エピローグ 戻ってきた日常 後編
今日のリビングは満員のようだ。
ざわめきの中、アイスケはトボトボとちゃぶ台の方へ向かった。
「どうしたのアイちゃん?」
「あ、新しい家族が…………死んだ」
タイヤを片手に、ポツリと呟く。
半分は情によるもの、もう半分は金銭的損失による悔しさが胸を痛めて止まない。
そんな放心状態の弟に兄は朗らかに笑った。
「大丈夫だよ。また新しいの買おう」
「その言葉は呪いだーっ! 悪魔どもーっ! おぞましい殺戮を繰り返していいのかーっ!?」
「うっさいアイスケ。アンタも悪魔でしょ。さっさと食べなさいよ、遅刻するわよ?」
「ううっ……うっ………」
姉に急かされ、泣く泣くちゃぶ台の上のフレンチトーストにがぶりつく。
「あっつ!」
出来立ての熱さに、口を開いてハフハフさせた。
でも、冷えた心に沁み渡るほどの優しい甘さと温かさだ。
「アイスケ! 泣きながら食べるんじゃありません! せっかくのご飯が不味くなるでしょ!」
エプロン姿でトレイを抱えてやって来たベリーにピシャリと怒られた。
「はい、コーヒー淹れたから飲みなさい」
膝をついて、ちゃぶ台を囲む兄弟たちの前にそれぞれのマグカップを置いた。
現在朝食タイムに入ってるのは、四つ子に、双子、ラムの七人。
「ベリーお兄ちゃん! ユメの分牛乳入れた〜?」
「たっぷり入れてますよ、ほら」
「ねぇ、私のは……」
「はいはい、ココちゃんのは砂糖抜きにしてますから」
「ベリー兄のぼにゅーはぁ〜!?」
「入ってませんし出ません! あっ、コウちゃんもっと伸ばして食べなさい! 溢れちゃうでしょ! ほらユメちゃんも! ちゃんと噛んで食べなさい! 口に詰め込みすぎないっ!」
ベリーは母親同然に弟妹たちに目線を配って声をかける。
ラムはコーヒーを一口飲むと、満悦そうに笑った。
「美味しい…………兄さんみたいに、優しい味がするね」
「おいさっきその兄さんに毒───いだぁっ!」
思いっ切り脛を蹴られた。
きょとんと首を傾げるベリーに、「何でもないよ」とラムはお得意の愛想笑いを張り付ける。
恐るべし、次男。
カシャ! カシャ! カシャ! カシャ!
ちまちまとフレンチトーストを口に入れる中、やかましいほどのシャッター音が鳴りまくる。
「もぐもぐしてるアイちゃんかわいいいいいいいい!! ねえねえ! 目線ちょうだいマイハニ〜!!」
「うるせーわ!! 食事中にカシャカシャすんな!! 落ち着いて食えねーだろ!!」
「怒ってるアイちゃんもかわいいいいいいい!!」
「末期だわこいつ………」
「ねえねえ、帰ったらどのコスプレする?」
「どのお菓子食べる? みたいなノリで聞くな!! 俺は役者志望で色気に磨きをかけてるだけあって、女装の趣味はねえ!!」
「やっぱりアイちゃんはロリータ風が似合うよね〜」
「聞けえええっ!」
気味が悪いほどマトモな会話が成り立たない。
変態兄貴はまた連写モードに入ってるし。
他の兄弟は何食わぬ顔で食べているし。
もう一日のスタートの時点で神経が麻痺しそうだ。
アイスケはちらりとテレビの方へ目にやった。
豪快に足を伸ばして座るバニラと、その膝を枕にして寝っ転がるミント。
凸凹コンビは朝っぱらからゲームに夢中だ。
「おいクソニート!! テメェ勝手にポーション使うんじゃねーよ!! ラスボスまで持たねえだろ!!」
「えっ、でも使わないと俺死ぬじゃん」
「死ねよ。俺一人でクリアすっから」
「えっ、ひどい。協力プレイでしょ?」
