぞ!」


「稼ぐしかないね。……そうだ、トンジールをあと数匹捕まえて、肉料理を売るのはどうだい?」


「……いや、無理だろ、一匹捕まえるので死にかけたんだぞ!」


「お金があればいいのですか?」


「まぁ、そうなんだが……」


「それでしたら私に任せてください、心当たりがあります」


 クリスは自信に満ちた表情でそう言うと、急いで部屋を飛び出して行った。


 屋敷を追い出されたとはいえ領主の娘、もしかしたら金を用意できるのかもしれない。

 しかし、彼女だけに頼る訳にも……。


「何とか、金を稼ぐ方法を考えないと……。おや? すづは何処に行った?」


「今、クリスにくっ付いて出かけて行ったよ」


「随分懐いているのだな、まぁいいか、今のうち町を見て回って来るか」


 五十鈴は簡単に大金を稼げる方法はないものかと思案しながら、町を歩いていると、広場で座っている大きな筆を担いだ男の姿が目に留まった。


「お前は一筆! こんな所で何しているんだ? 酷い怪我じゃないか」


「おっ、誰かと思えば、五十鈴さんか。いや、森で野宿していたら、巨大な獣に跳ね飛ばされてな……」


「ほぅ、それで、今度は町で野宿なのか?」


「違うよ、俺はここで似顔絵を描いて商売をしているんだ。暇なら一枚どうだい?」


「似顔絵なんて描けたのか? でも、いやだな、お前に描かれたら消えるんじゃないのか?」


「消えないよ、ちゃんと絵も描けるし、それに、あの墨は高いから、なんにでも使う訳には……」


「買ってたのか! てっきり必殺技だから秘伝の製法とかある物かと思ってたんだが」


「俺だって色々と忙しいんだ、山に籠って墨作るくらいなら、そこの画材屋で……、おっと、いらっしゃい」


 一筆は客の相手をし始めた。

 しばらくその光景を眺めていたが、似顔絵描きは意外と繁盛している様で、次々と客の注文にこたえている。

 忙しそうな一筆に、声もかけずこっそりその場を後にした五十鈴であったが、こんな普段何をやっているのか分からん奴でもちゃんと金を稼いでいた事に、焦りを感じていた。


「うーむ、なるほど、筆で戦うから似顔絵描きか、ならば俺も餓鬼魂を使って何か出来るか……? いや、出てくると手当たり次第食べてしまうだけだからな、町の人間を食ってしまったら……それならば、いっその事、餓鬼魂の肉料理を……そんな物を食えるのは、すづくらいか……」


 結局、この世界の事を何もわかっていない五十鈴に、よい手段が思い浮かぶはずもなく、街をぶらぶらうろいついただけの結果になったしまった。

 しかし、思い悩みながらも宿に戻ってみると、テーブルに乗り切らないほどの料理が用意されていた。


「おかえりなさい、五十鈴さん。ご飯ですよー」


 待ちきれない様子のすづが出迎えてくれたが、彼女らの計画性の無さに不安を覚えていた。


「いただきます!」


「どうしたんだ、こんなに沢山。少しでも節約しないというのに」


「モグモグ……前金を、たくさん、もらったのです……モグモグ……」


「前金?」


 口に料理を詰め込んだすづに変わってクリスが話を繋いだ。


「はい、この町の有力者に話を聞いてもらいに行くと、ちょうど最近も魔物の増加から、町を守るために防護壁を作る計画が頓挫したままになっていたので、その仕事を引き受けてきました」


「ほうほう、それの前金か…………って、町を囲う壁何てどうやって作るんだ!」


「大丈夫です、屋敷の庭に壁を建てているのを以前見たことがあります」


 ダメだ、お嬢様感覚だった……今更金を返してこいと言っても既にかなりの金額を使っていそうだし。

 こうなったら、何が何でも作ってしまわなければ……。

 材料の手配に、人工の確保……それよりも、一体どんなものを作ればいいのだ?


 一人思い悩んで居た五十鈴は、折角の豪華な食事も喉を通らなかった。

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