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ファミリーズ 〜魔王の子たち、ヒーローやってますが何か?〜  作者: 仲乃 斉希
第一章 ③悪魔の大儲け計画! 爆誕!
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第十三話 脱・借金!!

「これより!! 黒野家会議を始める!!」


 バン!! とボードに貼り付いた紙を叩いた。  


 兄姉たちは、ちゃぶ台を囲んで座っている。


 スマホをいじるやつ、うたた寝をするやつ、ゲームをするやつ、エロ本を見るやつ、フラスコにガラス棒をくるくるするやつ────


 ピキッと、アイスケのこめかみに黒い静脈が怒張した。


「聞けぇえええええい!!」


 末っ子の怒号に、兄姉たちはしぶしぶと顔をこちらに向けた。


「アイちゃ~ん、もう十時だよ? 眠い~寝ようよぉ~」


 ミントがあくび混じりに文句を零す。


「いいか! これは黒野家存続の危機に関わる重大会議だ!! 寝るな!! 寝たら死ぬと思え!!」


「すー、すー………」


「寝るなぁ!!」


 ちゃぶ台に突っ伏したミントに喝を入れた。


「アイちゃん………怪我したばかりなんだし、休んだ方がいいんじゃないかなぁ?」


 ユウキが憂色を浮かべて頭を撫でてくる。

 魔獣との激闘もあって、アイスケの体は包帯ぐるぐる巻き状態だ。


「あー、大丈夫。傷口ももうほぼ塞がってるから」


 悪魔の治癒力は人間の百倍だ。混血であっても、その力に変わりはないらしい。


「でも心配だよ。やっぱり横になった方が………」


「大丈夫だって!」


「こまめに消毒しないと、菌が入って熱が出ちゃうかも!」


「いやいや心配しすぎ」


「アイちゃん風邪引きやすいんだから」


「最近は引いてないし」


「部屋に行こうよ!」


「大丈夫だってばぁ!」


「俺がお医者さんになるから、アイちゃんはナース服のコスプレを………ハアハア」


「はーい会議を始めまーす!!」


 パンッと手を叩いて、いやらしい目つきの兄を視界からシャットダウンする。


 「黒野家会議」と書かれた一枚目の紙を捲った。


「まず、先月からいつも以上に暴走しまくった兄ちゃん姉ちゃんたちによって、我が家には大きな借金がある。その総額、何と三千万!!」


  バンバン! とボードの紙を二回叩いた。 


 三千万!! と赤い字で憎悪が滲み出るように殴り書きされている。


「返済期限は来月末まで!! もし支払われないとなると………」


 ぶるぶると震えた手で二枚目の紙を捲る。


「騎士団のめいにより、このマイホームが競売されることとなった!!」


 紙には、木陰で雨宿りする十人の絵がクレヨンで描かれていた。


「そんな!!」


「野宿しろって言うの!?」


「日光浴びたら死んじゃう」


「来月末まではキツすぎだろ!」


「ヘッタクソな絵だな」


「こくそしてやるーっ!」


 さすがの兄姉もこれには堰を切ったように抗議の声があがる。

 ヘタクソと罵った鬼畜王子は呑気に棒付きキャンディーを咥えているが。


「こんなことになるなんて………」


 どんっ、とちゃぶ台に手を置いて、ベリーの体は小刻みに震えていた。


「あんまりですよ!! 僕が何をしたっていうんですか!?」


「おっぱいビンゴをしたんだろーがッ!!」


「え、何? おっぱいビンゴって。コツとかあるの?」


「興味深々で聞くなラム兄ちゃんのムッツリが!!」


「おっぱいの柔らかさ、重さ、そして手に吸い付くようなフィット感か、はたまた手に収まりきれないほどのボリュームか。このジャッジは数多の経験と欲情によって身につくものなんですよ」