「ああ、お前シールド持ちだからな。そこだけ生かせよ」
「ひどすぎるっ。バニちゃんはお兄ちゃんを盾にして一人報酬を掻っ攫おうっていうの?」
「ああ」
「ひどいひどい! 最初に言ったのに! 二人でトロフィー取ろうって! ニンニクマシマシラーメントロフィー取ろうって言った! バニちゃん言った!」
「おいコラ暴れんな!! 画面見えねー!!」
「もうどうせ死ぬなら道連れにしてやるー!」
「やめろ! テメェだけ死ねっ! 弟の盾になって死ねっ! あっくそこっちにまでバナナの皮飛ばしてんじゃねーわざとだろボケェ!!」
なぜあれほど言い争い画面上で殺し合ってるのに、膝枕だけは崩さずピッタリくっついているのだろう。
あの二人の距離感は未だに謎だ。
「今日休みなのか………いいなぁ………」
ただ、それだけ羨ましく思う。
「何かさぁ………フウちゃんのチーズ俺のと違くね?」
コウガがフウガの口にするものをじーっと眺めながら、疑問を投げた。
双子のフレンチトーストはいつもチーズがのっかっている。二人の大好物故だ。
「そりゃ、お前のはスライスチーズで、俺のはとろけるチーズだからな」
フウガはたら〜っ、と口からチーズを垂らしながらドヤ顔で答える。
「はぁ!? 何だそれ!! ずりぃ!! 何でフウちゃんだけぇ!?」
「お前にスライスでいいかって聞いたら、うんって言ったろーが!!」
「だってぇ!! スライスってもっとネバネバドロドロしてっだろ!? 何か違ぇじゃんこれ!? ペラッペラじゃん!!」
「お前スライムと間違えたんじゃねーの?」
「そう!! それ!!」
「アホ。今さら気付いても遅ぇよ。大人しく冷蔵庫の残りモンのスライス食ってろ」
「ひっでぇ!! いらねえもん俺に押し付けやがったなぁ!?」
「ハッ」
たらら〜っ、と口からターザンロープみたいなチーズの糸を引かせて、フウガはせせら笑った。
ビキリ、とコウガのこめかみの血管が怒張する。
「ふざけんな!! 俺もとろけてーよ!! ネバネバドロドロしてぇー!! はぐっ!」
コウガは怒りのままに兄のチーズに食らいつく。
「あっ、てめゴラァ!!」
そのハイエナのように貪る口端に、フウガは拳を練り込ませた。
「イッデェ!! やりやがったなぁ!!」
尻をついて切れた唇を押さえながら、コウガは上目で睨んだ。
「ちょっと二人ともやめなさい………たかがチーズでしょ」
「チーズはたかがじゃねー!!」
「そうだ!! 食いモンの頂点に立つ神なる乳だ!!」
ラムの制止も一斉に散らし、憤怒に顔筋を引き締める双子は悪魔の姿に変貌した。
「とろける寄こせぇッ!!」
「黙れスライス野郎ッ!!」
喧嘩慣れした身軽い手つきで双子の殴り合いが勃発した。
先に兄が右頬を打てば弟は左頬を打ち返し、膝を折った兄がボディーフックを食らわせると、斜めに傾いた弟は構えてボディージャブで反撃する。
皮肉にも攻撃の息が合いすぎている。
双子ミラクルは相打ちの際も発揮するのか。
いやそんなことよりも。
「ストップ! ストーップ!!」
「やめなさいよ! コーヒーが美味しく飲めないでしょ」
「そういう問題じゃなくて!!」
アイスケの声も露ほど耳に入らず、まさに野獣の如く吠えてコウガはちゃぶ台を蹴り上げた。
「ぎゃあっ!」
フレンチトーストもコーヒーもひっくり返って絨毯にぶちまけた。
フウガも半狂乱になったように牙を剥いて、飛んできたちゃぶ台に頭突きを食らわし、たかが木の板などツノでかち割った。
「八十四代目のちゃぶ台があああああああああっ!!」
