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第七十二話 限界突破
全身に巡る黒い血筋が、太く怒張して浮き出ている。
手足はもちろん、顔まで。下瞼に黒い線が引いて、大きなクマが広がっているように見えた。
真紅の瞳は、闇の中で妖しく瞬く。
一角の馬が捨て身で頭突きを繰り出した。
その、鉄の如く太いツノを、悪魔は人差し指一本で弾き────返した。
「!」
巨獣の群れの血が湧き肉が踊った。
悪魔らは、立ち尽くす。
足を地に張り付けたまま、その肉を爪で引き裂き、赤い血を黒く飲み込み、瘴気が集る掌で毛細管を掻きむしって心臓を握り潰す。
また片足だけ振り上げれば、巨獣の顎を天まで突き上げる。
またまた踵を振るい落とせば、巨獣の頭蓋骨を砕いて地の砂と共に散らした。
地を駆けることもなく、宙を飛ぶこともなく、野蛮な笑みを張り付け、魔王の子たちは、まるで蹴鞠で戯れている子供のよう────いや、蹴鞠を潰すことに快感を覚える子供のようだった。
「ディアボロスの限界突破………っ!」
少女が舌打ちし、歯噛みする。
魔力の極限を突破した、リミッターの解除。
悪魔学書ではこう記されている。
ディアボロスの限界突破とは、血の無限。
肉体の損傷を代償に、絶えることのない黒血を暴発。
その力は、かつて王一人で勇者一族を半数以上撃滅させた─────煌殺しの始まりとも言える。




