第七十四話 四つ子コンビネーション
「ラーラーラー ラララー」
アイスケの歌声が風になびいて、霧を晴らすように青瘴気を祓う。
そこからはもう、猪突猛進。
先頭のユウキが巨大ブーメランを放ち、続いてココロの鉄拳が暴れ、ユメカは血を噴き、後ろの凛が大太刀を振り回す。
襲いくる魔獣の群れに、一分の隙もなく反撃を繰り出した。
兄に抱えられたアイスケは、絵に描いたようなお姫様ポジションに若干こそばゆさを感じるが、もうなりふり構っていられない。
世界を揺るがす運命のルーレットが、止まるまで。
タイムリミットは、あと十時間。
しかし、一回は、悪あがきしてみたいのだ。あくまで、ダークなヒーローなのだから。
「凛さん、悪いんだけど………一旦離れてくれる?」
「………何をする気だ?」
首を捻りつつも、凛は喬木の天辺まで飛び上がった。
「よしっ! 四つ子コンビネーションだ! 一気に仕留めるぞ!」
「えっ、今ぁ?」
「リーダー命令!」
「めんどくさ〜い!」
「リーダー命令っ!!」
「俺はアイちゃんに従うよっ!」
「ふん、しょうがないわねぇ!」
「いっくよぉ〜!!」
四つ子は声を弾ませ、顔を見合わせ頷き合った。
ココロがアイスケの手を引っ掴むと、ぐるぐると三回転したあとに、ハンマー投げの如く天高く飛ばした。ぴょんっ、とココロ自身もムササビの速さで木の上に飛び移る。
手の空いたユウキは入れ替わるようにユメカを抱きかかえて、神速で幾度も林を周回する。その腕から一筋のスライムが伸びて、大地に渦を描いた。黒く、粘着質な、毒々しい渦は、泥沼と化して。足場を固められた魔獣の群れは、格好の餌食となった。
ココロが木の上を乗り移ると同時に、残る獲物、空を舞う鳥を回転しながらアッパーし、枝に着地。また繰り返しアッパーし、踊るムササビのように木々を往復する。
魔獣の影を消し、すべて突き上げたところで、ココロは天に向かって叫んだ。
「アイスケッ! 待ち侘びてたあんたのターンよ!!」
青白い天の川を突き抜け、黒い夜の色と星の光に包まれたアイスケは、豪快に笑う。
「にっしゃぁ────────!!」
蒼く冷えた甘い空気を掻っ切り、打ち上げられた鳥たちに、天変地異も上回る強靭な尻尾ビンタでぶちのめした。
風が波打ち、夜空が焼ける。
獣は垂直に落下し、泥沼に漆黒の血が四散した。
「うわぁぁぁぁぁああああああっ────ほっ!」
絶叫しながら空から降り落ちるアイスケを、ムササビも超えた神速でユウキがキャッチする。
木の上から、四人の悪魔が目を紅く光らせ、いたずらに嗤っていた。
「………はい。えー、以上が、作、アイスケのアイスケによるアイスケのためのコンビネーションでございます」
凛は、怪訝そうに眉をひそめている。
「お前が出しゃばる意味は………?」
「主役は目立たないと死んじゃうんです」