アイスケは断末魔の如く絶叫する。
昨日買ったばかりの我が家の物たちが、悪魔兄弟の有り余る凶猛さにその形を散らせていく。
頼むから、これ以上の仕打ちはやめてやってくれ! せめて外でやれ! そんなツッコみが入る余地もない。
そう困り果てた時だった。
「コウガ!! フウガ!! いい加減にしなさい!!」
エプロンを脱ぎ捨てたベリーが、烈火の如き叱咤を浴びせた。
双子は拳を握りながらもピタリと動きを止める。
「こんなに食べ物を粗末に扱って…………周りのことも考えずに怒りに任せて暴れるなんて、小さな子供がやることですよ!! もう二人とも高校生でしょう!!」
うっ、と双子は唸って、拳を緩めた。
「いいですか。完璧にしろとは言いません。でも、ほんの少しでいいですから、冷静さを持ちなさい。そうするだけで、一歩大人へと近づけたことですよ」
ベリーは母性溢れる眼差しを兄弟たちに向けた。
「お前たちも、今は子供でもかまいません。むしろ子供は子供らしく活発でいることが健康そのものです。ですが、いつか大人になった時………周りから誇りに思われるような、そんな悪魔でいてほしいんです。差別や偏見も跳ね返すような、誰もが誇れる大人に」
長男の教えに、兄弟たちは黙って聞いていた。
唯一騒がしいのは、ゲームに没頭する凸凹コンビの二人だが。
何だか久々に、我が家の母の言葉から大いに学んだ気がする。
(誇れる、大人か…………さすがベリー兄ちゃん)
ピーンポーン、とインターホンが鳴った。
「はいはーい」とベリーが駆け足で出る。
「ワ──────オッ!!」
突然、外国人のようなネイティブな発音で叫び始めたのて、ビクついた。
「な、なに?」
ニヤニヤといやらしい笑みを張り付けて母性も死んだ長男に、アイスケは少しげんなりとした。
何だろう。直感からか、非常に嫌な予感がする。
「十万かけた甲斐がありました〜あはっ」
「十万!?」
兄の手には一枚の白い封筒。
「ええ! ネットオークションで仲良くなったもえこちゃんからです〜!!」
(もえ、こ………!?)
その、悪寒が走るほどの響きは。
「最っ低。偉そうに説教垂れてといて、結局自分はタラシのくせに。何が誇れる大人よ」
「そーだそーだっ! 鏡でそのいらやしい顔を見てみろーっ!」
妹二人から罵られようが、今のベリーは封筒に釘付けだった。
うっとりと眺めながら、封を開ける。
「さぁカモーン!! もえこちゃんの巨乳ブロマイドと愛用のぱんつ!!」
パサリ、と床に落ちた、言葉の通り巨乳美女の写真と────うんこ柄のボクサーパンツがベリーの手にあった。
「は?」
いやらしい笑みが引きつって、フリーズする。
アイスケも瞬きを忘れて立ち尽くす。
(ハアハアモブおじさん…………)
あの文面から犯罪臭溢れる変態オヤジ。
(こ、こいつだったのか──────!!)
何という、気持ち悪いほど偶然で馬鹿げた話。
つまり、あの十万は儲けたというより我が家の貯金が一周しただけ。
盛りすぎもえこ(元山中さん)の顔ももう見ることもないと思っていたが、こんな形で再会するとは。
そして、うんこづくしのパンツを、生気の欠けた虚な眼差しで眺めるベリーをどう見てやったらいいのか分からない。
「あーっ! それ俺のパンツじゃーん!! 何でそこにあんだよベリー兄!!」
コウガはびしっと指を差して、弾む足取りで駆け寄った。
「俺あれからずっとノーパンだったんだぞ? 今もスースーして気持ち悪ぃーよぉ!!」
(ずっとノーパン!?)
