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「ねえ、ケイト、メラニーちゃん大丈夫?」
「大丈夫って身体はすっかり元気だよ」
「そうじゃなくて、令息たちを侍らせてるって話よ」
「なに?それ」
「知らないの?」
「うん、まったく」
ケイトがそう答えると友人たちははぁ~っとため息をついた。
「あのね、メラニーちゃんが休学から戻ってきてから、ずっと数人の令息たちが側にいるのよ」
「毎朝違う令息の馬車で通学してるのも知らないの?」
「え?はぁ???ぜんっぜん知らないってば、毎朝?違う人と?」
「そうよ、始めは目立たなかったんだけど、取り巻き君たちが朝からメラニーちゃんを待つようになってからは結構噂になってるのに、本当に気がつかなかったの?」
「うん、朝は私の方が先に出るように言われてたから・・・」
「ケイト、あんた鈍いにもほどがあるわよ」
「でも、メラニーはただの友達だって言ってたし」
「それを信じてるのはあんたくらいよ」
「うう」
「前から言ってたでしょ?」
「言ってたっけ?」
「令息たちが声をかけてくるからってケイトが一生懸命かばってた時期よ」
(そう言えばそんな事言われてたかも・・・)
「ケイトは一生懸命メラニーちゃんを助けてたけど、メラニーちゃんはね、
『姉がきつい事を言ってごめんなさい。姉は本当は優しい人なんですけど・・・』
とか言ってその後そいつとお茶したりしてたのよ」
「それにね、私の妹が同じ学年なんだけど、メラニーちゃん自分から令息たちに声かけてたそうよ」
「嘘っ!」
「本当」
「私の従弟も声かけられたって言ってたわあ」
「私の従妹も見たって」
「『私、病弱でお友達がいないんです。良ければお友達になってくれませんか?』だっけ?」
「後ね、『姉が厳しいんですぅ、私、姉に優しくされたい』もセットだそうよ」
ケイトは頭を殴られたような衝撃を受けた。
「そんな・・・メラニーが・・・」
友人たちは何度もこの話をしようとしたらしいのだが、メラニーを守ることに必死なケイトの耳には届いていなかった。
友人たちの言葉にショックを受けたケイトは、どんな顔をしてメラニーに会えばいいのかわからなくなってしまった。
今日は両親がメラニーを連れて公爵邸に行くと言っていた。
おそらく公爵邸に行かなかった事をお詫びするためだろう。
どうしたらいいのかわからず、とりあえず温室に行ってみることにした。
(花でも見たら気分が晴れるかもしれないし)
そう思って温室に行くと、見た事のない大木があった。
「こんな木あったっけ?」
木に書かれた札を読むと、隣国から寄贈された固いのが特徴のカタイキだと書いてある。
何となく、本当に何となくケイトはその木に登っていた。
葉が茂っていて、ケイトのいる場所をうまく隠してくれている。
「なんで登ったのかしら?」
ケイトにもわからない。
だが、温室の程よい温度と湿度にケイトは眠ってしまった。
「ん?」
なんだか騒がしい。
もしかして木に登った事が見つかった?令嬢としての恥だ!と思ったが、どうやらそうではないようだ。
「あれはメラニーと取り巻き君たち?」
メラニーを守るようにして令息たちが前に出て両手を広げている。
どうやら誰かからメラニーを守っているようだ。
「ハンター様!」
驚きすぎて木から落ちそうになってしまった。
「お前たち、何の真似だ?」
「メラニーちゃんに近寄るな」「メラニーちゃんが嫌がってるのに無理やり婚約したんだろう?」
「いつもメラニーちゃんを束縛してひどい奴だ」「メラニーちゃんが怯えてるじゃないか」
取り巻き君たちは口々にそう言ってジェームスを責めている。
「どういう意味だ?俺が無理やり婚約した?」
「そうだ!公爵家の権力を使って汚い奴だ」「ちょっと顔がいいからってメラニーちゃんに付きまとうな」「そうだ、ちょっと頭がよくて生徒会だからって威張りやがって」
(最後のセリフはメラニー関係なくない?)
木から落ちそうになった事で降りるタイミングを逃してしまったケイトは黙って成り行きを見ているしかなかった。
当のメラニーはぶるぶると震えながら令息たちの後ろにいるだけだった。
(暴力や暴言を受けていたっていうし、仕方ないのかな、このまま婚約解消ってハンター様から言ってくれたらいいんだけどな)
ケイトは木の上からそう思ってジェームスを見ていた。