「でもさー、巨乳だったら触る価値あるけど、わざわざペチャパイをジャッジしたい欲情なんて湧かないよ」


「分かってませんねぇ、ラム! 手に収まるほどの未発達ないじらしさにも男心をくすぐるロマンがあるんですよ!」


「いや揉むなら絶対巨乳」


「ハイ下ネタ終わり!! 会議を続けます!!」


 スケベコンビの会話に強制的にシャッターをかけた。


「まぁ、野宿は冗談だけど、オンボロの狭いアパートで毎日おしくらまんじゅうして暮らすはめにはなりそうだな」


「え~、それもやだぁ~! がぶっ!」


「いっだぁ!!」


 ユメカがヤケになったのか、ココロの頭の天辺をかじった。


「……………」


 双子の弟、コウガがいつもに増してアホづらを浮かべているものだから、何となく不安がする。


「コウガ兄ちゃ~ん」


「あ~?」


「ここまで言ったこと、意味分かってる?」


「おう! もちろんだぜ!! これから家族みんなでおしくらまんじゅうしながらおっぱいビンゴすんだろ?」


「しねーよ!! どんなド変態でクレイジーな家族だよ!? つかうち男ばっかだし、女も二人ともぺったんこ…………あ」


 口に手を当て黙ったが、時すでに遅し。

 二人の姉が殺気と瘴気を振り撒いて、真っ赤に吊り上がった目でこちらを睨んでいる。


「待って、ごめん、今のナシ! ナシ!!」


 アイスケの懇願も虚しく。

 ユメカの牙とココロの拳が挟み撃ちした。


「ぎゃあああああああああああああ!!」


 リビングに小動物みたいな断末魔が響き渡った。





「えっ、と。会議を、続け、ます………」


 ボコボコに腫れた打撲痕とがっちり歯形の残った噛み跡だらけの体で、アイスケはよろよろと立ち上がった。


「ユメカ! ココロ! 可愛い弟に何てひどいことをするんだ!! 謝りなさい!!」


 ユウキの助けもあって、まだ軽傷で済んだ。この凶暴な姉二人からしては、まだ。

 ふん、とユメカとココロは鼻を鳴らして顔を背ける。反省の色など全くない。


「もういいよ兄ちゃん。俺も悪かったし……」


「ダメだよ、また怪我して………消毒しにいこう」


「いいってもう」


「ナース服コスプレ撮影しよう」


「欲望剥き出しじゃねーかテメェ!! 絶対するかっ!!」


 もう心身ともに疲れてきた。正直寝たい。ふかふかの布団の上で大の字になって寝転がりたい。


 だが、ここで引いてはまた兄姉たち(パーティーピーポー)の勝手放題になる。しまいには物件訳あり一文無しという、食うや食わずの極貧生活に十人揃って突撃である。

 一家を守るためにも自分が先陣を切らなくては! とアイスケは闘犬のように燃える目で奮い立った。


「確かに、普通に考えて一ヶ月半で三千万の返済はキツイかもしれない。みんなの不安も分かる」


 兄弟たちに視線を巡らせた。

 言ってしまえば元凶となったヤツらだけど、やっぱり家族の愛は呪いのようで、こんなにも憎たらしい分、とっても愛おしい。


「でも、俺たちは普通じゃない。そうだろ?」


 兄姉の視線がアイスケに集まる。


 三枚目の紙を潔く捲った。



「よって! これより大儲け計画を開始する!!」



 フッと、アイスケは勝気な笑みを零す。


 普通じゃない兄弟なら、普通じゃない挑戦だってやってみせる。

 いや、やり遂げてみせる。


「名前からして意味は分かりますが、具体的には?」


 ベリーが頬杖をつきながら聞いた。


「ファミリーズの力を、ぶっ放すんだよ」


 アイスケは口角をキュッと上げた。


「明日から、騎士の仕事が非番な限り全員に依頼に受けてもらう。年長組、双子、四つ子の三チームに分かれて、効率よく徹底的に仕事をこなす! 特に!!」


  にたぁ、と意地汚い笑みを浮かべ、


「金持ちの依頼人は大優先だ」


 わぁ、と兄姉は声を揃える。


「それと、節約、節電、節水もバッチリ忘れるな。もちろん無駄な買い物も禁止!」


「だってさ、バニちゃん」


「お前だよ!! シャンプーヘルメットなんて買いやがって!! くそぅめちゃめちゃ気持ちいいじゃねーかアレ!!」


 今日試しに使ってみたら、一瞬天国に飛んだかと思った。

 怒りと快感が渦巻いて、何だか複雑な気持ち。


「とにかく!! じゃんじゃん大儲けして来月末にまで絶対に脱・借金だ!!」


 びしっとアイスケは小さな指を高く突き上げた。


「ファミリーズの底力、見せてやろうぜ!!」





 と、意気込んだものの。


 アイスケは地味に厄介な問題を抱えていた。


 ヒマワリの髪飾り。

 あの、ひまりという女の子にとてもお似合いの髪飾りだ。

 その両方が、ポケットの中に紛れ込んでいたのだ。


(俺のポケットはブラックホールか?)


 本当に、自分の不運を恨むくらいだ。


(返さなきゃ、なぁ…………)


 だが、あの鬼の形相の世話係を思い出すと、背筋がぞくっとする。光の魔法の使い手だし、下手に近づけば殺されかねない。


(勇者の娘、かぁ)


 煌 ひまり。勇者の娘。頭の中でその言葉がずっと木霊して、何だか今日は眠れそうにない。

 初対面のはずなのに、沸々と湧き上がった懐かしい感情───世界を代表する有名人ならば、どこかで顔を知ることも十分あり得る話だろう。


「ムニャムニャ………おなかいっぱぁい」


「う、んん………バカユメカぁ」


(あははっ、寝言か)


 四枚の布団をくっつけて、四つ子は並んで寝ている。と言っても、今みたいに、ココロがユメカの足の下敷きになるなど、四人の寝相はお世辞でも褒められない。


(とりあえず、これはリュックにでも入れとくか。今は仕事に集中しねーと)


 布団から出ようとにじり寄ったところで、がしっと腰をつかまれる。


「え?」


 ユウキだった。目は瞑っているが、眠っているとは思えないほど腕の力が強すぎる。


「アイちゃん………どこへ行くの?」


「え、え」


「浮気は、許さないよ………」


「あ、ちょ」


「女狐め………生きたまま皮を剥いでやる」


 一気に冷や汗が滲み出る。


(寝言がリアルで怖いんですけど!)


 ギュッと引き締まる力に、ぐぇ、と潰れたカエルのような声が出た。

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