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木の上のケイトと目があったジェームスはぷはっと笑った。
「ケイト嬢、なにしてるんだ?」
メラニーたちの会話を聞こうと体をなるべく下に向けていたからなのか、ケイトの顔は葉の陰から出てしまっていた。
「あの~木に登ってますね」
「確かに、ちょっと待ってろ」
そう言ってジェームスもするすると木に登ってくるではないか。
(なんで登ってくるんだよ~、降りられない~)
そして、ジェームスはちゃっかりとケイトの横に腰を降ろした。
「二人で座っても大丈夫そうだな」
「カタイキだそうですから」
「そうみたいだな、なあ、お前、妹の為にここに隠れてたのか?」
「いえいえ、単に木に登っていたら騒ぎが起こったってところです。まったくの偶然です」
「ま、お前がそういうならそうなんだろう」
(あれ?あっさり信じてくれるんだ)
しばらくはどちらも黙ったまま座っていた。
「なあ」
「はい?」
「どうしてメラニー嬢は俺を避けるんだ?」
(暴力ふるうからでしょ~が、って言いたいんだけど、なんかメラニーの態度が変だったし)
もやもやした気分のケイトはさあ、と返事をした。
「そもそもさ、俺が学園で落とした書類をうちまでわざわざ届けてくれたんだよ」
「そんな事が」
「普通は教師に渡すか、生徒会で誰かに預けるとかするんじゃないのか?と思うんだが。
まあ、そこにたまたま早く帰っていた父がいてな、メラニーを気に入ってしまったんだ」
「まあ、メラニーは可愛いですからね」
「うん、まあそこは置いといて」
「置いとくんですか?」
「それで、父が勝手に婚約の打診をしてしまったんだ」
「あれ?学園でメラニーを助けてくれたんじゃないんですか?」
「助けた?あ~、なんか学園で迷ったとか言ってた時の事かな?」
「迷った?学園で?」
「そう、だから毎朝登校したら教室まで送っていってただろう?」
「へ!あれ迷子にならないためだったんですか?」
「ああ、また迷ったらいけないと思ってな」
(何つーか、この人、いい人過ぎん?)
改めてケイトはジェームスをじっと見つめてしまった。
「俺はさ、父が決めた婚約だったけど、メラニーには丁寧に接していたつもりだったんだがな」
「え~と、そこに愛は?」
ケイトの質問にジェームスはぶふぅとふきだした。
「あはははは、愛か、まだ俺にはわからないな。
わかるほどメラニーと会話できていなかったし」
「でも、教室に行くまでの間とか、公爵邸に行くときの馬車の中とかで話したりできたのでは?」
「メラニーとの会話は俺にはよくわからなかったんだよ。
どこかの店のドレスが素敵だから作りたいとか、宝石の店でこんなものが買いたいとか、
後は、よく知らない令嬢が意地悪を言ってきたとか、何とか」
メラニーらしいわ、というのがケイトの感想だった。
メラニーの興味はドレス、宝石。
それも自分の為に何が似合うかどうかだけ。
領地の話や領地の話をすれば、 つまんない という。
学園に入る前にあった茶会でも、他の令嬢とはうまく話ができず、いつもケイトが話題を振ってあげていた。
この間一緒にお茶をのんだ時のジェームスの話題は豊富で、メラニーとは合わないだろうな、という事がジェームスの言葉ではっきりとわかった気がした。