さらっと口にしたとんでもない爆弾発言にアイスケは身じろいだ。
大儲け計画の真っ只中から、あの屋敷の前で張り詰めた空気の中言い争った時も、病室のベッドで仲直りした時も、神樹ノ森で命懸けの戦いを繰り広げた時も、こいつは全部ノーパンだったというのか。
想像するだけで、感動の思い出が色々台無しになる。
「どういうことですか………コウガ」
ベリーは思い詰めたような顔をして、ガシッとコウガの肩を掴む。
「お前、ネカマだったんですか!?」
「んあ? ねかまぁ?」
「お金目当てでこんなことを!?」
「おー! 金ならめっちゃほしいー!!」
「お、お、お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!! こんな援交まがいなこと………二度とするんじゃありませんよ!! うっ、ううぅ〜………コウちゃんがネカマ………」
「え? 何で兄泣いてんの? 玉ねぎ切った?」
何だ、この茶番劇は。
コウガに至っては完全な被害者だが、買い取ったお前の方こそ問題があるだろ、とアイスケはベリーをジト目で見た。
(いや、事の発端は俺の悪巧みだけど)
「えーバニちゃんその技すごい〜」
(お前が一番の元凶だからなッ!!)
後ろで呑気に寝っ転がるミントを睨みつけた。
チラチラこっちを見ては吹き出してるくせに、他人事のように背中を向けている。
何ともずるさとずぼらを兼ね備えた悪魔だ。
「まぁ、借金も返せたし…………いっか」
そう自分に宥めるように言った。
大きな損害の穴は埋まった。
一定の貯金も貯まったことだ。
これで札束の蜃気楼に惑わされる夢も当分見ることはない。
ピーンポーン。今日で二度目のインターホンが鳴る。
「あ、バニちゃん。アレ届いたんじゃない?」
「ああ」
コントローラーを床に置いて立ち上がったバニラは、珍しく玄関まで出て行ったようだ。
ゲームをしている時はなかなか重い腰を上げることない大悪魔様が、一体どうしたものか。
そう疑問に思っていると、シュッ! と残像を見せたあとに床に足をついた。
ドサッ! と棚の高さと同じくらいの巨大な段ボールが放られる。
空間移動を駆使して移動するほど重量のある荷物。
「なに、それ…………?」
アイスケの経験と本能が、震えるほど嫌な予感を告げていた。
「VRゲーム、何でも異世界だ」
バニラはちょっと可愛い決め顔と決め台詞で、段ボールからゴーグルとコントローラーを取って両手に持つ。
「舞台はバトル、冒険、恋愛、何でもありの異世界。ガキの三輪車に轢かれて死んだ社畜サラリマーンが転生して異世界無双すんだよ」
「三輪車に轢かれて死ぬの!?」
「まぁ最初の設定はベタだが」
「三輪車ベタかな?」
「爽快感溢れるアクションに広大かつ自由な世界観。何よりヒロインの顔も悪くない」
「ケモミミ美少女とかいますか!?」
「巨乳は? 巨乳は?」
「興奮すんなスケベコンビ!!」
「いるに決まってんだろ。ハーレムだ」
「マジで何でもありだな!!」
バニラを中心にして、一家はワイワイと盛り上がり始める。
この華やぐ空気を壊したくはないが、アイスケはおそるおそる、飲み込むにはもどかしすぎる疑問を投げた。
「あー今回は………何か、でっかいランニングマシンみたいなのはなし?」
「ねーよ。ゴーグルとコントローラーだけだ。ありゃ場所取るからな」
じゃあ何であの時買ったのか。
「えっと………じゃあそのでかい箱には他に何か………あるの?」
「ああ」
バニラは軽々しく段ボールを持ち上げ、バサバサと下に向けて揺さぶった。
床に散らばる、大量のゴーグル、コントローラー、ゲームソフト。
「やっぱゲームといやぁ対戦だろ。十人分買ってきた」
「何で!?」
「何でって…………仮想世界で全員でボコり合えるし限定アイテム交換できるし、ヒロインごちゃ混ぜの修羅場も見れんだぞ」
「何でもありすぎるっ!」
