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 ケイトが自宅に帰ると邸内はざわついていた。

「何?なんの騒ぎ?」

鞄を受け取った侍女に聞くと、メラニーと両親が話し合っているらしい。

(今日は公爵家に行かなきゃいけないのに何を争ってるんだか)

ケイトは自分の部屋にもどって着替えるとメラニーたちのいる部屋に行ってみることにした。


そっと扉を開けると、メラニーが大声で騒いでいるのを両親がなだめているようだった。

「あ、お姉さま~」

ケイトに気がついたメラニーがこちらに向かってくるといきなり抱きついた。

「メラニー?」

「お姉さま、私、今日は公爵家に行きたくないの~」

「どうして?」

「だって~」

そう言ってグズグズと泣くので要領をえない。

「何があったんですか?」

両親に聞けば、両親はそろってため息をついて座るように促した。


抱きつくメラニーをなだめて両親の前にすわると、両親は困ったように眉を下げた。

「メラニーが最近ずっと公爵邸に行かずにさぼっていたでしょう?

そのことについて今日公爵家に話をしに行くのが嫌だというのよ」

「格上の公爵家に対してそんな失礼をしたのだから、謝罪に行くのがあたりまえだろう?

それなのにメラニーはいかないとわがままを言うんだよ」

困ったもんだ、と父親はため息をついている。

「メラニーどうして行きたくないの?」

「だって~、絶対叱られるから~」

「叱られるようなことをしたの?」

「してない、と思う・・・」

「してないと思うのに叱られると思うの?」

「うぅ・・・」

メラニーはまただんまりに戻ってしまった。


「メラニー、いい加減にしなさい、そんな我がままばかりが通じるわけないでしょう?」

母親の言葉にメラニーはまたぎゅうっとケイトに抱きついた。

「お姉さま、助けて~」

ケイトはそう言われるといつもメラニーをかばってきた。

たとえ自分が文句を言われることになっても。

だが、今のケイトはメラニーを心から助けたいと思えなかった。

「無理よ、メラニー」

「え?お姉さま?」

「無理だって言ってるの、婚約を受けたのはメラニーでしょ?

公爵家の教育を受けなきゃいけないこともわかっていたのでしょ?」

「知らない、そんなの知らなかった」

「だけど、公爵家はきちんと話したはずよ?

きちんと契約にもなっているはず、ね?お父様」

「ああ、婚約を結ぶ際にメラニーにもきちんと説明をしたぞ。

公爵家の用意した教師について高位貴族のマナーを学ぶことと、婚約期間中に公爵夫人教育をきちんと受けること、これは必須事項だとな」

「知らない、聞いてないわ」

「そんなわけあるか、説明を聞かせた上でどうするか決めてサインをしなさいといっただろう」

「そうよ、お勉強が嫌いなメラニーだからよく考えなさいとも言ったわ」

両親から言われ、メラニーはまただんまりだ。

「「メラニー!!」」


「うるさいうるさいうるさ~い!!」

突然メラニーが立ち上がって叫び始めた。

「め、メラニー?」

「お父様もお母様もうるさいのよっ!!

私はこんなに可愛いんだから勉強なんてしなくても立派な公爵夫人になれるのよ!!

それなのに、公爵夫人もジェームス様もちっとも私を褒めてくれないし。

ジェームズ様はこんな可愛い婚約者がいるのに何もプレゼントしてくれないし。

花とかカードなんていらないのよ!!

公爵家ならもっと高いドレスとか宝石をかってくれてもいいじゃない!!

遠回しに言っても全然買ってくれないし!!

あんなにケチだと思わなかったわ!!」

ふーふーと息を荒げているメラニーを三人は驚いてみていた。


「だから、ちょっとは私の事を心配させようと思ってお姉さまに頼んだのに・・・」

「メラニー?どういうこと?」

「お姉さまったらいつも私のいう事なんでも信じるんだもの」

「え?だって、暴力を受けたって・・・あざだってあったし・・」

「あんなの遊んでるときにちょっとぶつけちゃっただけよ。

それなのにすっかり信じちゃって、しっかり協力してくれるんだもん

お姉さまって本当に単純で扱いやすいわ~」

そう言ってメラニーはクスクスと笑った。

ケイトは自分の足元がガラガラと崩れていく感覚がして、目の前がジワリとにじんだ。

バシンと音がして、メラニーが倒れたと同時にケイトは何か温かいものに包まれた。

「?」

「本当に根性が悪いんだな、胸糞悪い」

そう言ってメラニーを睨むのはジェームスだ。

「ハ、ハンター公爵令息様?」

「いっただろう? 末の妹は外面はいいが中身は最悪だって」

兄の声も聞こえてくる。

「あの~?」

「お前は何も悪くない、お前はいい奴だからな」

戸惑うケイトにジェームスはにこりと微笑んだ。



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