第二十五話 快晴で回生の朝
「全快、ですっ!」
東雲色に輝く朝日を浴びて、ユウキは爽やかな微笑みでガッツポーズを取る。
「さっすが兄ちゃん!! かっけー!」
古びたロボットのようなぎこちない動きの昨日とは、顔色も表情も打って変わって別人だ。これが本来の姿なのだが、昨日の今日でここまで完治するとは、悪魔の絶大な回復力はもはやバケモノ同然。それにラムの言った通り、バニラの加減もあったのだろう。この屋根を突き破ってワイルドすぎるソーラーハウスに建て替えた張本人は、朝早くに高層ビルの解体の依頼に行ってしまった。ビル以外までも解体しないかちょっぴり不安もあるが。
「全く、アンタたちのせいで昨日は凍え死ぬかと思ったわよ! 床は硬いし! 布団も毛布もないし!」
ココロがちょっと眠そうに目を半開きにして言う。
「だからココロちゃんと抱っこしながら寝たんだ〜! ココロちゃん寒い寒いってユメにしがみついてたの! 可愛かったなぁ〜」
「うっ、うううっさいユメカ! だっ、暖を取るためっ、仕方なくよっ! アンタなんか湯たんぽ代わりだしっ!!」
「ココロちゃんトイレに行くのも寒い〜怖い〜ついてきて〜って泣きそうに言うから、ユメとおてて繋いで行ったんだよねぇ〜? ぷるぷる震える子猫ちゃんみたいで、食べちゃいたいくらい可愛かっ──いだあぁっ!」
朝一番のココロの鉄拳が飛んだ。
「黙りなさいっての!! 実際アンタ寝ながらそこら中かじってきたのよバカ!! いい加減その噛みつき癖治しなさいよね!?」
「え〜、だって常にお腹が空いてて、口寂しいんだもん。だから無意識にガジガジしちゃうけど、ココロちゃんはいっちばん美味しいから病みつきになっちゃうの〜」
「アンタの場合ガジガジなんて可愛い表現じゃ済まないレベルだし………」
言いながら、ココロは自分の歯形だらけの手足をげんなりと見た。確かに、犬に噛まれたというより、狼に貪られたといってもいいほどの猛々しい噛み跡だ。人間だったら普通に致命傷だろう。
「ドワーフ大工に依頼したから、明後日には直るってベリー兄が言ってたよ?」
「えー………あそこに高いのに…………」
「仕方ないよアイちゃん。そうでもしないと、ココロの精神が持ちそうにないしね?」
ドワーフ大工とは、土属性の魔法を駆使する木造建築のスペシャリストだ。
全壊となった建物でも、住宅程度であれば半日で修復させてしまう驚異的な魔法技術は、その敏腕に相応な修理費用も不可欠だ。いや、実質的に言うと魔力消費の代価だろうか。
ちなみに月二、三回のペースで家を崩壊させる黒野家はかなりお世話になっている常連客で、こちら側としても日常生活を送るのに手放せないお友達だ。
家計が火の車だというのに、さらに痛い出費をかさんでしまった。こればかりはリーダーとして猛省だ。アイスケは己の頬を叩いて、眠たい顔を引き締める。
「よっしゃあ!! ファミリーズ四つ子組、今日も気合い入れて行くぞーっ!」
「「「「おー!! 誰でもいいからギブミーマネー!!」」」」
四つ子ミラクルは今日も絶好調だ。