「へぇ、面白そうね。着せ替えとかできるの?」
「顔面から整形できるぞ」
「わーい! 整形整形〜!! ユメもやる〜!」
「こらこら、学校忘れちゃダメですよ」
「って言いながら兄さんソワソワしてんじゃん」
「えへへ………ケモミミ美少女が楽しみで………」
兄姉たちは好奇心を露わにしている。
双子もいつの間にかソフトのパッケージをガン見しているし。
ぽんぽん、ユウキが頭を撫でてきた。
「心配しないでアイちゃん。俺はケモミミと浮気なんてしないよ?」
「いやそこの心配は毛頭ないけど…………」
「んん? アイちゃんは浮気したいのかなぁ?」
「いや違う違う! 顔怖いからやめろ!! っていうか…………」
十人分のゲームの山を見ては、うっ、と眩暈がした。
「貯金崩れたじゃああああああああんっ!!」
札束の蜃気楼の夢は、もうしばらく続きそうだ。
はあ、と深いため息をつく。
朝から心臓に悪いアクシデントのぶっ続け。
でも、これが我が家の日常だ。
笑って、怒って、泣いて、また笑って、こんなにも表情筋は忙しい。
家もぐちゃぐちゃ。無駄だらけ。バカの繰り返し。
でもそれが、家族ってもんだから。
このウザイほど近すぎる愛が、家族の特権だから。
アイスケは、他では一生見られない、我が家の景色を目に焼き付けた。
「!」
手首のスマートウォッチが振動する。
緑の波面に浮かび上がる文字を、スワイプしながら閲覧すると、ハッと息を呑んだ。
「至急依頼だ!!」
兄弟たちはゴーグルを床に置いて、一斉に向き直る。
「大変だ…………! 山中さん家の三匹の猫が、散歩中に肉球マニアの男に攫われたってよ!!」
「肉球マニアってなに?」
「近所でも噂の男らしい…………あらゆる動物の肉球をモミモミし、朱肉をつけて手形のコレクションを集めているっていう自称自宅警備員の怪しい男だって!」
「無職でしょ」
「俺と一緒だ〜」
「それ大丈夫じゃね?」
「いいやダメだ!! 人様の大事なペットが攫われたんだぞ!! ぜってー見過ごせねー!!」
アイスケは大きく手を振りかぶった。
「ファミリーズ全員出動!! 肉球マニアの男を探して殿様たちを奪還するぞ!!」
「えっ、学校はどうするの?」
「優先すべきは至急依頼!!」
「俺仕事なんだけど………」
「僕も………」
「至急依頼!!」
兄姉たちにガツンと喝を入れた。
すでに燃え始めた瞳の炎は、敵を焼き尽くすまで消えないのだから。
へっ、とアイスケは挑発的な笑みを家族に向ける。
「肉球マニアだか自宅警備員だか知らねえが、俺たちを敵に回そうってヤツがいんだぞ? なぁどう思うよ?」
ハッ! と十人の悪魔が鼻で笑う。
「「「「「「「「「「一兆年早いわ!!」」」」」」」」」」
揃いも揃った台詞に、う〜っ! とアイスケの体が歓喜に疼いて、駆け出した。
末っ子を先頭に、兄姉たちも後に続く。
「よーしっ! しゅっぱ〜つ!!」
今日もまた、ダークなヒーローが町で暴れ回る。
毎日が違う朝で、何が待っているかなんて、きっと神様も知らない未来だろうけど。
さぁ、黒い血が漲るこの体で、どんな壁だって壊してやろう。
アイスケは門から出たところで、駆ける足を止めた。
春の風が吹いて、空の深い青さを見上げた時、一瞬だけ、鼓動が強く波打った気がした。
「なぁ、兄ちゃん姉ちゃん!!」
家族の方へと振り返る。
にっしっし〜、と息を漏らして、高鳴る胸から湧き上がる、まだ名付けたばかりの未知なる感情が、十の眼差しを背負った、響き始めたばかりの運命の音が、熱を抱いて口から飛び出た。
「生まれ変わったって、愛してるぜ!!」
第一章を、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
読んでくださったすべての方々に、感謝申し上げます。
もしよろしければ、ブックマーク、下の星の評価ボタンを押していただけると励みになります。




